第一話 始まりの一織り
それからアテナの日々は大忙しとなった。
朝は早くから朝食を作り、その後に兵士達が汚した衣服などの洗濯。すぐに昼食の準備もして、城内の掃除も済ませなければならない。必要雑貨や食料等は定期的に来る配達人の男性が置いてってくれるので一安心…だが、休む暇もなく夕食に取り掛かる。やっとゆっくり腰を下ろせるのは、夜遅くになってからになってしまう。
その日も沢山の食料が城へと運ばれてきた。
「これで以上だへ」
「いつもありがとうございます。しかも食堂にまで運んで頂いて…あ、お茶飲んで行ってください」
「いんや、だいじだいじ。次行くとこもあるし。お構いなく~」
アテナは配達人の青年に頭を下げた。彼は農の国イエソドから新鮮な食材を運んできてくれるいつもニコニコとしていて穏やかな人物だ。武国の荒々しい人達に慣れたアテナからしたら癒し枠である。
「(でも言葉の訛りが凄くて、たまに何を言っているか分からないけれど)」
農の国イエソドは五つ国全土の食料を生産している。故に五つの国で一番広い国土を有しているそうだ。その為なのか、他の理由があるかは分からないが、農の国の住人は話し言葉の癖が強い。有体に言うと、訛りが酷い。
アテナも塔にいた頃、農の国の訛りが酷いという話だけは聞いていたが、実際対話するのは初めてだったので最初は戸惑ってしまった。今は多少慣れたが、やはり分からない事も多々ある。
「んじゃ、次は五日後に来るべさ」
「はい。よろしくお願いします」
アテナは青年を見送る為、城門前までやって来た。そこには青年が乗ってきた荷車と、その前で話している男性二人が見えた。
一人は国王のレオ。もう一人は青年といつも一緒にやって来る男だ。青年に『父』と呼ばれているので親子で配達に来てくれているのだろう。
しかし何やら変な雰囲気だ。男が何かを言う度にレオは目を逸らしたり、眉間に皺を寄せたり、溜息を吐いたりしている。
「はーん…成程なぁ」
「…黙っていてくれ」
「まぁええけど。リーフとアレフにもバレてるからそっちもどうにかした方がええし、何より監視者連中の口止め出来んのかいな」
「……むぅ」
「というかレオが悩む事やないやろ。お前とザードは保護しただけ。困るんはヒイラギや。そっちもそっちで、18年前やろ?そらぁヒサギが生まれたりしてゴタゴタしてた時期やから仕方ないで片付けたらええ話や」
「だが…怒られるのは気の毒だ」
「かっー!そゆとこ!そんなんやから反乱起こされるんや!阿呆!その甘ちゃんのせいでどこが一番被害被るのか分かって言ってんのか?次、反乱起こされたら今までの食料代金まとめて貰うからな!たくっ…帰んでサルゴン!」
どうやら話が終わったらしい男は青年を呼んだ。怒りながら荷車を牽く牛の綱を手繰る父親としょぼぼとするレオの様子を見て青年は苦笑をし、アテナに手を振った。
「じゃあまた来んで、アテナちゃん」
朝は早くから朝食を作り、その後に兵士達が汚した衣服などの洗濯。すぐに昼食の準備もして、城内の掃除も済ませなければならない。必要雑貨や食料等は定期的に来る配達人の男性が置いてってくれるので一安心…だが、休む暇もなく夕食に取り掛かる。やっとゆっくり腰を下ろせるのは、夜遅くになってからになってしまう。
その日も沢山の食料が城へと運ばれてきた。
「これで以上だへ」
「いつもありがとうございます。しかも食堂にまで運んで頂いて…あ、お茶飲んで行ってください」
「いんや、だいじだいじ。次行くとこもあるし。お構いなく~」
アテナは配達人の青年に頭を下げた。彼は農の国イエソドから新鮮な食材を運んできてくれるいつもニコニコとしていて穏やかな人物だ。武国の荒々しい人達に慣れたアテナからしたら癒し枠である。
「(でも言葉の訛りが凄くて、たまに何を言っているか分からないけれど)」
農の国イエソドは五つ国全土の食料を生産している。故に五つの国で一番広い国土を有しているそうだ。その為なのか、他の理由があるかは分からないが、農の国の住人は話し言葉の癖が強い。有体に言うと、訛りが酷い。
アテナも塔にいた頃、農の国の訛りが酷いという話だけは聞いていたが、実際対話するのは初めてだったので最初は戸惑ってしまった。今は多少慣れたが、やはり分からない事も多々ある。
「んじゃ、次は五日後に来るべさ」
「はい。よろしくお願いします」
アテナは青年を見送る為、城門前までやって来た。そこには青年が乗ってきた荷車と、その前で話している男性二人が見えた。
一人は国王のレオ。もう一人は青年といつも一緒にやって来る男だ。青年に『父』と呼ばれているので親子で配達に来てくれているのだろう。
しかし何やら変な雰囲気だ。男が何かを言う度にレオは目を逸らしたり、眉間に皺を寄せたり、溜息を吐いたりしている。
「はーん…成程なぁ」
「…黙っていてくれ」
「まぁええけど。リーフとアレフにもバレてるからそっちもどうにかした方がええし、何より監視者連中の口止め出来んのかいな」
「……むぅ」
「というかレオが悩む事やないやろ。お前とザードは保護しただけ。困るんはヒイラギや。そっちもそっちで、18年前やろ?そらぁヒサギが生まれたりしてゴタゴタしてた時期やから仕方ないで片付けたらええ話や」
「だが…怒られるのは気の毒だ」
「かっー!そゆとこ!そんなんやから反乱起こされるんや!阿呆!その甘ちゃんのせいでどこが一番被害被るのか分かって言ってんのか?次、反乱起こされたら今までの食料代金まとめて貰うからな!たくっ…帰んでサルゴン!」
どうやら話が終わったらしい男は青年を呼んだ。怒りながら荷車を牽く牛の綱を手繰る父親としょぼぼとするレオの様子を見て青年は苦笑をし、アテナに手を振った。
「じゃあまた来んで、アテナちゃん」