第二話 未体験の知識


「やはり、さっきの木を右に行くべきでしたね…」
「ピ♪」
「はぁ…楽しそうね、貴方」
シルヴィーは頭に乗った雛の声に溜息を吐いた。

──ゴンは居なくなってしまった。

これで唐突に現れた二匹が束の間に見た、幻覚だったと説明できるはずだったのだが、
「ピィピピ!」
手の中の雛はしっかりはっきり楽しげに鳴き続けていた。
真ん丸フォルムの黄色い綿毛はふわふわで暖かく、もにもに揉むと気持ちが良い。
──紛うことなく生きた生き物だ。
言葉にすると馬鹿馬鹿しくて、当たり前過ぎる結論だが、しょうがない。
シルヴィーは頭に飛び乗る雛を受け入れつつ歩き出した。

しかし、森は際限なく続いた。

「ここはどこ…?」
「ピ?」
右も木。左も木。上は葉の壁。下は草。
歩いても歩いても同じような風景が続き、シルヴィーは頭を抱えてしまった。
方位を見ようにも、頼みの太陽は木々に阻まれよく見えない。
──完全に迷子だ。
いつもならば鉄則として下手に動かず、救助を待つ事が最善策なのだろうが、今シルヴィーがこの場所にいる事を誰も知らない。
知らなければ救助も来れない。
だから──とにかく歩き続けなければならない。
「せめて人が通りそうな場所まで…」
「ピ!!」
「わっ、なんですか?急に……あ!」

雛の瞳の先に陽が差している箇所──木の切れ目が見えた。
シルヴィーは足早に移動すると、そこには地平線まで見えそうな丘と草原が広がっていた。

森の終わりかとシルヴィーは首を傾げたが、森が丘の側面に続いているのを見ると、恐らく森の中心に出来た広大な丘陵地なのだろう。
「まだ森を出たわけではないのか…」
溜息…というか、深呼吸をした。
農国は本当に空気が良い。とりあえず開けた場所に出れただけでも良しとしよう。
シルヴィーは一回伸びをしてから、草原に座り休憩する事にした。
すると雛はシルヴィーの頭から飛び降り、ポテポテとおぼつかない走りで丘を見回り始めた。
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