Esperanza Leon(完結)
「…どうだ?死に近づく感覚は?」
ユエは動きを緩め、レオに言った。
だが、レオはすでに答える事も出来ない位、息が上がっていた。
レオとてまだ少年だ。大人のユエには体力で劣ってしまう。
このまま続けていれば、レオは動く事も出来なくなり、倒れるだろう。
「お前のその歪んだ顔を父にも見せてやりたいな…!!」
「っぐ」
軽くユエが刀を振るう。しかしレオはその「軽く」も避けられず、脇腹を切られてしまった。
レオの顔が苦痛に歪み、その場に倒れてしまう。
…何とか起き上がるが、四つん這いのまま片手で腹の傷を押さえ、肩で息をして立てない。
ユエは笑った。
「ふんっ…無様な姿だな……父はこんな奴に──くそっ!」
言葉が終わる前に、ユエは力一杯レオを蹴った。
レオは抵抗もなく転がり、再び顔に泥を付ける。
だが、すぐに地面から離され宙に浮く──ユエがレオの胸倉を掴み持ちあげたのだ。
「一思いになんか殺さないさ…父がそうだったように、じわじわ痛みを分からせてから、殺してやる」
「…っ」
「怖いだろ?嫌だろう?…今までお前が殺してきた奴も、同じ思いで死んでいったんだ!」
「ぃ…ゃだ」
「まずは軽く、腕の骨を折ってやる」
ユエはレオの腕を掴もうと手を伸ばした──その瞬間、レオの表情が変わった。
レオは胸倉を掴むユエの右腕を両手に取り、そのまま下半身を上げ右腕にしがみつく。
流石にユエとて片手に重心が集中してしまうとバランスが取れなくなってしまう。
さらに加え、レオは勢い良く体をよじりユエのバランスをさらに崩しにかかった。
ユエは舌打ちをし、慌ててレオを振り払う…が、そのせいで隙を大きく作ってしまった。
地面に着地したレオは間髪いれずにユエに跳びかかる。
まずは刀を掴もうとする手を撃ち、次に足払いで倒す。倒れた所を馬乗りになり拳を握り振り下ろ──さなかった。
顔の寸での所で止め、レオとユエは固まった。
「……」
「……」
二人は動かず、かつ言葉も発さない。
しかし視線だけはお互いの目を睨み、緊張を解かないようにしている。
恐らく、自分が動けば相手が先に攻撃を仕掛けてくるだろう。
レオの拳、ユエの刀…お互いに武器をいつでも相手にぶつける準備は整っている。
──根負けした方が負ける…
二人は瞬きも忘れ、睨みあった。
だが、その沈黙が次の瞬間あっさりと破られてしまった。
二人の耳に小さい叫び声と地面に何かが叩きつけられる音が聞こえた。
視線だけ移す──否、ユエは目を見開き、顔も音の方へ向けた。
「カガリ!!!」
ユエが叫ぶと同時にレオも顔を向け、様子に息を飲んだ。
視線の先には、リザとカガリと呼ばれたユエの仲間の娘がいた。
しかし、カガリはリザによって地面に倒され、アックスの刃が肩に刺さっていた。
…恐らく、切断ギリギリだろう。
血が地面に染み込み、色が変わっている。
リザも体中、特に足を多く負傷しており、ポタポタと落ちていた。
「…レオ様から、離れな」
リザは言葉少なく言った。
手のアックスはアックスを持ち、カガリの肩を更に深く抉る。
──要求を飲まなければ殺す。
そういうことだろう。
リザには迷いがない。
ただ、ただ、傷だらけのレオを見つめ、静かな怒りを瞳に映しているだけだ。
ユエは表情からかなり迷っているのが見て分かった。
レオは深く事情を知らないが…恐らくユエにとってカガリはただの仲間ではないだろう。
…レオにとってのリザのように…
そう考えると、レオも内心焦り始めた。
──リザがかなり負傷している。
早く治療しないと、後遺症が残る可能性がある…
「ユ…ェ」
レオの焦りが顔に出始めたその時、身動き一つしなかったカガリの口が微かに動いた。
うっすらと瞳を開け、ユエに視線を送った。
「私に…構わない…で…アナタの…使命を…全うして」
自身もかなり痛いだろう。
しかし、カガリは微笑んだ。
ユエに心配をかけさせないように。
ユエはそのカガリの言葉と微笑みを見て、ゆっくり刀を地面に置いた。
レオは体が自由になった瞬間に跳び起き、リザに駆け寄った。
リザもほぼ同時にカガリからアックスを引き抜き、移動を開始する。
微妙に足を引き摺っているが、恐らく支障はないだろう…
今は早くこの場を離れ、安全を確保しなければならない。
何より…リザの治療をしなければ…
レオは走り出そうと足に力を入れる…が、一瞬躊躇ってしまった。
反射的に後ろを振り返り、『二人』の様子を確認する。
「レオ様!早く!」
「あ、ああ」
レオは確かに見た。
ユエがカガリに駆け寄り、抱きしめていた。その瞳からは涙が零れ、叫ぶように謝っていた。
「…すまない」
