Esperanza Leon(完結)
「初めは追い返そうとしたんです。ほら、よくある赤ん坊の皮だけ使って中に爆発物とか毒物を仕込まれていたとかだったら危ないし…だけど婆さんが引き下がらなくて…で、仕方なく話だけ聞いたら、赤ん坊はレオ様の子供だって言いやがって…証拠は?って切り返したら見覚えのあるピアスを出してきて…」
「…見覚えのある、ピアス?」
「リザ隊長のです」
ドッと話しているうちに、兵士は多少落ち着いたようでレオの質問にも冷静に答える事が出来た。
それとは反対にレオは一瞬動揺した様に目を見開く。しかしすぐに目を細め何かを悟ったように軽い溜息を吐いた。
「…通せ」
「はっ」
短く言うレオに兵士も短く答え、素早く頭を下げてから退室した。
…騙すつもりなのかもしれない…
レオの脳裏に『偽物』という言葉が過る。
それと同時に『本当であってほしい』と強く願った。
…否、本物の可能性は高いかもしれない。
実際そのように仕組んだのだから…
しかしそうであったのならば…何故彼女自身が姿を見せないのだろう。
確かに『逃げろ』と命令したとはいえ、非力であろう老婆にこの城まで子を運ばせるのはあまりにも危険だ。
老婆が寝返る場合だってあるではないか。
…自身が共に城へ戻る事が一番の得策のはずだが…
いやそれ以前に…何故、子を自分の元へ運ばせたのだ?
城はある意味一番危険な場所ではないか…?
…やはり今来たモノは『罠』なのだろうか…
あれこれと今ここで考えていてもラチがあかない。
とにかく老婆と会い、見極めよう。
もし罠だとしても、リザのピアスを持っている…という時点で尋問する価値はある。
そして本物だったならば…
「…勝手に一人で話を進めようとしているが…!!」
刹那──レオの肩が乱暴に掴まれた。
後ろからの声は明らかに語尾が強く相手の苛立ちを感じる…が、レオは抵抗をしなかった。
チラリと視線を向けると、目元を吊り上げたナルセスが睨みつけていた。
「赤ん坊?お前の子?どういう事だ?!説明しろ!!そもそもそ…そ、そのような行為をしなければ、だな…子は出来ない!!」
怒鳴るナルセスは途中顔を赤らめて、言葉を濁す。
そしてヤケになったようにまた語尾を荒げる。
…王とはいえまだ歳若い。思春期なのだろう。
「…お前いつの間にセッ…」
「止めろヒイラギ!はしたない!」
明言を言いかけるヒイラギにナルセスは手元の紙束を投げつける。
…それは確か今日の会議で使う重要な資料ではなかっただろうか?
当てられた方もたまったものではない。
モロに言い過ぎそうになったのは問題だが、少し気の毒だ。
「…で?覚えはあるんか?」
荒れるナルセスを尻目にラルゴはごく冷静に問掛けた。
さすがは前王が亡くなった時も平静を保っていた彼だ。
…悪く言えば他人事なのかもしれないが…
ラルゴの一言に一同はレオに注目した。
ヒイラギを叱っていたナルセスも、急に静かになる。
部屋は沈黙に包まれ、レオにとっては息苦しささえ感じた。
「……む」
一言「はい」と言えば済むはずなのだが、レオは上手い肯定の言葉が思い付かず顔を背けた。
間違った事ではない…はずだが、どうにもナルセスの視線が痛い。
むしろ注目されるのに慣れていない。
「…や、やはり…はっきりしないと言う事はやはり!!!!」
顔をそらした動作で肯定を悟ったナルセスは再び叫んだ。
彼もレオの深い事情は分かっている。
しかしそれでも言わねば気が済まなかった。
「我らは五つ国をまとめる国王なのだぞ!!軽はずみ…ではないかもしれんが…そのような行為をするなど、お前は国を、民を、どう思っているのだ?!国王は世襲制だ…間違いでも子が出来ると言う事は、次の国王が決まったも同然…さらに、他国にも影響する」
「……」
ではあの時どうやって拒否すれば良かったというのだ…!!
