第二話 未体験の知識
領主は頭を抱えつつ、フェルナンドを睨んだ。
睨まれた本人はそれを流し、一瞬遠くの高台に視線を移したが、すぐに逸らし領主と目を合わせた。
「…私からは以上だ。理解は出来ただろう。本日の挙式は中止とする」
「ま…待て!!」
騒然となる場から去ろうとしたフェルナンドを、領主が怒声で止めた。
肩を震わせ、今にも飛び掛りそうだ。
「王家は我ヴィーナス領に借りがある!!そして、生まれてきた娘を妻にするという"約束"をしている!」
──最後の切り札にして必勝のカードだ。
先代ケフラー国王はヴィーナス領主に何かしらの困難を助けられ、約束を交わした。
その"借り"内容は書面に残されておらず、互いに口伝でしか"約束"は伝えられていないが──約束という"契約"を法の番人である王家が反故にするはずはない。
「誓約書は?」
「は?」
振り返ったフェルナンドは腕を組み、領主を見据えた。
「貴様の言う"借り"の詳細を説明せよ。それがどのような理由で、どうやって交わされたのか…そして詳細を記した誓約書、または証文…そして証人を連れて来い。そうしたら、認めてやろう」
「そ、それは……書面や証人の類はおりません。しかし、約束は交わされた!我が祖父は確かにケルヴィン前国王と約束をした!その事は王家も我が領もお互い把握している、だから我が娘は生まれた際にフェルナンド殿の許嫁と承認されたのではないか!!」
「…それが口約束ならば…」
領主はフェルナンドの静かで鋭い視線に息を飲む。
反論しようにも言葉が出ない。その圧に圧倒され、たじろいだ。
「証文のない約束は五年または六年で自動的に白紙になる。25年前に死去した先代国王と貴様の祖父が交わし、現国王と貴様自身もその詳細を把握していないとなると──少なくとも約束は交わされて40から50年は経過しているはずだ。そうなると先代国王がまだ即位する以前、有り体に言えば幼少期に約束させられた…いや、そもそも了承も得ず幼子相手だと一方的に約束をされた可能性も大いにある。未成年者との契約は法的に無効となる。このくらいの決まりは貴様とて熟知していると思ったが、過信しすぎたようだな。さらに、貴様は無抵抗の者に暴行をしようとした。これは未遂だとしても罰せられるべきことだ。しかし、被害者からの訴えはない」
その場にいた者全てが悟った。
「以上、今の事から──貴様は黙って立ち去るべき人間だということだ」
燦然と立つ姿はまさに法の番人に相応しいと。
睨まれた本人はそれを流し、一瞬遠くの高台に視線を移したが、すぐに逸らし領主と目を合わせた。
「…私からは以上だ。理解は出来ただろう。本日の挙式は中止とする」
「ま…待て!!」
騒然となる場から去ろうとしたフェルナンドを、領主が怒声で止めた。
肩を震わせ、今にも飛び掛りそうだ。
「王家は我ヴィーナス領に借りがある!!そして、生まれてきた娘を妻にするという"約束"をしている!」
──最後の切り札にして必勝のカードだ。
先代ケフラー国王はヴィーナス領主に何かしらの困難を助けられ、約束を交わした。
その"借り"内容は書面に残されておらず、互いに口伝でしか"約束"は伝えられていないが──約束という"契約"を法の番人である王家が反故にするはずはない。
「誓約書は?」
「は?」
振り返ったフェルナンドは腕を組み、領主を見据えた。
「貴様の言う"借り"の詳細を説明せよ。それがどのような理由で、どうやって交わされたのか…そして詳細を記した誓約書、または証文…そして証人を連れて来い。そうしたら、認めてやろう」
「そ、それは……書面や証人の類はおりません。しかし、約束は交わされた!我が祖父は確かにケルヴィン前国王と約束をした!その事は王家も我が領もお互い把握している、だから我が娘は生まれた際にフェルナンド殿の許嫁と承認されたのではないか!!」
「…それが口約束ならば…」
領主はフェルナンドの静かで鋭い視線に息を飲む。
反論しようにも言葉が出ない。その圧に圧倒され、たじろいだ。
「証文のない約束は五年または六年で自動的に白紙になる。25年前に死去した先代国王と貴様の祖父が交わし、現国王と貴様自身もその詳細を把握していないとなると──少なくとも約束は交わされて40から50年は経過しているはずだ。そうなると先代国王がまだ即位する以前、有り体に言えば幼少期に約束させられた…いや、そもそも了承も得ず幼子相手だと一方的に約束をされた可能性も大いにある。未成年者との契約は法的に無効となる。このくらいの決まりは貴様とて熟知していると思ったが、過信しすぎたようだな。さらに、貴様は無抵抗の者に暴行をしようとした。これは未遂だとしても罰せられるべきことだ。しかし、被害者からの訴えはない」
その場にいた者全てが悟った。
「以上、今の事から──貴様は黙って立ち去るべき人間だということだ」
燦然と立つ姿はまさに法の番人に相応しいと。