このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

第一話 始まりの一織り



──…………。


あれは、十何年も昔……
俺はまだ小さいガキで、

そう…
あの日俺達いつもの五人で森に遊びに行った時
アイツと
青い髪をなびかせたアイツと出会ったんだ──


«五つ国歴566年»
「なんだ、宝なんかないじゃんか!」
金の強い茶色の髪を揺らしながら、一人の少年は叫んだ。
少年は平和な森を歩くにはちょっと大き過ぎな剣を背中に差し、手にはここらへんの古い地図が握られている。
隣に歩いていた顔立ちのしっかりした少年は溜め息を吐いた。

「古い本に挟んであった地図が全て本物だとは限らないと言ったはずだ」
「…まあ、礼儀作法の勉強サボれたし…ラッキーだったかも」
「んだ、気分転換にもなったべな」
「あ~あ…宝見付けたら好きなもんた~くさん買おうかと思ったのに」

剣の少年の周りには仲間四人が歩いていた。
それぞれに服装の質などは違えど、楽しそうな姿を見ると皆仲は良いようである。


「─おっ!美味そうな野豚!」
その時、先頭を行く剣の少年が歩みを止めて、ニヤリと笑った。視線の先には小さな野豚が草を食べている。群れから離れてしまったのか、周辺に親豚の気配はない。
「宝はなかったけど…アイツを土産に持って帰ろう!今日の晩飯だ」
少年は背中の剣を抜くと、飛びかかる体勢をとった。
「ちょっ…駄目だぁ!子供を狩るんは、この後の色々な事に絡んでくるだで、いかんよ」
「うるせぇな、ここは俺んとこの領地なんだから勝手だろ」

薄紫の髪の少年を退けながら、剣を持つ手に力が入った。
子豚はまだ五感が未発達なのか少年の事に気付かず、草を食べ続けている。

剣の切っ先は鈍く輝くと、少年は土を蹴った。

「駄目っ!」

それは刹那の出来事だった。
どこからとも無く少女が飛び出し、少年と子豚の間に割り込んだ。
少年は咄嗟に力の方向を変え、振り下ろした剣を少女と子豚の横に避けさせた。
土が抉れ、子豚は跳ねた。
「…っ!し、死にたいのか!?」
子豚が逃げ去る後ろ姿を睨みながら、少年は目の前で立ちはだかる少女に舌打ちをした。
「ちっ…逃げられたじゃねぇか」
「あんた…何をしようとしたか分かってる?」
少女は子豚をかばうように立っていたが、草の蔭に消える姿を見送ると、腕を組んで睨みつけた。
その瞬間も少女の濃い青の髪は木々に同調して美しく揺れる。
意思の強い瞳は剣を持つ少年を前にしても全く揺らがなかった。
剣の少年は少し怯むも叫んだ。
「どけよ!」
「……ていっ…!」
「あ?」

少女が何かを呟いたその瞬間、少年は頬を思いきり打たれていた。

12/51ページ