第二話 未体験の知識

森の中は長閑そのものだった。
鳥が囀り、小動物が顔を覗かせ、爽やかな風が吹き、木々が揺れる。
足元の小さな花々の甘い香りが鼻をくすぐり、日々の疲れを癒す。
「目的を忘れてしまいそう…」
シルヴィーは思わず立ち止まり、伸びをした後大きく深呼吸をした。
空気が美味しい。木漏れ日が暖かく気持ちが良い。
「……いっその事、全て投げ出してこの場所で」
──眠ってしまえたら幸せかもしれない。

シルヴィーは空を見上げた。
しかし高い木々が空を隠してしまっている。まるで檻のようだ。
「…どこへ行っ──」
「ベェエエ」
「え、わっ、きゃ!!」
シルヴィーが物思いに耽っていると、突然後ろから柔らかく突進された。
幸い、柔らかく頭を擦り付けるような突進?だったので転びはしないが、小さな体のシルヴィーはちょっとよろめいてしまった…
「なっ…なんなの!?」
「ピ!」
よろめいたシルヴィーが体勢を整え、慌てて振り返ると目の前がふわふわの黄色い物体で埋め尽くされた。否、何かの生物が顔に引っ付いた。
無言で掴んで、剥がすと
「…雛?」
「ピィ!!」
「ンベェエ」
「……ゴン?」
シルヴィーは目を擦り、頭を振った。
幻覚か。そうか、幻覚だそうに違いない。
こんな場所に知り合い?がいるわけは無いのだ。

──だがしかし、シルヴィーがどんなに目を擦り頭を振っても二匹の姿は視界から消えなかった。

「…分かりました。雛はまた迷子になった。それを探しにゴンは再び農場から脱走、徘徊して、この森で雛を見付けた。そして私の事も見付けたので突進してきた。そういう理由と経緯で譲歩しましょう」
暫しの後、シルヴィーは眉間に指を当てて溜息をついた。
かなり無茶苦茶な話だが、十中八九正解だろう。懲りていない、雛。
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