Esperanza Leon(完結)
レオは兵士達の号令を遠くで聞きながら、裏庭に足を踏み入れた。
武国は五つの国の中でも極端に陽の当らない場所が出来てしまう。
その中でも武城の裏庭は昼間でも特に薄暗い。
滅多に人も来ないので、しんと静まり返っている。
しかし、年中蒸し暑く騒がしい武城では、ちょっとした涼み場所になっていた。
レオは特に大きい木の根元に腰かけ、フッと息を漏らした。
ここまで刺客が来るとは思えないが、油断はしてはいけない。もしかしたら自身の頭上に矢を構えた者が隠れているかもしれない。
レオはそう思いつつ、おもむろに視線を上に向けた。
大樹の枝がざわざわと揺れ、まるで微かな陽の光を地面へ届かせないようにしているようだ。
…しかし、こんな大樹が揺れるほどの風は吹いていないはずだが…
レオはよく目を凝らし、大樹の枝を丁寧に見つめ直した。
薄暗い空間の中、明らかに不自然な影が一つ浮かんでいた。
微かに揺れている。ちょうど呼吸をしているように。
そして、それは人の形をしていた。
レオは一瞬目を見開いたが、すぐに下を向き溜息を吐いた。
動く必要はない。ましてや刺客でもない。よく見知った『奴』の気配だ。刺客ならばこちらにあからさまな殺気を放っているはずだが…『奴』はまた違う。
別の何かに、否、周りの者全てに殺気と近い拒絶の気を放っている。
…恐らく本人もそれには気付いていないようだが…
レオが何度目かの溜息を吐いた時、頭上で『ガザリ』と音がした。
次の瞬間、目の前に黒い影が落ちてきた。
「…起きたか」
「んん…あー、肩痛い。寝心地最悪だな」
「では自分の部屋で寝ろ」
「女も連れ込めない堅苦しい所になんか帰りたくないね」
『女』という言葉が出た時、レオは一瞬意味を考えあぐねたが、すぐに理解して口籠り、少々赤面した。
その様子を見逃すわけもなく、目の前に降りてきた黒い影…ヒイラギは含んだように笑う。
「なんだよ、お前まだなのかよ。好きなのを好きなだけお持ち帰り出来るんだ、王の特権だぜ、相手は断れないんだからな」
「……」
レオは何かを言いかけたが、何を言ってもからかわれてしまいそうなので黙っている事にした。
「それにしても昨日は災難だったな…ここの城下で何人か良い女を見つけて楽しんだのはいいが、旦那だか何だかが帰って来て超キレられてさ…こんな木の上で野宿するしかなくなったわけ。たくっ、どうして武国の奴は血の気が多いのかね。ホントウザイ…おい、聞いてるのか?この根暗」
ヒイラギは鉄入りのブーツでレオの脛を軽く小突く。
しかし、レオは無言だった。抵抗しても揚げ足を取られて笑われるだけだ。昔から口でナルセスにも勝てるヒイラギにはけして言い返さないのが仲間内での暗黙の了解である。
「(自分もこの位口が回れば味方になってくれる者も何人か現れていたのかもしれないな)」
「何こっち見てんだよ、気持ち悪い」
レオは次は少し強めに脛を蹴られてしまった。
武国は五つの国の中でも極端に陽の当らない場所が出来てしまう。
その中でも武城の裏庭は昼間でも特に薄暗い。
滅多に人も来ないので、しんと静まり返っている。
しかし、年中蒸し暑く騒がしい武城では、ちょっとした涼み場所になっていた。
レオは特に大きい木の根元に腰かけ、フッと息を漏らした。
ここまで刺客が来るとは思えないが、油断はしてはいけない。もしかしたら自身の頭上に矢を構えた者が隠れているかもしれない。
レオはそう思いつつ、おもむろに視線を上に向けた。
大樹の枝がざわざわと揺れ、まるで微かな陽の光を地面へ届かせないようにしているようだ。
…しかし、こんな大樹が揺れるほどの風は吹いていないはずだが…
レオはよく目を凝らし、大樹の枝を丁寧に見つめ直した。
薄暗い空間の中、明らかに不自然な影が一つ浮かんでいた。
微かに揺れている。ちょうど呼吸をしているように。
そして、それは人の形をしていた。
レオは一瞬目を見開いたが、すぐに下を向き溜息を吐いた。
動く必要はない。ましてや刺客でもない。よく見知った『奴』の気配だ。刺客ならばこちらにあからさまな殺気を放っているはずだが…『奴』はまた違う。
別の何かに、否、周りの者全てに殺気と近い拒絶の気を放っている。
…恐らく本人もそれには気付いていないようだが…
レオが何度目かの溜息を吐いた時、頭上で『ガザリ』と音がした。
次の瞬間、目の前に黒い影が落ちてきた。
「…起きたか」
「んん…あー、肩痛い。寝心地最悪だな」
「では自分の部屋で寝ろ」
「女も連れ込めない堅苦しい所になんか帰りたくないね」
『女』という言葉が出た時、レオは一瞬意味を考えあぐねたが、すぐに理解して口籠り、少々赤面した。
その様子を見逃すわけもなく、目の前に降りてきた黒い影…ヒイラギは含んだように笑う。
「なんだよ、お前まだなのかよ。好きなのを好きなだけお持ち帰り出来るんだ、王の特権だぜ、相手は断れないんだからな」
「……」
レオは何かを言いかけたが、何を言ってもからかわれてしまいそうなので黙っている事にした。
「それにしても昨日は災難だったな…ここの城下で何人か良い女を見つけて楽しんだのはいいが、旦那だか何だかが帰って来て超キレられてさ…こんな木の上で野宿するしかなくなったわけ。たくっ、どうして武国の奴は血の気が多いのかね。ホントウザイ…おい、聞いてるのか?この根暗」
ヒイラギは鉄入りのブーツでレオの脛を軽く小突く。
しかし、レオは無言だった。抵抗しても揚げ足を取られて笑われるだけだ。昔から口でナルセスにも勝てるヒイラギにはけして言い返さないのが仲間内での暗黙の了解である。
「(自分もこの位口が回れば味方になってくれる者も何人か現れていたのかもしれないな)」
「何こっち見てんだよ、気持ち悪い」
レオは次は少し強めに脛を蹴られてしまった。
