第一話 始まりの一織り

ザードは気が付くと、城のベッドの上で寝かされていた。
ギシギシと痛む身体を起し、窓の外を見ると戦いが嘘だったかのように、空は晴れ渡っている。
──どうやら戦いは終わったらしい。しかし、ザードはベッドから飛び出し、『彼女』を探しにザードは走り出した。

部屋、廊下、食堂、謁見の間、演習場、城下町、
そして──

「ヒ…ルデ…」

あの場所には、一振りの短剣が刺さっていた。周りには敵兵の物と思われる折られた武具が落ちてはいるものの、その短剣のみが空の光に輝き美しく反射している。
ヒビが入り、使い物にならない…しかし、それには武の王族の紋章が彫られていた──
「なんで…こん…な」
彼女の為に特別に造られた短剣。けして折れる事のないように、造られた特別な"想い"

「ヒ…ル…」

ザードはそれ以上言葉に出来なかった。
したくなかった。

一迅の風が吹き、木々の葉が散った──
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