第二話 未体験の知識

拍手と喝采が沸き起こった。
民衆達は“未来”の無事に安堵し、歓喜した。
固まっていた従者や両親は
『“花嫁”が死ななくて良かった』
そう、囁く。

そんな歓声の中、“花嫁”を受け止めた“農国王子”は静かに息を吐いた。
「はぁ、はぁ…あんな高いとっから…危ないっぺや」
「……」
「どうしてこんな事を──」
「サルゴン様っ…!!」
言葉を言い終わらないうちに“花嫁”は“農の王子”の体に抱きついた。
「シルヴィッッッ!?」
「雛は…飛べます…でも、最初は、飛べません…
…だから…だから!──サルゴン様は言いました」
“シルヴィー”は顔を上げた。

「いつだって、どんな時だって…受け止めるって!!」

その体は、震えていた──

「こわ…かった…!!」
サルゴンはシルヴィーの顔を見て、目を見開き息を飲んだ。
「凄く…凄く…怖かった、です…!!でも、言いたくて…サルゴン様に…」
何があろうと気丈にしていた彼女の瞳に、

「私、サルゴン様が…好きです」

大粒の涙が溢れていた。

震えも涙も止まらない。
クシャクシャの顔と髪の毛、砂埃で汚れたドレス──せっかく完璧に仕上げた花嫁姿が台無しだ。
しかし、シルヴィーは言葉を続けた。
「私、サルゴン様に会いたくて、城を抜け出して、農国に行って──私、私は!私はフェルナンド様の妻になりたくない!サルゴン様の隣に居たい!サルゴン様が好き!大好き!そう言いたくて…だから、会いに来ました」
「……シルヴィー」

「やめろ!!」

次の瞬間、シルヴィーの腕が引かれ無理矢理立たされた。それは力の加減もせず、掴んだ場所に薄い痣を作る。
「なんてことをしてくれたのだ!!この、恥晒しが!」
「お父様っ…!!」
“花嫁”の父親は顔を真っ赤に染め、周囲にも聞こえるほど大きな声で怒鳴った。
「今日はフェルナンド殿との挙式だぞ!!こんな農民風情などに現を抜かすなど…知王家、いや、我等の顔に泥を塗る行為だと理解出来ない程愚か者に成り果てたのか?!お前は黙ってフェルナンド殿の妻となるのだ!」
父親は大きく手を振り上げた。
サルゴンの止める声を聞きながら、"花嫁"は目を強く瞑る。

──これが自由を求めた罰なのならば、甘んじて受け入れよう。
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