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Esperanza Leon(完結)

誘導されつつ辿りついた先は「テレル平野」と呼ばれる広い平地だった。
大昔から大戦に使われている場所だが…レオは少し切れた息を落ち着かせるのも忘れ、軽く舌打ちした。

視界全体にこちらを狙う者達で埋め尽くされていた。
こんな人数…合戦と言った方が合っているのではないだろうか?
だが、狙われているのは自分一人。
肉食獣の群れに仔羊が投げ込まれたものだ。

敵はレオを確認すると、それぞれの武器をとり容赦なく襲いかかってきた。
中にはでたらめに武器を振り回す者もいるが、手練も少なからずいる。
レオは反撃も出来ずに、ただ避け、逃げる事しか出来なかった。

しかし、武具をしていないレオはどんどん体に傷を負っていく。
このままでは動きが鈍くなる一方だ…とは分かっているがどうする事も出来ない。
周りを見回しても、敵敵敵敵…

「(いつか見た光景だな…)」

緊急事態にも関わらず、レオの頭は霞がかかったようにぼんやりとし始めていた。
この感覚は忘れない。
──父が死んだ時と同じだ。
周りは全て殺意を向けてくる。
レオが血を流し、苦しむ事を笑う。
自分達の欲望だけを求める。

何の為に?
復讐?玉座?金?
ああいやだいやだいやだいやだしにたくないしにたくないしにたくないしに━…

レオの動きはピタリと止まった。
何の為に、自分は生きているのか?
どうして死にたくないと思うのか?
…死ねば、もう死ぬ事もないじゃないか…
痛くもないし、逃げる事もないし、脅える事もないし、悲しむ事もないし、自分が暴走してしまう事もないし

皆も喜んでくれるじゃないか


突然抵抗を止めたレオを周りは暫し警戒していたが、すぐに武器を振り上げ一斉に襲いかかった。
レオはゆっくりと瞳を閉じた。







「レオ様っ!!!!」

瞳を閉じていたレオの耳に金属が弾きあう音、男達の叫び声、倒れる音、そして、リザの声が飛び込んできた。

「お前ら!我らが主君に何をしているんだ!!──謀反とみなして、全員捕らえてくれる!」

勇ましいリザの声が終わるか終わらないかの時、周囲からまた別の男達の声が聞こえてきた。
レオが慌てて目を開けると、先程までこちらに襲いかかって来ていた謀反の兵と──城の兵が武器を交わらせている。

「レオ様、こちらです!!」

考えをまとめる間もなく、レオは腕を引っ張られた。
なすがままに引かれ、平原を駆け抜ける。
道中剣を交える兵士達の姿が目に焼き付いた──


「レオ様、御無事で何よりです」
ちょっとした物影の裏で、レオを引っ張っていたリザは手を放し、片膝を付いた。
時間にしては短いだろうが、何時間も走ったかのような疲労感が全身を包む。
レオはずるずるとゆっくり、だが崩れ落ちるように座り込んだ。
「…リ…ザ」
「遅くなってしまい申し訳ありません。城の方で反逆兵達に囲まれ、態勢を整えるのに手間取ってしまいました…もう少し早く気付いていれば…」
頭を垂れていたリザはレオに視線を合わせ、手を伸ばした。
レオの頬の傷をなぞる。
まるで自分が傷を負ったかのように、痛そうな悲しそうな表情を浮かべ、再び頭を垂れる。
「ここもすぐに見つかってしまいます。とにかく安全な場所へ移動しましょう」
レオは無言で頷き、肯定した。
今もすぐ横を反逆兵達が駆けている。
見つからないのが不思議なくらいだ。

リザの後ろに付きつつ、レオは慎重に進んでいく。
──しかし、レオの脳裏には消しようのない疑念が浮かんでいた。

…はたしてこんな場所に安全な場所などあるのだろうか?
平原は見渡す限り敵ばかり。
隠れる場所など到底ないように思える。
もし…もしこの誘導さえ罠だとしたら?
周りの戦いはあくまで演出で、ターゲットを所定の場所へ連れてゆく為の演技。
…だとしたら、この状況下で見つからないのも合点がゆく。
──…否、否、リザまで疑うのか?
ずっと自分の傍にいてくれた、唯一の味方でいてくれた、大事な者を…
どうしてしまったのか、しかし、どうしても疑念は拭えない。
疑いたくないのに、考えたくないのに、

頭に再び霞みがかかる──…


「レオ様?」
レオの様子がおかしい事にリザも気付いた。心配そうに顔を向ける。

──その刹那

すぐ横に立っていた小さな木が音を立てて倒れてきた。
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