第一話 始まりの一織り
«五つ国歴576年»
「広範囲まで探したが、ヒルデの亡骸は結局出てこなかった…」
ザードは空を見上げると、雲が晴れ、太陽が再び光を放っていた。花畑の花はゆらゆらと風に遊ばれている。
──ここは、変わらない。
「…ここも、見せてやりたかったな」
「……ザード様は、ヒルデさんの事が本当に好きだったんですね」
ザードの話を静かに聞いていたアテナは俯き、ポツリと呟いた。
「ヒルデさんも…ザード様の事が好き、だったんでしょうね」
「……」
「どうして…」
風が強く吹き抜けた。花びらが散り、視界一面が色とりどりに染められ──水滴も美しく輝いた。
「どうして…ヒルデさんが…死ぬ必要が…あったんですか…!」
アテナは泣いていた。涙がポタポタと落ち、地面を濡らす。
「酷すぎます…こんな…こんな……二人が何をしたというんですか」
「…アテナ」
切なくて、悲しくて、苦しくて、アテナの胸は張り裂けそうだった。涙が止まらない。こんなに、哀しい事があっていいのか。
ザードの話はとてもヒルデを想う彼の気持ちでたくさんだった。アテナが聞くだけでも、それが分かった。
しかし、その愛しさが深かった故に、哀しさが大きく結末が非情過ぎた──
「ヒルデさん…」
ヒルデの笑顔、想いが自然と身体中に伝わった。自分の使命から背き、心の底からザードを守りたいと想って散らした命。
これからも、いつまでも、青い髪をなびかせ、彼女はザードの心に刻まれ続けるのだろう。
それを、何も知らずにザードに接して、淡い想いなど抱いた自分はなんて…
「ごめんなさい…ザード様…私……」
「……謝るな」
アテナの濃い青の髪はヒルデと瓜二つだ。そして、ザードの目にヒルデの最期と今のアテナの涙が重なって映った──
「泣くな…!」
ザードはアテナを引き寄せ抱き締めた。
「泣くな…お願いだ…泣かないでくれ……──ヒルデ」
「──…」
全身に衝撃が走ったようにアテナは一瞬頭が白んだ。
そうか、
「ザード…様」
自分は身代わりなんだ。彼女と同じ髪を持ち、同じ涙を見せ、──…同じじゃないか。大丈夫。昔からそうだった。元から誰も、自分の事など認めてくれる人なんていなかったじゃないか。今までと、一緒…
大丈夫──…
アテナは震える体を抑え、ザードの胸で涙を流した。
「広範囲まで探したが、ヒルデの亡骸は結局出てこなかった…」
ザードは空を見上げると、雲が晴れ、太陽が再び光を放っていた。花畑の花はゆらゆらと風に遊ばれている。
──ここは、変わらない。
「…ここも、見せてやりたかったな」
「……ザード様は、ヒルデさんの事が本当に好きだったんですね」
ザードの話を静かに聞いていたアテナは俯き、ポツリと呟いた。
「ヒルデさんも…ザード様の事が好き、だったんでしょうね」
「……」
「どうして…」
風が強く吹き抜けた。花びらが散り、視界一面が色とりどりに染められ──水滴も美しく輝いた。
「どうして…ヒルデさんが…死ぬ必要が…あったんですか…!」
アテナは泣いていた。涙がポタポタと落ち、地面を濡らす。
「酷すぎます…こんな…こんな……二人が何をしたというんですか」
「…アテナ」
切なくて、悲しくて、苦しくて、アテナの胸は張り裂けそうだった。涙が止まらない。こんなに、哀しい事があっていいのか。
ザードの話はとてもヒルデを想う彼の気持ちでたくさんだった。アテナが聞くだけでも、それが分かった。
しかし、その愛しさが深かった故に、哀しさが大きく結末が非情過ぎた──
「ヒルデさん…」
ヒルデの笑顔、想いが自然と身体中に伝わった。自分の使命から背き、心の底からザードを守りたいと想って散らした命。
これからも、いつまでも、青い髪をなびかせ、彼女はザードの心に刻まれ続けるのだろう。
それを、何も知らずにザードに接して、淡い想いなど抱いた自分はなんて…
「ごめんなさい…ザード様…私……」
「……謝るな」
アテナの濃い青の髪はヒルデと瓜二つだ。そして、ザードの目にヒルデの最期と今のアテナの涙が重なって映った──
「泣くな…!」
ザードはアテナを引き寄せ抱き締めた。
「泣くな…お願いだ…泣かないでくれ……──ヒルデ」
「──…」
全身に衝撃が走ったようにアテナは一瞬頭が白んだ。
そうか、
「ザード…様」
自分は身代わりなんだ。彼女と同じ髪を持ち、同じ涙を見せ、──…同じじゃないか。大丈夫。昔からそうだった。元から誰も、自分の事など認めてくれる人なんていなかったじゃないか。今までと、一緒…
大丈夫──…
アテナは震える体を抑え、ザードの胸で涙を流した。