ハンター試験編
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キルアに背負われたままヌメーレ湿原まで辿り着いた。ゴンと競走しだした時は流石にハンデが重すぎないかと思ったものの、そこは流石キルアだと言うべきだろう。息一つ乱すことなく地下を抜けきってしまった。一旦降ろしてもらった私はキルアにお礼を言った。
「ありがとう。おかげで受験者一、楽しちゃった」
「いいって。ああはならなくて良かったな」
キルアの目線の先を辿ると、地下からの出口からシャッターが下りるところだった。あと少し、間に合わなかった受験者の悲痛な叫びはまるで私を咎めているようだった。一次試験はまだ終わっていない。それどころかやっと半分といったところだった。後半の試験の難しさを知っている身としては、ここで脱落_________命拾いして良かったと思えるくらいだ。試験官のサトツが、シャッターが下りきったと同時に説明を開始した。
「この湿原で生きるもの達はあらゆる方法で欺いた獲物を捕食します。標的を騙し、それを食い物にする生物達の生態系こそが詐欺師の塒と呼ばれる所以です」
「騙されると分かっていて騙される馬鹿はいねーぜ」
レオリオ、そういうのフラグって言うんだよ。そんな忠告をしてあげる人は誰もいなかった。ここは特にフラグが死に直結する世界だというのに。
「騙されるな!そいつは偽者だ――本物の試験官はオレだからな!」
そして数瞬も経たないうちに早速のフラグ回収。シャッターの向こうから絶妙なタイミングで出てきた男。ボロボロの有様に顔を顰める。先ほどのサトツの説明は受験者にどんな影響を及ぼしたのか私には分からない。何が嘘で何が本当か。周囲がざわつき始める。
「これを見ろ!ヌメーレ湿原に生息する人面猿だ」
その男が持っていたのはサトツそっくりの顔をした人面猿。周囲の動揺は確実に大きくなっていく。波紋のように一人、二人、と疑念は伝播する。
「人面猿は新鮮な人肉を好むが、手足が細長いため非常に力が弱い。だからこそ自らを人に扮装させ巧みな言葉で人間を湿原へと誘い込み他の生き物と協力して獲物を生け捕りにするんだ!」
沈黙が場を支配する。本当によくできた演技だ。普通の人であれば全てを信じてしまうのだろうか。サトツが黙しているのも判断に困るのだろう。しかし、生憎なことにここには普通ではない人間がいた。
「くっく……。なるほどなるほど」
ヒソカの手から放たれた数枚のトランプは自称本物の命を奪った。サトツは難なく受け止めている。本物の試験官はサトツだということが明らかになったということだ。受験者はこの湿原の洗礼を目の当たりにすることになった。そして感じただろう。先ほどまでのことは単なる肩慣らしにすぎないのだと。この先待っているのは正真正銘命を懸けた戦いなのだと。
湿原は進むたびに霧が濃くなっていく。先ほどまで大したことはないと思っていたものの、気が付けば一寸先は闇ならぬ白。一度前を見失えば前後不覚になること必須な悪条件だった。そんな中、先ほどまで隣を走っていたゴンはいない。ゴンは後ろを走っていたクラピカとレオリオを心配して二人の元へ駆けて行ってしまった。馬鹿な奴、キルアが小さく呟いた。まるで理解が出来ないと言わんばかりに。ゴンがいなくなってからキルアはスケボーに乗り出した。何だかそれは拗ねているようにも思えた。
「……良かったの?ゴンについていかなくて」
喋らなくなってしまったキルアに迷った末、私は話しかけた。キルアに背負われているため、その表情まではわからなかった。
「別に。一応忠告はしたし」
お前も行けなんて言わないよな、キルアは続けてそう言った。淡々としているようでその声には暗い感情が滲んでいる。キルアは暗殺者に向いていない、何故だかそんな感想をここで抱いた。私は見えないのに首を横に振った。
「逆に背負われた立場で、キルアの意思を無視したようなこと言ったらそれこそ何様って話だし、言わないよ……それに、」
「それに?」
「それにここでキルアに降ろされたら私、きっと死んじゃうよ」
笑い混じりに言えば、キルアは何だか気が抜けたみたいだった。呆れたともとれる。ただ、キルアが本当に私を置いていってしまうと、言うまでもないけれど私にとってあまりよろしい展開ではない。いくらサーヴァント化したからと言ってどこまで出来るか完全に把握しているはずもなく、不安要素が大きすぎる。下手したらバッドエンドを一人迎える可能性だってありえるのだ。なにそれいやすぎる。
「ここまできて置いていくとか流石に言わねーよ」
「キルアが置いていったら、毎晩夢枕に立たなきゃいけないところだった」
「流石に毎晩はやりすぎじゃね?」
「女は蛇のように執念深いからね」
「こえー」
けらけら笑うキルアには先ほど感じた暗さはもう残っていないようだった。それに安心する。キルアには二面性があって、暗殺者としての冷静な部分は時としてキルアの少年らしい心の妨げになるのだろう。レオリオでもクラピカでも、私でもない。ゴンはキルアにとってよりいっそう特別な存在なのだ。ただ、その答えにたどり着くまでにまだもう少しだけかかる。それだけの話だ。
「よっ、と」
「ねえ、今ちょっと手の力抜いたよね。さっきも言ったけど、私の命はキルアが握ってるんですが、そこのところどうお考えでしょうか」
「あ、やっぱバレた?」
「考え直そう止めるんだキルアくん後生だから」
「えー?なんて、冗談。さっきも言ったけど、落とさないって」