レオは喉まで出かかった「分かっている」という言葉を噛み殺した。
ナルセスの気持ちは分かる。言っている事も事実だ。
しかし…
「レオをそんなに責めないでよー」
今にも逃げ出しそうとした瞬間、今まで静かだったリーフが割り込んできた。
むぎゅとレオへくっつき、おもむろにヒイラギを指差す。
「そんな事言うんだったらヒイラギを叱ってよー」
「はあ?何でお…」
「存ぜぬとは言わせないのだよー。僕が知ってるって事分かってるでしょ?毎日毎日あの場所に通ってあーんな淫らな行為をして…イヤだわぁ、はしたないわぁ、けしからんわぁ」
リーフが一言紡ぐ度、どんどんヒイラギの顔から血の気が引いていった。
レオは思い出す…あの創国の娼婦館であった事を。
今までは暗黙の了解で言わなかったはずだが…
確かにヒイラギの行いを考えるとレオと同じ事が起こっても良い。
とにかくリーフのおかげでナルセスが向けた矛先がレオから外れた。
「詳しく話を聞かせてもらおうか、ヒイラギ…」
「は…はあ?な、何の事だよ?ははは」
ヒイラギの笑顔が引きつっている。
比例してナルセスの怒りが増してゆく。
しばらくは二人で言い合いだろう…
「…さて、早よ婆さんのとこ行こか」
「僕ナイスアシストだったでしょ?褒めてー」
「…ああ……ありがとう」
「どういたしましてー!ああー、早く赤ちゃんに会いたいなー、レオ似かなぁ?きっと絶対確実に可愛いだろうなー」
「礼、言えるようになったんやな。ふーん」
二人の喧嘩に思わず動きを止めてしまっていたが、ラルゴに肩をポンッと叩かれ、レオはようやく踵を返した。
どうやらリーフとラルゴはこちらの味方らしい。
そうだ。ナルセスに何を言われようと、自分は老婆に会い、話を聞かなければならない。
本物なのか罠なのか見極め、そして…リザの事を聞く。
レオは足早に謁見の間へと向かった。
「…見覚えのある、ピアス?」
「リザ隊長のです」
ドッと話しているうちに、兵士は多少落ち着いたようでレオの質問にも冷静に答える事が出来た。
それとは反対にレオは一瞬動揺した様に目を見開く。しかしすぐに目を細め何かを悟ったように軽い溜息を吐いた。
「…通せ」
「はっ」
短く言うレオに兵士も短く答え、素早く頭を下げてから退室した。
…騙すつもりなのかもしれない…
レオの脳裏に『偽物』という言葉が過る。
それと同時に『本当であってほしい』と強く願った。
…否、本物の可能性は高いかもしれない。
実際そのように仕組んだのだから…
しかしそうであったのならば…何故彼女自身が姿を見せないのだろう。
確かに『逃げろ』と命令したとはいえ、非力であろう老婆にこの城まで子を運ばせるのはあまりにも危険だ。
老婆が寝返る場合だってあるではないか。
…自身が共に城へ戻る事が一番の得策のはずだが…
いやそれ以前に…何故、子を自分の元へ運ばせたのだ?
城はある意味一番危険な場所ではないか…?
…やはり今来たモノは『罠』なのだろうか…
あれこれと今ここで考えていてもラチがあかない。
とにかく老婆と会い、見極めよう。
もし罠だとしても、リザのピアスを持っている…という時点で尋問する価値はある。
そして本物だったならば…
「…勝手に一人で話を進めようとしているが…!!」
刹那──レオの肩が乱暴に掴まれた。
後ろからの声は明らかに語尾が強く相手の苛立ちを感じる…が、レオは抵抗をしなかった。
チラリと視線を向けると、目元を吊り上げたナルセスが睨みつけていた。
「赤ん坊?お前の子?どういう事だ?!説明しろ!!そもそもそ…そ、そのような行為をしなければ、だな…子は出来ない!!」
怒鳴るナルセスは途中顔を赤らめて、言葉を濁す。
そしてヤケになったようにまた語尾を荒げる。
…王とはいえまだ歳若い。思春期なのだろう。
「…お前いつの間にセッ…」
「止めろヒイラギ!はしたない!」
明言を言いかけるヒイラギにナルセスは手元の紙束を投げつける。
…それは確か今日の会議で使う重要な資料ではなかっただろうか?
