第二話 未体験の知識
“花嫁”の純白のドレスが落下の風で小刻みに揺れる。民衆は騒然となり悲鳴が木霊する。従者や貴族達は固まり、両親は崩れ落ちた。
多くの者が次の瞬間の惨事を察し、瞳を逸らした。
──否、一人だけ動いていた。
それはまるで草原を走る馬の様な速さであり、民衆の隙間をまるで獲物を追う狼の様にすり抜け、瞳は
「シルヴィーーー!!」
真っ直ぐ“シルヴィー”を捉えていた。
民衆達は悲劇を物語る音に備えて目を閉じていたが──いつまで経ってもそれは聞こえなかった。
恐る恐る視線をバルコニーの真下、舞台の上に移すとそこには青年が蹲り、肩で息をしていた。
「はぁっ…!は、ぁっ……だい…じだ、か?」
薄紫の髪を揺らし、息も切れぎれに腕の中を覗いた。
腕の中には
「……サ…ルゴン様」
無傷の“シルヴィー”がサルゴンを見上げていた。