Esperanza Leon(完結)
≪五つ国歴554年≫
レオは突然覚醒した。
ガバッとベッドから起き上がると、申し訳程度に掛かっていた布が床に落ちる。
頭がガンガンする。まるで脳みそがシェイクされたように視界が揺れている。
『あの日』からよく眠れていないはずなので、今回も目を瞑っていただけのつもりだったが……何か懐かしい夢を見ていた気がする。
━━自分が武国の国王になって三年。
今のように、女神に会う夢を繰り返し見ている。
父と他国の王の死、王権の継承、そして女神との会話…今ここにいるのが夢なのか、それとも夢が現実なのか…最近は判別が難しくなってきている。
レオはゆっくりとベッドから離れると、服と髪を整えた。
夢の中ではまだ幼い体つきだったが、今はもう大人同然に身長も高くなり逞しくもなった。
精悍な顔付きも含めリーフからは『自分が女だったら抱かれても良い位かっこいいよ』と褒められたが、如何せんレオには自身のカッコ良さにピンとは来ていなかった。
それに、外見が良くても残念ながらモテる為の女が周りがいない。
……いや、
「…む」
━刹那、何かを察したレオが大きく横に飛ぶと同時に部屋の窓ガラスが砕け散った。
床には大きな弓矢が刺さっている。
咄嗟に窓の外を見ると遠くの木に微かな光が見え、揺れた。
レオはいつも足に付けているナイフを素早く取ると、割れた窓から光の見えたソコへ思い切り投げる。
風を切り、銀に輝くナイフは━━目標に当たった。
「…ふぅ」
レオはゆっくりと息を整え、立ち上がると後ろのドアが勢いよく開かれた。
…いつもの光景だ。
「レオ様今の音は!!?」
「…窓の外から弓を放たれた…相手は…始末しておいた、片付けておいてくれ」
「…お怪我は?」
「ない」
ホッと胸を撫で下ろし、ドアの前に立つ背の高い女…リザは安堵の表情を浮かべた。
リザはレオの側近そして城の兵士をまとめる近衛兵長を務めている。
女性ながら他の男に引けを取らない強さは、誰からも一目置かれ、近衛兵長として尊敬もされていた。
しかし、近衛兵長になれたのは強さ、実力だけが理由ではない。
人望があったからでもない。
彼女にしか務まらない為である。
決してレオを裏切らない、レオの味方は彼女しかいなかった━
レオは王に即位してから多くの敵がいる。否、敵しかいなかった。
それは武国の国民ならば誰もが知っている事実…『レオは自身の命惜しさに城にいた者全てを惨殺した』からだ。
国民から反感を買わない方がおかしい。
それを行わざる得なかった理由、そんな事は関係がない。
『レオが多くの国民を殺した』という事実には変わりがないのだから…
国民はレオ王を暴君と呼び、国の平和を取り戻そうと反乱を度々起こしていた。
中には『自分が王に』という思いの者も少なくからずいたが、多くは『復讐』を誓っての行動だった。
レオが殺した城の兵士、ならびに各領土を治める主にも家族がいた。
部下も愛する者も友人も恩人も同志も隣人も…多くの者は大切な者を失くした。
この悲しみは恨みは虚しさは、全てレオのせいだ。
だから、レオに復讐する。
大切な者の墓前に奴の首を供える為に…
反乱もとい、レオ暗殺は昼夜問わず行われる。
食事の時も入浴の時も就寝の時も…レオが油断している隙を狙うように、絶え間なく続く。
しかし、一向に目標を討つ事が出来ないでいる。
それは何故か?
