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Esperanza Leon(完結)

空を見上げると、すでに陽は傾きかけていた。
そこまで長時間創国にいた感覚はないのだが…
レオは国境警備の兵士に話しかけているリーフを少し遠くから眺めつつ今日一日を振り返っていた。

朝は…ほぼ日課となった刺客を退け、リザの料理を食べた。
リザにはここに来る事は言っていないから、恐らく心配している…かもしれない。
逆に子守りする手間が省けて清々している事も考えられる。
…どちらにしろ、彼女には説教されてしまうだろう。

昼間からはヒイラギと共にここ、創国ティファレトにやってきた。
ちょうどここの国境を通ってきたのだが…今こちらを睨んでいる兵士を軽く気絶させての不法侵入だった…睨まれるだけで済んでいるのを幸いと思っておこう。

創国に入ってから……思い出すと恥ずかしい。
とにかくヒイラギが手慣れているのに驚いた。
自身の城に帰らず遊び回っているとは聞いていたが…

その後女の格好をしたリーフに助けられた。
一見すると男に見えない、美しすぎる姿だ。
むしろそこらを歩いている女よりも女性らしく美人なのではないだろうか?
事実、リーフよりも美しい人間を見た事がない。
…否、同じ位彼の父親も美しかったが…

なんにせよ、今リーフの手引きで武国へと帰れそうである。
…そういえばヒイラギはどうしただろう?
このままだと自分一人で帰る事になってしまう。
そうなれば、この武国への国境は再び閉鎖され、ヒイラギは逆隣の知国から遠回りして工国へ行く事になる。

リーフにその事を言おうにも、ずっと話しこんでいる。

レオはどうしたものかと腕組みをすると、後ろからある気配を感じた。恐らく100m程度は離れている。
しかし、離れているとはいえ殺気に近いものを出していればレオにはすぐ分かってしまう。

レオはゆっくりと振り返ると遠くに黒い人影を確認した。

黒い人影はズンズンとこちらに歩み寄り、あっという間にレオの正面へと辿り着いた。
その表情自体は笑っているが、目は正反対に怒りに満ちている。
黒い男はレオの正面に立ち、軽く睨みつけた。

「よぉ、へタレ。よくも、まあ逃げやがったな?」
「………今迎えに行こうと思っていたところだ」
「嘘吐くな、このアホ」

言葉を遮るように、黒い男…ヒイラギはレオの脛を思い切り蹴り上げた。
ヒイラギのブーツには鉄が仕込まれている。
その為かなりの鈍痛を感じたが、自業自得と思いレオは声一つ漏らさず耐えた。
…恐らく明日には青痣になっているだろう…
レオはズキズキと痛む感覚に軽く溜息を吐いた。

「あぁっー!レオ大丈夫??!」
「げっ…」

溜息と同時か否か、横からリーフが跳び付いて来た。
リーフの顔を見ると、ヒイラギはバツの悪そうな表情を浮かべ、そっぽを向く。

「痛い?痛かったよねぇ?可哀想に…なでなでしてあげるよ」
「…大した事はない、大丈夫だ」
「レオは大怪我しても、そう言うんだもん!もう!どっかの誰かさんはレオのそんな気遣いも理解しないでいじめるんだから…」
リーフはワザとらしく大声で言うと、視線をチラリとヒイラギに向けた。
「あれぇ?ヒイラギいたのぉ?気付かなかったぁ」
「わざとらしいんだよ、お前!」
ヒイラギはいつものように食ってかかろうとするが、すぐにピタリと止まり、再びそっぽを向いた。

リーフはそこまでではないのだが、ヒイラギはほぼ一方的にリーフを苦手としている。
性格的な事もあるのだろうが、大体は…父の事があるのだろう。

「あれぇ?ヒイラギそんな怒ってていいの?僕拗ねちゃって泣いちゃうよ?そしたら、ここ、通してあげないよ?」

リーフはヒイラギの顔を覗きこむようにニッコリ微笑んだ。
逆にヒイラギはニコリともせず、少し目に動揺を走らせる。

「くすくすっ…良いんだよ?ナルセスに今日の事話しちゃってもさ♪」
「おまっ…!!?」
「あはは、どうして動揺してるの?ただの世間話じゃない?でも、ナルセスどう思うかなぁ?まさかヒイラギがお仕事サボって女の子と…ううん、ヒイラギにはもう婚約者ちゃんがいるのにあんな事してるのが…フフフ…コワイコワイ」
リーフは声を殺して笑った。
普段のおどけた口調に相俟ってどこか刃物のように鋭い言葉でヒイラギを抉っている。
レオは不謹慎にも、リーフの服のせいもあるのかその様子を『綺麗』だと感じてしまった。
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