第一話 始まりの一織り
十年前──
その日、王子五人は武の国で宝探しをしていた。
勿論、宝の地図はインチキとか、宝なんてあるわけないとか…そんなことは五人とも分かっていたが、ただ何かを理由にして皆で遊びたかった。
そんな宝探しにも飽きてきた頃、目の前に群れからはぐれたのか子豚が一匹だけで餌を食べていた。
剣を持つ少年──ザードは狩りだと銘打って甚振って遊んでやろう。そう思っていた。
しかし──
・
・
・
«五つ国歴566年»
森に頬を思いきり叩く音が響いた。
叩かれた本人…子豚を狩ろうとしていた剣の少年、ザードは一瞬何が起こったか理解出来なかった。
「命を、簡単に奪う奴はただの殺戮者よ」
少女は茶色の瞳でザードを睨みつける。その言葉と視線に状況をやっと判断出来たのか、ザードはハッとして剣を構え直した。
「このっ…!女のくせに生意気な奴だな!俺様が誰だか分かってんのか!?」
「女のくせに?そんな細かい事を気にするちっちゃな奴のことなんて知らないわよ」
「小さい?!良い度胸だ、この女ぁ!土下座して泣かせてやる!」
ザードは大きな剣を少女に向かって振り上げた──
・
・
・
「ザードの剣の軌道を足元にあった石で変えて、大きく空振りさせたところを、素早く額に蹴りを繰り出すなんて…凄く鮮やかな身のこなしだったなぁ~……それに比べて誰かさんはめちゃくちゃカッコ悪過ぎるんだけど」
そう言いながら灰色がかった薄青髪を揺らす少年は地面に倒れるザードを面白そうに見た。
「うるせぇ、馬鹿ヒサギ」
「だ、大丈夫だか?さ、肩に貸すだ。立てっぺ?」
薄紫の少年に手を貸してもらったザードはふらつきながらも起き上がる事が出来た。
額にはくっきりと足跡がついている。
「…奴は?」
「貴様が気を失っていた数分の間に立ち去ったぞ」
「『またね』…だって」
それぞれ暇そうにしていた少年達が答えてくれたが、ザードは悔しそうに土を蹴り、悪態を吐いた。
「くそっ…あの女!どこの誰だか知らないが、絶っ対に探し出して逆襲してやるっ!」
森の木々に木霊した言葉はすぐに実現する事になる。
自分の家…否、城に戻ったザードは唖然とした。
考えてみれば、帰るなり父親に呼ばれて謁見の間に行くこと自体おかしいのだ。
それで何かあると察すれば…『あの言葉』の意味をきちんと考えれば……
「今日からお前の護衛となるヒルデだ」
「また会ったわね」
目の前に先程の少女が立っていると思い至れたというのに──!!
・
・
・
「おい!馬鹿親父!なんで護衛…しかも女なんか連れてきたんだよ!?」
ザードは父レオの後をバタバタ着いて行きつつ、文句を言った。
「俺は護衛なんかいらねぇんだよ!それにあの女嫌いだ!」
「……」
レオはザードの喧しさを無視し、無言で長い長い廊下を歩く。
少女──ヒルデにあてられた部屋をザードに見せるつもりらしい。彼女はそのまま謁見の間に待機してもらった。
「さっきなんか額蹴りやがって…おい!聞い…!?」
刹那──
ザードの額にレオの剣がかすった。一瞬にして辺りの空気がピンと張りつめ、体が冷たくなる。
その空気とシンクロするようにレオの瞳は氷のような鋭さで突き刺さった。
「……王族──特に王子は命を狙われやすい…今のようにな」
レオは喋りながらも、なお息子に剣を突き付ける。
ザードは何故か体も瞳も動かす事が出来ず、ただ父の冷めた顔を見つめるしかなかった。
「突然に襲われた際にお前は動けるか?」
「………」
「口を開けないのは恐怖と緊張が同時に起こっているからだ……
そんな未熟な者が一人で身を守れるわけがない」
と、レオは身を離すとザードの後ろを見据えた。
「だから、優秀な護衛をつける必要があるんだ」
──レオが見据えた先には謁見の間に待機させていたはずのヒルデがボウガンを構えて立っていた。
その日、王子五人は武の国で宝探しをしていた。
勿論、宝の地図はインチキとか、宝なんてあるわけないとか…そんなことは五人とも分かっていたが、ただ何かを理由にして皆で遊びたかった。
