第二話 未体験の知識
丘を吹き抜ける風が心地良く、太陽はポカポカと暖かい。
若草の香りが体を包み、癒し効果を与える。
──しかし、シルヴィーは緊張していた。
「シルヴィー?」
隣に座るサルゴンが見れない。
不自然に顔を逸らし、沈黙し続けてしまっている。
何故ならシルヴィーは致命的なミスを犯してしまっている事に気付いてしまったのだ。だから目を合わせる事が出来ないし、言葉も出て来ない。
「そういえば…」
そんなシルヴィーの心中を知らず、サルゴンは首を傾げて率直に聞いてきた。
「シルヴィーはどしてこんな場所に居ただ?」
──会って何をしたいか考えてなかった!!
シルヴィーの致命的なミス──それは"サルゴンと会って何がしたかったか考えていなかった"という事だ。
何故理由も目的も無く彼に会いに来てしまったのか、それはシルヴィーにも分からない。
これにはシルヴィー本人も大混乱した。
「(会いたかった?いやいやいやいや!許嫁のフェルナンド様との面会を抜け出してまでそんなことをしたいなんて意味が分からなすぎる!!何?散歩?どんだけ遠くまで来てるんだ、私の馬鹿!!気が付いたら?夢遊病で病院行きです!)」
シルヴィーの思考は凄いスピードで回転し続けたが、自身が納得出来る理由が見付からない。
時間が経過すればするほど焦り、考えがこんがらがってしまう。
「(ああぁ…どうしようどうしよう)」
「あ、そうか」
「えっ」
シルヴィーの焦る顔を見て、サルゴンは手をポンッと叩いた。
「本、取りに来ただか」
「……あっ」
──すっかり忘れてしまっていたが、先日農国から帰る際に百科事典を落としてしまっていた。
別れ際、お互いが"他人"だと思い知らされた一言で──体の力が入らなくなってしまったのだ。
「は…い」
今の今まで忘れていたが、とりあえず言い訳としてはちょうど良いので頷いておく。
──シルヴィーは別れ際のサルゴンを思い出し、改めて横の彼を眺める。
「やっぱな~。あれ、大事なもんだっぺ?ずっと持っでたし」
──普通だ。何も無かったかのように、普通だ。相変わらず優しい笑顔を浮かべている。
あの日はあんなに悲しそうだったのに──
「じゃあ、取ってくっぺ」
「え、あ…」
シルヴィーが思案していると、いつの間にかサルゴンは立ち上がって歩き始めていた。
その遠ざかる背中を見つめていると何故か胸がズキリと痛む。
無意識にシルヴィーは立ち上がり、叫んでしまった。
「サルゴン様!」
深緑の瞳がシルヴィーへ向けられる。
「行かないで下さい!!」
──サルゴンは少し悲しそうに微笑んだ。
「あ…いえ」
シルヴィーはサルゴンの表情に一瞬たじろいだ。自身が叫んだ言葉にも困惑し、口篭る。
「…ほ…本は、もう……返して頂かなくて結構です。ただ……森の外まで…」
俯き、呟くように言う。
「私は"帰らなくてはならない"ので…知国の国境まで…案内して欲しいです……」
「……」
サルゴンは眉を下げつつ、ゆっくりとシルヴィーに歩み寄ると、少し乱れた彼女の金髪に触れて整えてあげた。
「……今日は、フェルナンドのとこで結婚式の日取りを決めって聞いただよ」
「…!!」
シルヴィーが顔を上げると、サルゴンは優しく微笑んでいた。
「何か迷ってんなら、聞くけぇ」
若草の香りが体を包み、癒し効果を与える。
──しかし、シルヴィーは緊張していた。
「シルヴィー?」
隣に座るサルゴンが見れない。
不自然に顔を逸らし、沈黙し続けてしまっている。
何故ならシルヴィーは致命的なミスを犯してしまっている事に気付いてしまったのだ。だから目を合わせる事が出来ないし、言葉も出て来ない。
「そういえば…」
そんなシルヴィーの心中を知らず、サルゴンは首を傾げて率直に聞いてきた。
「シルヴィーはどしてこんな場所に居ただ?」
──会って何をしたいか考えてなかった!!
シルヴィーの致命的なミス──それは"サルゴンと会って何がしたかったか考えていなかった"という事だ。
何故理由も目的も無く彼に会いに来てしまったのか、それはシルヴィーにも分からない。
これにはシルヴィー本人も大混乱した。
「(会いたかった?いやいやいやいや!許嫁のフェルナンド様との面会を抜け出してまでそんなことをしたいなんて意味が分からなすぎる!!何?散歩?どんだけ遠くまで来てるんだ、私の馬鹿!!気が付いたら?夢遊病で病院行きです!)」
シルヴィーの思考は凄いスピードで回転し続けたが、自身が納得出来る理由が見付からない。
時間が経過すればするほど焦り、考えがこんがらがってしまう。
「(ああぁ…どうしようどうしよう)」
「あ、そうか」
「えっ」
シルヴィーの焦る顔を見て、サルゴンは手をポンッと叩いた。
「本、取りに来ただか」
「……あっ」
──すっかり忘れてしまっていたが、先日農国から帰る際に百科事典を落としてしまっていた。
別れ際、お互いが"他人"だと思い知らされた一言で──体の力が入らなくなってしまったのだ。
「は…い」
今の今まで忘れていたが、とりあえず言い訳としてはちょうど良いので頷いておく。
──シルヴィーは別れ際のサルゴンを思い出し、改めて横の彼を眺める。
「やっぱな~。あれ、大事なもんだっぺ?ずっと持っでたし」
──普通だ。何も無かったかのように、普通だ。相変わらず優しい笑顔を浮かべている。
あの日はあんなに悲しそうだったのに──
「じゃあ、取ってくっぺ」
「え、あ…」
シルヴィーが思案していると、いつの間にかサルゴンは立ち上がって歩き始めていた。
その遠ざかる背中を見つめていると何故か胸がズキリと痛む。
無意識にシルヴィーは立ち上がり、叫んでしまった。
「サルゴン様!」
深緑の瞳がシルヴィーへ向けられる。
「行かないで下さい!!」
──サルゴンは少し悲しそうに微笑んだ。
「あ…いえ」
シルヴィーはサルゴンの表情に一瞬たじろいだ。自身が叫んだ言葉にも困惑し、口篭る。
「…ほ…本は、もう……返して頂かなくて結構です。ただ……森の外まで…」
俯き、呟くように言う。
「私は"帰らなくてはならない"ので…知国の国境まで…案内して欲しいです……」
「……」
サルゴンは眉を下げつつ、ゆっくりとシルヴィーに歩み寄ると、少し乱れた彼女の金髪に触れて整えてあげた。
「……今日は、フェルナンドのとこで結婚式の日取りを決めって聞いただよ」
「…!!」
シルヴィーが顔を上げると、サルゴンは優しく微笑んでいた。
「何か迷ってんなら、聞くけぇ」