レオは自身にしか聞こえない位小さな声で呟いた。
ユエは動きを緩め、レオに言った。
だが、レオはすでに答える事も出来ない位、息が上がっていた。
レオとてまだ少年だ。大人のユエには体力で劣ってしまう。
このまま続けていれば、レオは動く事も出来なくなり、倒れるだろう。
「お前のその歪んだ顔を父にも見せてやりたいな…!!」
「っぐ」
軽くユエが刀を振るう。しかしレオはその「軽く」も避けられず、脇腹を切られてしまった。
レオの顔が苦痛に歪み、その場に倒れてしまう。
…何とか起き上がるが、四つん這いのまま片手で腹の傷を押さえ、肩で息をして立てない。
ユエは笑った。
「ふんっ…無様な姿だな……父はこんな奴に──くそっ!」
言葉が終わる前に、ユエは力一杯レオを蹴った。
レオは抵抗もなく転がり、再び顔に泥を付ける。
だが、すぐに地面から離され宙に浮く──ユエがレオの胸倉を掴み持ちあげたのだ。
「一思いになんか殺さないさ…父がそうだったように、じわじわ痛みを分からせてから、殺してやる」
「…っ」
「怖いだろ?嫌だろう?…今までお前が殺してきた奴も、同じ思いで死んでいったんだ!」
「ぃ…ゃだ」
「まずは軽く、腕の骨を折ってやる」
ユエはレオの腕を掴もうと手を伸ばした──その瞬間、レオの表情が変わった。
レオは胸倉を掴むユエの右腕を両手に取り、そのまま下半身を上げ右腕にしがみつく。
流石にユエとて片手に重心が集中してしまうとバランスが取れなくなってしまう。
さらに加え、レオは勢い良く体をよじりユエのバランスをさらに崩しにかかった。
ユエは舌打ちをし、慌ててレオを振り払う…が、そのせいで隙を大きく作ってしまった。
地面に着地したレオは間髪いれずにユエに跳びかかる。
まずは刀を掴もうとする手を撃ち、次に足払いで倒す。倒れた所を馬乗りになり拳を握り振り下ろ──さなかった。
顔の寸での所で止め、レオとユエは固まった。
「……」
「……」
二人は動かず、かつ言葉も発さない。
しかし視線だけはお互いの目を睨み、緊張を解かないようにしている。
恐らく、自分が動けば相手が先に攻撃を仕掛けてくるだろう。
レオの拳、ユエの刀…お互いに武器をいつでも相手にぶつける準備は整っている。
──根負けした方が負ける…
二人は瞬きも忘れ、睨みあった。
だが、その沈黙が次の瞬間あっさりと破られてしまった。
二人の耳に小さい叫び声と地面に何かが叩きつけられる音が聞こえた。
視線だけ移す──否、ユエは目を見開き、顔も音の方へ向けた。
「カガリ!!!」
ユエが叫ぶと同時にレオも顔を向け、様子に息を飲んだ。
視線の先には、リザとカガリと呼ばれたユエの仲間の娘がいた。
しかし、カガリはリザによって地面に倒され、アックスの刃が肩に刺さっていた。
…恐らく、切断ギリギリだろう。
血が地面に染み込み、色が変わっている。
リザも体中、特に足を多く負傷しており、ポタポタと落ちていた。
「…レオ様から、離れな」
リザは言葉少なく言った。
手のアックスはアックスを持ち、カガリの肩を更に深く抉る。
──要求を飲まなければ殺す。
そういうことだろう。
リザには迷いがない。
ただ、ただ、傷だらけのレオを見つめ、静かな怒りを瞳に映しているだけだ。
ユエは表情からかなり迷っているのが見て分かった。
レオは深く事情を知らないが…恐らくユエにとってカガリはただの仲間ではないだろう。
…レオにとってのリザのように…
そう考えると、レオも内心焦り始めた。
──リザがかなり負傷している。
早く治療しないと、後遺症が残る可能性がある…
「ユ…ェ」
レオの焦りが顔に出始めたその時、身動き一つしなかったカガリの口が微かに動いた。
うっすらと瞳を開け、ユエに視線を送った。
「私に…構わない…で…アナタの…使命を…全うして」
自身もかなり痛いだろう。
しかし、カガリは微笑んだ。
ユエに心配をかけさせないように。
ユエはそのカガリの言葉と微笑みを見て、ゆっくり刀を地面に置いた。
レオは体が自由になった瞬間に跳び起き、リザに駆け寄った。
リザもほぼ同時にカガリからアックスを引き抜き、移動を開始する。
微妙に足を引き摺っているが、恐らく支障はないだろう…
今は早くこの場を離れ、安全を確保しなければならない。
何より…リザの治療をしなければ…
レオは走り出そうと足に力を入れる…が、一瞬躊躇ってしまった。
反射的に後ろを振り返り、『二人』の様子を確認する。
「レオ様!早く!」
「あ、ああ」
レオは確かに見た。
ユエがカガリに駆け寄り、抱きしめていた。その瞳からは涙が零れ、叫ぶように謝っていた。
「…すまない」
レオは自身にしか聞こえない位小さな声で呟いた。