そんな宝探しにも飽きてきた頃、目の前に群れからはぐれたのか子豚が一匹だけで餌を食べていた。
剣を持つ少年──ザードは狩りだと銘打って甚振って遊んでやろう。そう思っていた。
しかし──
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«五つ国歴566年»
森に頬を思いきり叩く音が響いた。
叩かれた本人…子豚を狩ろうとしていた剣の少年、ザードは一瞬何が起こったか理解出来なかった。
「命を、簡単に奪う奴はただの殺戮者よ」
少女は茶色の瞳でザードを睨みつける。その言葉と視線に状況をやっと判断出来たのか、ザードはハッとして剣を構え直した。
「このっ…!女のくせに生意気な奴だな!俺様が誰だか分かってんのか!?」
「女のくせに?そんな細かい事を気にするちっちゃな奴のことなんて知らないわよ」
「小さい?!良い度胸だ、この女ぁ!土下座して泣かせてやる!」
ザードは大きな剣を少女に向かって振り上げた──
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「ザードの剣の軌道を足元にあった石で変えて、大きく空振りさせたところを、素早く額に蹴りを繰り出すなんて…凄く鮮やかな身のこなしだったなぁ~……それに比べて誰かさんはめちゃくちゃカッコ悪過ぎるんだけど」
そう言いながら灰色がかった薄青髪を揺らす少年は地面に倒れるザードを面白そうに見た。
「うるせぇ、馬鹿ヒサギ」
「だ、大丈夫だか?さ、肩に貸すだ。立てっぺ?」
薄紫の少年に手を貸してもらったザードはふらつきながらも起き上がる事が出来た。
額にはくっきりと足跡がついている。
「…奴は?」
「貴様が気を失っていた数分の間に立ち去ったぞ」
「『またね』…だって」
それぞれ暇そうにしていた少年達が答えてくれたが、ザードは悔しそうに土を蹴り、悪態を吐いた。
「くそっ…あの女!どこの誰だか知らないが、絶っ対に探し出して逆襲してやるっ!」
森の木々に木霊した言葉はすぐに実現する事になる。
自分の家…否、城に戻ったザードは唖然とした。
考えてみれば、帰るなり父親に呼ばれて謁見の間に行くこと自体おかしいのだ。
それで何かあると察すれば…『あの言葉』の意味をきちんと考えれば……
「今日からお前の護衛となるヒルデだ」
「また会ったわね」
目の前に先程の少女が立っていると思い至れたというのに──!!
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「おい!馬鹿親父!なんで護衛…しかも女なんか連れてきたんだよ!?」
ザードは父レオの後をバタバタ着いて行きつつ、文句を言った。
「俺は護衛なんかいらねぇんだよ!それにあの女嫌いだ!」
「……」
レオはザードの喧しさを無視し、無言で長い長い廊下を歩く。
少女──ヒルデにあてられた部屋をザードに見せるつもりらしい。彼女はそのまま謁見の間に待機してもらった。
「さっきなんか額蹴りやがって…おい!聞い…!?」
刹那──
ザードの額にレオの剣がかすった。一瞬にして辺りの空気がピンと張りつめ、体が冷たくなる。
その空気とシンクロするようにレオの瞳は氷のような鋭さで突き刺さった。
「……王族──特に王子は命を狙われやすい…今のようにな」
レオは喋りながらも、なお息子に剣を突き付ける。
ザードは何故か体も瞳も動かす事が出来ず、ただ父の冷めた顔を見つめるしかなかった。
「突然に襲われた際にお前は動けるか?」
「………」
「口を開けないのは恐怖と緊張が同時に起こっているからだ……
そんな未熟な者が一人で身を守れるわけがない」
と、レオは身を離すとザードの後ろを見据えた。
「だから、優秀な護衛をつける必要があるんだ」
──レオが見据えた先には謁見の間に待機させていたはずのヒルデがボウガンを構えて立っていた。