元気が戻りすぎなのも、考え物なのかもしれない。悪戯っ子としてパワーアップしたキルアは一次試験終了まで、時折私をからかって遊ぶのだった。その度に律儀な私の心臓は大きく反応するのだけれど、悔しいから黙っておいた。背負われているのだから隠せていないだろう、そんなツッコミは無しで。
「ありがとう。おかげで受験者一、楽しちゃった」
「いいって。ああはならなくて良かったな」
キルアの目線の先を辿ると、地下からの出口からシャッターが下りるところだった。あと少し、間に合わなかった受験者の悲痛な叫びはまるで私を咎めているようだった。一次試験はまだ終わっていない。それどころかやっと半分といったところだった。後半の試験の難しさを知っている身としては、ここで脱落_________命拾いして良かったと思えるくらいだ。試験官のサトツが、シャッターが下りきったと同時に説明を開始した。
「この湿原で生きるもの達はあらゆる方法で欺いた獲物を捕食します。標的を騙し、それを食い物にする生物達の生態系こそが詐欺師の塒と呼ばれる所以です」
「騙されると分かっていて騙される馬鹿はいねーぜ」
レオリオ、そういうのフラグって言うんだよ。そんな忠告をしてあげる人は誰もいなかった。ここは特にフラグが死に直結する世界だというのに。
「騙されるな!そいつは偽者だ――本物の試験官はオレだからな!」
そして数瞬も経たないうちに早速のフラグ回収。シャッターの向こうから絶妙なタイミングで出てきた男。ボロボロの有様に顔を顰める。先ほどのサトツの説明は受験者にどんな影響を及ぼしたのか私には分からない。何が嘘で何が本当か。周囲がざわつき始める。
「これを見ろ!ヌメーレ湿原に生息する人面猿だ」
その男が持っていたのはサトツそっくりの顔をした人面猿。周囲の動揺は確実に大きくなっていく。波紋のように一人、二人、と疑念は伝播する。
「人面猿は新鮮な人肉を好むが、手足が細長いため非常に力が弱い。だからこそ自らを人に扮装させ巧みな言葉で人間を湿原へと誘い込み他の生き物と協力して獲物を生け捕りにするんだ!」
沈黙が場を支配する。本当によくできた演技だ。普通の人であれば全てを信じてしまうのだろうか。サトツが黙しているのも判断に困るのだろう。しかし、生憎なことにここには普通ではない人間がいた。
「くっく……。なるほどなるほど」
ヒソカの手から放たれた数枚のトランプは自称本物の命を奪った。サトツは難なく受け止めている。本物の試験官はサトツだということが明らかになったということだ。受験者はこの湿原の洗礼を目の当たりにすることになった。そして感じただろう。先ほどまでのことは単なる肩慣らしにすぎないのだと。この先待っているのは正真正銘命を懸けた戦いなのだと。
湿原は進むたびに霧が濃くなっていく。先ほどまで大したことはないと思っていたものの、気が付けば一寸先は闇ならぬ白。一度前を見失えば前後不覚になること必須な悪条件だった。そんな中、先ほどまで隣を走っていたゴンはいない。ゴンは後ろを走っていたクラピカとレオリオを心配して二人の元へ駆けて行ってしまった。馬鹿な奴、キルアが小さく呟いた。まるで理解が出来ないと言わんばかりに。ゴンがいなくなってからキルアはスケボーに乗り出した。何だかそれは拗ねているようにも思えた。
「……良かったの?ゴンについていかなくて」
喋らなくなってしまったキルアに迷った末、私は話しかけた。キルアに背負われているため、その表情まではわからなかった。
「別に。一応忠告はしたし」
お前も行けなんて言わないよな、キルアは続けてそう言った。淡々としているようでその声には暗い感情が滲んでいる。キルアは暗殺者に向いていない、何故だかそんな感想をここで抱いた。私は見えないのに首を横に振った。
「逆に背負われた立場で、キルアの意思を無視したようなこと言ったらそれこそ何様って話だし、言わないよ……それに、」
「それに?」
「それにここでキルアに降ろされたら私、きっと死んじゃうよ」
笑い混じりに言えば、キルアは何だか気が抜けたみたいだった。呆れたともとれる。ただ、キルアが本当に私を置いていってしまうと、言うまでもないけれど私にとってあまりよろしい展開ではない。いくらサーヴァント化したからと言ってどこまで出来るか完全に把握しているはずもなく、不安要素が大きすぎる。下手したらバッドエンドを一人迎える可能性だってありえるのだ。なにそれいやすぎる。
「ここまできて置いていくとか流石に言わねーよ」
「キルアが置いていったら、毎晩夢枕に立たなきゃいけないところだった」
「流石に毎晩はやりすぎじゃね?」
「女は蛇のように執念深いからね」
「こえー」
けらけら笑うキルアには先ほど感じた暗さはもう残っていないようだった。それに安心する。キルアには二面性があって、暗殺者としての冷静な部分は時としてキルアの少年らしい心の妨げになるのだろう。レオリオでもクラピカでも、私でもない。ゴンはキルアにとってよりいっそう特別な存在なのだ。ただ、その答えにたどり着くまでにまだもう少しだけかかる。それだけの話だ。
「よっ、と」
「ねえ、今ちょっと手の力抜いたよね。さっきも言ったけど、私の命はキルアが握ってるんですが、そこのところどうお考えでしょうか」
「あ、やっぱバレた?」
「考え直そう止めるんだキルアくん後生だから」
「えー?なんて、冗談。さっきも言ったけど、落とさないって」
元気が戻りすぎなのも、考え物なのかもしれない。悪戯っ子としてパワーアップしたキルアは一次試験終了まで、時折私をからかって遊ぶのだった。その度に律儀な私の心臓は大きく反応するのだけれど、悔しいから黙っておいた。背負われているのだから隠せていないだろう、そんなツッコミは無しで。