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Esperanza Leon(完結)

──それからが大変だった。

あのリザが王の傍から居なくなったという情報はすぐに国中に知れ渡った。
今までは彼女がレオを護っていた…だから殺したくても殺せなかった。
それが今、障害がなくなったのだ。
もう戸惑う者はいなかった。
復讐や怨恨など複雑な理由ではなく単純に王の座を狙い、多くの者がレオの命を奪いにやってきた。
毎日、休む暇もなく。
幸い城の兵士達はレオの味方でいてくれた為、大きな怪我を負う事もなく、何とか生き残る事が出来た。
リザがいなくなり、とうとう独りになってしまったと思っていたが周りの兵士達はとても良くしてくれる。
気軽に声をかけてくれる上に、毎日怪我を心配してくれたり、一緒に食事をして騒いだり…
なんだか父が生きていた時が戻って来たようだった。
だから、少しずつだが、自然に笑えるようになっていた。
自分が命を狙われているという事も多少忘れる事ができた。
…だが…
どんなに楽しくなろうが、どんなに騒ごうが、どうしてもリザがいなくなった寂しさは忘れる事が出来なかった…



そんな慌ただしい日々が続き、気が付くとすでにリザがいなくなってから十月と少しが経ってしまっていた。
以前は日付なんて気にしていなかったが、あの日から暦と時計を眺めるのが日課となっている。
女々しいのは分かっているが、おかげで定例の会議などに遅刻する事が少なくなっているのも事実。
心なしか早寝早起きが板にも付いてきている。

…おかげで今日、武国での国王会議にもキチンと準備して望む事ができた。

「またヒイラギは遅刻か…ここのところ遅刻も欠席もないレオを見習って欲しいものだな」
そう言うのはナルセス。
最近は心なしかレオに優しい。毎度今のように褒めてくれている。

「顔色も良いしー、それに僕がいるからもう大丈夫なんだもんねーねー?昨日もデートしたもんねーねー」
いつも通り弾んだ声なのはリーフ。今日はキチンと男の服を着ている。
あの日から落ち込んでいたレオを頻りに心配していたのも彼だ。

「…どうでもええから、早く話を終わらせて帰りたいんやけど。仕事がまだ残ってんねん」
相変わらずなのはラルゴ。
彼だけは今も昔も全く変化なく忙しいらしい。

そうこうしているうちに部屋の扉が開き、悪びれる様子もないヒイラギが入ってきた。
遅刻とはいえ、比較的早い到着である。
ナルセスは当然のようにヒイラギを叱りつけているが、他の者は少し感心していた。
いつもなら会議が始まってから、または終わってからやってくるというのに…
それに、以前は一切会議に出ようともしなかった。
だから今、こうやって遅刻してでも顔を出すという変化に驚きもしている。


…毎日、何かしら変化し続けている。
日常には不変と言うモノはないのかもしれない。
父がいなくなって、リザがいなくなって…全てが変わってしまった。
増えるものも多かったが、自分にとっては減るものばかりである。
女神も意地が悪い。
一つでも何かしら与えてくれれば良いのに…

「…そんな変化なら喜べるのにな…」
「え?何か言った?」
ポツリと呟いたレオの顔を覗き、リーフがキョトンと首を傾げた。
しかしレオは「何でもない」と続ける。

──そう、もう自分の変化は求めない。
今までだって悪い方向にしか行かなかったのだから…もう期待しない。

「??…レオ、大丈─」
「レオ様!」
リーフが眉を顰めるのと同時に、
部屋のドアがナルセスとヒイラギの喧嘩を掻き消す位勢い良く開かれた。
その場にいた五人の視線がドアに集まる。
城の兵士だ。
いつもは健康的な顔色が、今は何故か青白く、汗でベシャベシャになっている。
…今は演習の時間ではなかったはずだが…

「…どうした」
「城の前に、婆さんが、持ってた、渡したいって…」
「…どこかの老婆が何かを献上しにきたのか?中身は?」
「ぅ…あ…ああ…ぅぉああ!」
更に汗を吹きだした兵士はしどろもどろと言葉を探るが、意を決した様に叫んだ。

「赤ん坊です!!!」
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