Esperanza Leon(完結)
「王は出発なされたようですね」
レオが城内に戻ると、一人の女性が声をかけてきた。
女性というよりも男性に近い長身に赤みの強い茶髪。一瞬血と見間違ってしまう錆色の瞳はまるで獣のように鋭い。手には背丈程ある斧が握られている。
「(…重くないのだろうか…)」
毎度そんな疑問に首を傾げてしまうが、レオは気を取り直して向き直った。
「ああ…いつもながら威勢良く行ったよ」
「あははっ、裏にいたあたしにもその声聞こえてきましたよ」
快活に笑う女性はレオの横に並ぶ。レオはそれを合図にしたようにゆっくりと歩き始めた。
「本当にカジキ様の声はよく通りますよね。こう、聴いているこちらが明るくなるというか、落ち込んでても元気になるというか!」
「リザは元から煩…明るいと思うぞ」
「…今『煩い』って言いかけませんでした?」
「気のせいだ」
「気のせいじゃありませんって!全く、こーんな繊細でか弱い女の子に煩いだなんて失礼ですよ」
「その武器を持って言う事じゃないな」
レオはクスリと笑うと、女性─リザもまた笑った。
リザは城で唯一の女戦士であり、代々武王家に仕える戦士の家系だ。
年齢はレオよりも六歳上だが、底抜けの明るさで寡黙な彼とも仲が良い。
武術の腕もそこらの男に引けを取らず、国王も実力を認めるほどだ。レオとも対等に戦える数少ない人物とも言える。
「それで?今日の怪我人は何人になった?」
「ナンノオハナシデショ」
「私達が港へ行っている時、カマル近衛長の代わりに訓練の指南役をしていたんだろう?…お前は毎回手加減というモノを知らない」
「手加減したらいざという時に動けないでしょう?!」
「リザ…」
「…15人吹っ飛ばしました。ゴメンネ」
そう言いつつ、リザはテヘッと悪びれない様子でレオを覗き込んで謝罪?した。
レオもこれは毎度の事なので覗き込んだリザの額を軽くペチッとして少し笑った。
リザは寡黙であまり感情を表に出さないレオにも普通に接してくれる。
大体の者は『王子』『王位継承者』『王族』というだけで畏まり、一歩下がってしまうが、リザはまるで友人のように付き合ってくれた。
レオにとっては父と同等位に信頼できる、大事な人間だ。
いつも騒がしい父がいる。
明るく対等に扱ってくれるリザがいる。
少し畏まりつつも、自分をフォローしてくれる兵士がいる。
将来を期待してくれている民がいる。
レオはそれだけで幸せだった。十分だった。
この先も、ずっとそんな幸せが続く。それ以外の未来は考えもしなかった。
残された時間が僅かとは知らずに…
レオが城内に戻ると、一人の女性が声をかけてきた。
女性というよりも男性に近い長身に赤みの強い茶髪。一瞬血と見間違ってしまう錆色の瞳はまるで獣のように鋭い。手には背丈程ある斧が握られている。
「(…重くないのだろうか…)」
毎度そんな疑問に首を傾げてしまうが、レオは気を取り直して向き直った。
「ああ…いつもながら威勢良く行ったよ」
「あははっ、裏にいたあたしにもその声聞こえてきましたよ」
快活に笑う女性はレオの横に並ぶ。レオはそれを合図にしたようにゆっくりと歩き始めた。
「本当にカジキ様の声はよく通りますよね。こう、聴いているこちらが明るくなるというか、落ち込んでても元気になるというか!」
「リザは元から煩…明るいと思うぞ」
「…今『煩い』って言いかけませんでした?」
「気のせいだ」
「気のせいじゃありませんって!全く、こーんな繊細でか弱い女の子に煩いだなんて失礼ですよ」
「その武器を持って言う事じゃないな」
レオはクスリと笑うと、女性─リザもまた笑った。
リザは城で唯一の女戦士であり、代々武王家に仕える戦士の家系だ。
年齢はレオよりも六歳上だが、底抜けの明るさで寡黙な彼とも仲が良い。
武術の腕もそこらの男に引けを取らず、国王も実力を認めるほどだ。レオとも対等に戦える数少ない人物とも言える。
「それで?今日の怪我人は何人になった?」
「ナンノオハナシデショ」
「私達が港へ行っている時、カマル近衛長の代わりに訓練の指南役をしていたんだろう?…お前は毎回手加減というモノを知らない」
「手加減したらいざという時に動けないでしょう?!」
「リザ…」
「…15人吹っ飛ばしました。ゴメンネ」
そう言いつつ、リザはテヘッと悪びれない様子でレオを覗き込んで謝罪?した。
レオもこれは毎度の事なので覗き込んだリザの額を軽くペチッとして少し笑った。
リザは寡黙であまり感情を表に出さないレオにも普通に接してくれる。
大体の者は『王子』『王位継承者』『王族』というだけで畏まり、一歩下がってしまうが、リザはまるで友人のように付き合ってくれた。
レオにとっては父と同等位に信頼できる、大事な人間だ。
いつも騒がしい父がいる。
明るく対等に扱ってくれるリザがいる。
少し畏まりつつも、自分をフォローしてくれる兵士がいる。
将来を期待してくれている民がいる。
レオはそれだけで幸せだった。十分だった。
この先も、ずっとそんな幸せが続く。それ以外の未来は考えもしなかった。
残された時間が僅かとは知らずに…
