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Esperanza Leon(完結)

「これは、一体何が」
国の見回りから帰った一団…その中の紅一点リザは変わり果てた城内部の様子に絶句した。
城内のいたる場所に事切れた兵士が倒れている。
外傷はそれぞれに違うが、一番目立つのは打撃によるものだ。
肋骨はもちろん、手足、顔面、全身が殴り折られている。
中には顔の判別も出来ない位滅茶苦茶な者もいた。

入り口周辺で倒れている兵士達は≪ナニモノ≫かから逃げてきたのだろう。
這ってきた跡が生々しく床を汚している…
見回りの一団全員で軽く入口周辺を探したが、生存者はいないようだった。
残りは奥だが…入口でこの状態なのだから…希望は薄いだろう。
「…とにかく、城内を見回る…リザ、お前はレオ様を探してくれ。残りの者達は各自生存者捜索、犯人確保だ…気をつけろ」
「了解」

隊長の声で一同頷くと、それぞれ走り出した。隊長は言葉の最後に含みを持たせた。
『気をつけろ』
城下へ見回りに出る兵士達は城兵の中でも先鋭された腕の持ち主ばかりだ。
だからそこらの戦士など片手で捻る位の実力を持っている。そんな者達に『気をつけろ』とは…
確かに、城を守る兵達も弱くはない。国王の傍に相応しい、と選ばれた戦士なのだから。
そのはずなのに…一人残らず殺されている。相手がそれほどの腕の持ち主、という事だ。

「(レオ様、御無事で…!!)」
リザは脳裏にレオの倒れた姿を過ぎらせ、身震いをした。


長い廊下を抜け、リザは謁見の間へ急いだ。
今日は確か各領土の主が集る定例会議だったはず。だから、必然的にレオはそこにいるはずだとは思うのだが…
リザが足早に曲がり角を曲がると、見覚えのある姿が視界に飛び込んできた。
「カマル近衛兵長!!」
「うっ…リザ、ぐっ」
リザが叫ぶと同時に、男…近衛兵長を務めるカマルは倒れた。慌てて起き上がらせて、壁に背を預けるが…リザの手は血で真っ赤になってしまった…
城に帰って来てから初めての生存者…だが、もう息も絶え絶えで目も虚ろに近い。ゆっくりと床は紅く染まり、カマルがもう長くはない事が手に取るように分かってしまった。
「はぁ…はぁぁ…わた…しはだ、めだっ…」
「!?…カマルさん!気をしっかり持って!な、何があったんですか!?誰がこんな事を…」
「……」
リザが必死に呼びかけるが、カマルは聞こえていないかのように答えない。
焦点の合わない瞳で虚空を見つめるばかりだ。
「カマルさん!」
「…リザ……私は、だ、めだっ…た」
「また、何を…!!」
「だが…おま、え、なら、きっと……レオ様、を…レオ様を救ってくれ」
「えっ」
━…最後の力を振り絞ったのだろう。
言葉を言い終わると同時にカマルの体から力が抜け、動かなくなった。
リザは悔しさと悲しさに拳を力一杯握る…しかし、カマルの最後の言葉を思い出し立ち上がった。
「…レオ様…」
視線の先には、謁見の間へ続く開かれたままの扉が映っていた。

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