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Esperanza Leon(完結)

「それにしても、相変わらずここは血生臭いな」

ヒイラギはレオの隣で木にもたれながら、溜息を吐いた。工国も血に近い匂いはするが、それはあくまで鉄の匂いだ。あの癖のある、むせる様な血のものではない。

しかし、話から察するにヒイラギは昨日から武国にいる。
昨日から武国にいるという事は血の臭いにも慣れてしまっているはずなのだが…
…遊びまわっているとはいえ、やはり工王としての秀でた力があるのだろう。臭いを細かく判別できるのも…王の血なのかもしれない。

ヒイラギは呆れたように言葉を続ける。

「たくっ、居心地最悪だな。お前もどうにかしようとか考えないのかよ。てか、工国に臭いが流れてくるんだよ。超迷惑。あのリーフだって我慢できずに国境に壁作り始めるぞ」
「……すまない」
「ウザイ」

まくしたてるヒイラギの言葉にレオは俯くと、再び蹴りを入れられた。
ゴスンと骨に響き、なかなかの重さだ。レオは転げ回りたい気持ちを抑えつつ、少し顔を歪めた。

「…っっ」
「たくっ、お前ほんと国王似合ってねぇ」
「……すま」
「そこだ!なんですぐ謝るんだよ?バッカじゃねぇの!?根暗根暗根暗!!!俺は根暗な奴がいっっっっっっっっっっちばん嫌いなんだよ!!」

少し気にしている事を連発されると、さすがにレオも落ち込んでしまう。しかし、事実なので言い返せもしない。
そういえばヒイラギの父親も静かな者だったが…………否、この事はまた別の機会に考える事にしよう…
レオはさらに不機嫌になったヒイラギを見上げ、再び呟いた。
「すまんな…光子の魂百円、というから」
「『三つ子の魂百まで』だ…はぁ、お前がそんな調子だから武国は生臭いままなんだよ」
ヒイラギは本日何度目かの溜息を吐いた。
「お前は今の現状を何とも思ってないのか?」
「…どうにかしたいとは思っている」
「ならどうにかしろよ。お前が直接根源を粛清しても良い。兵士を集めて戦っても良い。とにかく武国の国王らしく無理矢理にでも周りにお前の力を見せない事にはダラダラとこんな状態が続くぞ」
「……しかし…」
「だっー、ハッキリしない奴だな!マジうぜぇ!分かった、俺ははっきり言ってやる。今のお前はこのままの状態を続けて死ぬか、誰も逆らえないような暴虐非道な暴君になるか、どちらかの道しかない。俺は後者をオススメする…死にたくないだろ?」
「……」
「武国の国王てのは人望か力のどちらかで民をまとめるもんだ。どっちも出来ないお前は…ただの臆病者だな」
レオはヒイラギの言葉に項垂れた。
…当然のように言い返せない。
正論だからだ。
いつも遊びまわっているのに、正しい事ばかり言うヒイラギは…やはり国王としての素質が十分なのだろう…

レオは少しヒイラギの事が羨ましくなった。

ヒイラギ、それとリーフは仕事をやらずに遊び回っている。
しかし国は不思議と滞りなく動いている。
いっそレオも国の事など忘れて自由にどこかへ行きたい…が、『そんな事は駄目だ』と脳の片隅に浮かび、体が動かなくなる。
かといって、ナルセスやラルゴのように勤勉に働く事はない。
勤勉に働くのならば今言われたように『力』で民を組み伏せればいい。

だが、
だが、
だが…


「…はぁ~」
「…ヒイラギ?」
暫しの沈黙が続くと、耐えかねたヒイラギがワザとらしく声を漏らした。
「マジでウザったいなお前…真面目なんだか不真面目なんだか…」
「すま…」
「ストップ!!」
レオが口癖のように謝ろうとすると、頭をバシンと叩かれた。
ヒイラギの精一杯の力なのだろうが…そこまでの威力はなかった。
「お前の性格は昔から知ってるが最近はますます酷いぞ。たくっ…めんどくせぇが……立て、行くぞ」
「行く?」
「隣だよ」
ヒイラギは二ヤリと笑い
「俺がその性格どうにかしてやるよ」
と創国の方向へ親指を向けた。
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