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Esperanza Leon(完結)

その後、会議を続ける事は出来ないのですぐに解散となった。

ナルセスは「これからが大変だぞ」とブツブツ言いながら退室していった。
何が…という問いは不粋だろう。

ヒイラギはナルセスに続くように、振り返りもせず去った。
妙に不機嫌だったのはこれからの事を考えてなのか、分からなかった。

リーフはレオと赤ん坊を撫でて帰った。
「何か困った事があったらすぐに言ってね!」と随分と頼もしい事も言ってくれた。
しかし、いつもご機嫌な彼がいつも以上にテンションが高く、走って帰って行った事が少々奇妙だった。

ラルゴは
「この様子から見ると、ざっと見積もって生後一、二週間ってとこやな。栄養失調にもなってないみたいやし…あの婆さんに感謝しとき」
「そうだな」
「まあ、今が良くてもこれからの世話が悪ければ台無しや。誰か乳母になれそうな奴知ってるか?」
「……いや」
「せやろな。しゃーない、うちで探しとくわ」
他の王が帰った後もレオへ育児について説明してくれていた。
流石は農王といったところか、その知識はレオの頭がパンクしてしまいそうな位だった。

しかし、身近に赤ん坊…むしろ自分よりも年下がいなかった為「育児」とは何を行えば良いのか皆目見当がつかなかった。
だから簡単にでもこうやって説明してもらえてレオは救われた気分だった。

「うーん、ま、今日のとこはこの位やな。また明日来てやるから、もっと詳しく教えたる」
「ああ、すまない……ありがとう」
レオは微笑んだ。以前は礼も自然に言えなかった彼を、ラルゴは感心した様に見つめ、頷く。
「父親としての自覚もしっかりやな。良かったわ。その調子で早いとこ一人前になってもらわんとな。教えられる時間も限られてるわけやし」
「指南頼む」
「と言ってもわてかて完璧に育児が分かるわけやないで。予定もないしな」
「…む」
レオはふと違和感を感じた。
何かが引っかかる…いつもはぶっきらぼうなラルゴが親切にしてくれているからだろうか?
いや、それだけではない気がする…

「あとの三人のとこも早く子供の顔見せて貰わんとな。まあ、仕込みの時間があるから一年後位か。じゃあ、大丈夫やな…ふふっ…はは」
「?…何が大丈夫なんだ?」
「タイムリミット」

レオの問いを軽くあしらうように、ラルゴはヒラヒラと手を振って立ち去ってしまった。
──彼の笑顔は久々に見た気がする。
何故笑っていたのだろう?
特別赤ん坊が好きというわけでも、人に何かを教えるのが好きというわけでもないはずだ。
むしろ年中テンションが低く、何に対しても興味がなかったようなラルゴが赤ん坊を見てから妙に機嫌が良くなっていた。

「いったい何──」
「あー」

レオが訝しげな表情をすると、腕の中の赤ん坊が急に動きだした。
まだ生後間もないとはいえ、手足だけはよく動かすようだ。
何かを訴えているようでもないが、気になって凝視してしまう。

まだ薄い髪はどうやら自分と同じ色のようだ。
赤茶色の瞳は母親に似ている。
鼻筋はどちらに似ているのだろう?それはまだ判断しかねる。
だが、口元は母親にそっくりだ。

レオはいつの間にか笑っていた。
空いた手で赤ん坊に触れる。
頭、頬、口元、顎、手…
どこに触れても温かい。

「…名前は何が良いだろうな」
「んー」
「そうだな……母親から一文字貰って…」
「ふぁー」
「……」

大きな欠伸をして目を閉じる様子を愛おしそうに見つめ、レオは呟いた。

「命に代えても、護ってやるからな…ザード」
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