当てられた方もたまったものではない。
モロに言い過ぎそうになったのは問題だが、少し気の毒だ。
「…で?覚えはあるんか?」
荒れるナルセスを尻目にラルゴはごく冷静に問掛けた。
さすがは前王が亡くなった時も平静を保っていた彼だ。
…悪く言えば他人事なのかもしれないが…
ラルゴの一言に一同はレオに注目した。
ヒイラギを叱っていたナルセスも、急に静かになる。
部屋は沈黙に包まれ、レオにとっては息苦しささえ感じた。
「……む」
一言「はい」と言えば済むはずなのだが、レオは上手い肯定の言葉が思い付かず顔を背けた。
間違った事ではない…はずだが、どうにもナルセスの視線が痛い。
むしろ注目されるのに慣れていない。
「…や、やはり…はっきりしないと言う事はやはり!!!!」
顔をそらした動作で肯定を悟ったナルセスは再び叫んだ。
彼もレオの深い事情は分かっている。
しかしそれでも言わねば気が済まなかった。
「我らは五つ国をまとめる国王なのだぞ!!軽はずみ…ではないかもしれんが…そのような行為をするなど、お前は国を、民を、どう思っているのだ?!国王は世襲制だ…間違いでも子が出来ると言う事は、次の国王が決まったも同然…さらに、他国にも影響する」
「……」
ではあの時どうやって拒否すれば良かったというのだ…!!
レオは喉まで出かかった「分かっている」という言葉を噛み殺した。
ナルセスの気持ちは分かる。言っている事も事実だ。
しかし…
「レオをそんなに責めないでよー」
今にも逃げ出しそうとした瞬間、今まで静かだったリーフが割り込んできた。
むぎゅとレオへくっつき、おもむろにヒイラギを指差す。
「そんな事言うんだったらヒイラギを叱ってよー」
「はあ?何でお…」
「存ぜぬとは言わせないのだよー。僕が知ってるって事分かってるでしょ?毎日毎日あの場所に通ってあーんな淫らな行為をして…イヤだわぁ、はしたないわぁ、けしからんわぁ」
リーフが一言紡ぐ度、どんどんヒイラギの顔から血の気が引いていった。
レオは思い出す…あの創国の娼婦館であった事を。
今までは暗黙の了解で言わなかったはずだが…
確かにヒイラギの行いを考えるとレオと同じ事が起こっても良い。
とにかくリーフのおかげでナルセスが向けた矛先がレオから外れた。
「詳しく話を聞かせてもらおうか、ヒイラギ…」
「は…はあ?な、何の事だよ?ははは」
ヒイラギの笑顔が引きつっている。
比例してナルセスの怒りが増してゆく。
しばらくは二人で言い合いだろう…
「…さて、早よ婆さんのとこ行こか」
「僕ナイスアシストだったでしょ?褒めてー」
「…ああ……ありがとう」
「どういたしましてー!ああー、早く赤ちゃんに会いたいなー、レオ似かなぁ?きっと絶対確実に可愛いだろうなー」
「礼、言えるようになったんやな。ふーん」
二人の喧嘩に思わず動きを止めてしまっていたが、ラルゴに肩をポンッと叩かれ、レオはようやく踵を返した。
どうやらリーフとラルゴはこちらの味方らしい。
そうだ。ナルセスに何を言われようと、自分は老婆に会い、話を聞かなければならない。
本物なのか罠なのか見極め、そして…リザの事を聞く。
レオは足早に謁見の間へと向かった。