一つにレオ自身いつも気を張っている。
眠る時も武装したまま、熟睡していない。
入浴時は、武器を手放さない上に自身の体そのものを武器にしてしまう体術の使い手だ。
…だが、そんなレオも油断する時があるはずだ。
あるのだが…二つ目の防衛を張っている。
側近の存在だ。
レオの側近は女戦士のリザ。
代々武王に仕える戦士の家の出である。
リザも例外ではなく、幼少時から武王に仕え、そして今はレオ王の側近であり、城の衛兵を取り仕切っている。
彼女はレオに忠誠を誓った三年前の『惨殺事件』からずっとレオの傍を離れない。
まるで姫を守る騎士のように、自身が傷つこうと誰に何と言われようとリザは王の護衛を止めなかった。
その忠誠の強さが彼女を近衛兵長にした一番の理由だった。
その二つの理由で、辛うじてながらもレオ王の治世は続いていた。
復讐を遂げようとする者、治世を終わらせようとする者、自身が王座に就こうとする者、そして、抵抗するレオと主君を守るリザ──
その攻防は収まる事無く、日々悪化し続けている。
レオは突然覚醒した。
ガバッとベッドから起き上がると、申し訳程度に掛かっていた布が床に落ちる。
頭がガンガンする。まるで脳みそがシェイクされたように視界が揺れている。
『あの日』からよく眠れていないはずなので、今回も目を瞑っていただけのつもりだったが……何か懐かしい夢を見ていた気がする。
━━自分が武国の国王になって三年。
今のように、女神に会う夢を繰り返し見ている。
父と他国の王の死、王権の継承、そして女神との会話…今ここにいるのが夢なのか、それとも夢が現実なのか…最近は判別が難しくなってきている。
レオはゆっくりとベッドから離れると、服と髪を整えた。
夢の中ではまだ幼い体つきだったが、今はもう大人同然に身長も高くなり逞しくもなった。
精悍な顔付きも含めリーフからは『自分が女だったら抱かれても良い位かっこいいよ』と褒められたが、如何せんレオには自身のカッコ良さにピンとは来ていなかった。
それに、外見が良くても残念ながらモテる為の女が周りがいない。
……いや、
「…む」
━刹那、何かを察したレオが大きく横に飛ぶと同時に部屋の窓ガラスが砕け散った。
床には大きな弓矢が刺さっている。
咄嗟に窓の外を見ると遠くの木に微かな光が見え、揺れた。
レオはいつも足に付けているナイフを素早く取ると、割れた窓から光の見えたソコへ思い切り投げる。
風を切り、銀に輝くナイフは━━目標に当たった。
「…ふぅ」
レオはゆっくりと息を整え、立ち上がると後ろのドアが勢いよく開かれた。
…いつもの光景だ。
「レオ様今の音は!!?」
「…窓の外から弓を放たれた…相手は…始末しておいた、片付けておいてくれ」
「…お怪我は?」
「ない」
ホッと胸を撫で下ろし、ドアの前に立つ背の高い女…リザは安堵の表情を浮かべた。
リザはレオの側近そして城の兵士をまとめる近衛兵長を務めている。
女性ながら他の男に引けを取らない強さは、誰からも一目置かれ、近衛兵長として尊敬もされていた。
しかし、近衛兵長になれたのは強さ、実力だけが理由ではない。
人望があったからでもない。
彼女にしか務まらない為である。
決してレオを裏切らない、レオの味方は彼女しかいなかった━
レオは王に即位してから多くの敵がいる。否、敵しかいなかった。
それは武国の国民ならば誰もが知っている事実…『レオは自身の命惜しさに城にいた者全てを惨殺した』からだ。
国民から反感を買わない方がおかしい。
それを行わざる得なかった理由、そんな事は関係がない。
『レオが多くの国民を殺した』という事実には変わりがないのだから…
国民はレオ王を暴君と呼び、国の平和を取り戻そうと反乱を度々起こしていた。
中には『自分が王に』という思いの者も少なくからずいたが、多くは『復讐』を誓っての行動だった。
レオが殺した城の兵士、ならびに各領土を治める主にも家族がいた。
部下も愛する者も友人も恩人も同志も隣人も…多くの者は大切な者を失くした。
この悲しみは恨みは虚しさは、全てレオのせいだ。
だから、レオに復讐する。
大切な者の墓前に奴の首を供える為に…
反乱もとい、レオ暗殺は昼夜問わず行われる。
食事の時も入浴の時も就寝の時も…レオが油断している隙を狙うように、絶え間なく続く。
しかし、一向に目標を討つ事が出来ないでいる。
それは何故か?
一つにレオ自身いつも気を張っている。
眠る時も武装したまま、熟睡していない。
入浴時は、武器を手放さない上に自身の体そのものを武器にしてしまう体術の使い手だ。
…だが、そんなレオも油断する時があるはずだ。
あるのだが…二つ目の防衛を張っている。
側近の存在だ。
レオの側近は女戦士のリザ。
代々武王に仕える戦士の家の出である。
リザも例外ではなく、幼少時から武王に仕え、そして今はレオ王の側近であり、城の衛兵を取り仕切っている。
彼女はレオに忠誠を誓った三年前の『惨殺事件』からずっとレオの傍を離れない。
まるで姫を守る騎士のように、自身が傷つこうと誰に何と言われようとリザは王の護衛を止めなかった。
その忠誠の強さが彼女を近衛兵長にした一番の理由だった。
その二つの理由で、辛うじてながらもレオ王の治世は続いていた。
復讐を遂げようとする者、治世を終わらせようとする者、自身が王座に就こうとする者、そして、抵抗するレオと主君を守るリザ──
その攻防は収まる事無く、日々悪化し続けている。
