ハンター試験編
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ハンゾーがリーダー、クラピカがその補佐についたこと。加えて例の場所でゴンとキルアが見つけた日誌。パズルのピースがハマっていくように徐々に受験者同士の協力体制が出来ていく。目的地までの距離も発覚したところで、皆が希望を見出した。しかし現実そう甘くない。穏やかだったはずの天気に水を差すようにした不穏な音。現実は突如として私達に牙を剥いた。
竜巻と渦潮が一体となってやってくる十年に一度の天体現象。狙ったようなタイミング、いやこれは試験官の狙い通りなのだろう。目の前で早くにも出航を決めた人達が飲み込まれていった第一波。日誌によると第二波は島一帯を飲み込む大災害の再来となる。手詰まりと思われたけれど、ゴンのこのホテルを使うという一言でまた物語は動き出した。このホテルはかつて船として使われていたものを利用したものだった。誰も気付かない、気付いていたとしても排除する可能性をゴンは提示した。
それぞれが自分の役割を見つけていく中、私は残り少ない食糧を分配する役割についた。女性の受験者が少なく、私以外が必要な役割についているから、必然的に私に回ってきたのだ。正直、エンジン関連や力仕事に関して力になれると胸を張ることが出来ない分、誰でもできるようなものでも仕事があるのは有難かった。
人数自体は多くないものの、それぞれの作業する場所は違っている。動き回ることも多く気が付いたら時間はかなり経っていた。とりあえず当分の仕事を終えた私はそれぞれの様子を見て回ることにした。単純な作業なら手伝えるかもしれない。そう思ったのだった。
食糧庫を出たすぐ、あたりを照らしていた電気が消えた。全員での脱出計画は終焉に近付いている。電力の大部分が主砲に回されたのだろう。
クラス特性のためか、暗くても特に不自由はない。廊下を歩いているところで、あまり良い印象は抱いていない人物___トンパが大急ぎで駆けてくるのが見えた私は、不思議に思って声を掛けたのだった。この時、多少の警戒があったのは言うまでもない。
「トンパさん、どうされたんですか?」
「えっと、ああ、お嬢ちゃんか……!」
立ち止まったトンパはどこからどう見ても焦っていた。それがまた疑念を生んだのだけれど、その疑念は次の瞬間吹っ飛ばされることになる。
「時間がないから詳しくは説明できねえが、レオリオを助けるためにゴンが海に飛び込んだんだ!今、辺りはこの通り真っ暗で、俺は、」
「目印の灯りを探しに来たというところですね…!懐中電灯ならどこにあるか分かります!行きましょう!」
覚えていない、というものがこんなに恐ろしいことだとは思わなかった。この船の地図は動き回った結果、頭に入っているのは幸いだった。私達は先を急いだ。
懐中電灯を持った私達は甲板にたどり着いた。甲板はこの嵐の中吹きっさらしで危険なのはわかっている。トンパには危険だから中で待っていた方が良い、と言われた。それでも来たのは意地、とか、プライド、とかきっとろくでもないものなのだろう。役に立たないこと、存在理由、存在証明、ヒソカに言われた報われない、その言葉が脳裏でリフレインする。この世界に来てしまったのは事故でしかない。それでも来たからには、と思う程に私は気が付いたらここの世界で必死に生きようとしていた。
「お嬢ちゃん、本当に、大丈夫か…!」
「大丈夫です!それよりゴンはこの灯りで戻ってこれるでしょうか!」
風が強く、声を張り上げる。きっとこの船に居る誰もが生きることに必死なのだ。一歩引いて見ていた世界がリアルに迫っていく、そんな感覚に目眩がしそうになった。
「こんなんでもないよりマシだろう……何より根競べなら自信がある。灯りを照らし続ければゴンなら……」
やれることは最大限やっている。あとは私達にできることは祈るだけだ。女神の得意分野だと虚勢を張るように微笑んだ。
***
『全艦に通達!三十秒後に主砲を発射する!目標艦周前方十二時方向!固定岩盤距離二〇、主砲四門一斉斉射!続いて次弾装填!四十秒後に第二射!可能な限り連射を行う!全員衝撃に備えよ!あと二十秒!』
どれくらいの時間が経っただろうか。ゴン達が戻ってこないまま、クラピカの放送が入った。風も更に強くなってきている。残されている時間はもう少ないことは火を見るよりも明らかだった。
「トンパさん、ゴン達は、ゴン達は無事に…!」
「分からないが、信じるしかないだろ!」
『五、四、三、二、撃て――!』
クラピカの合図と共に爆風が襲ってくる。ギリギリのところで耐えた。サーヴァントではなく英霊に成り代わっていたら、こうはいかなかっただろう。長姉様はサーヴァント、つまり量産化された個体の方が戦闘的なスペックが上がるという珍しい英霊だ。
『側部損傷チェック、同時に第二弾発射用意!機関室、四十秒後にスクリューに動力伝達!』
「すげえ……爆風がここまで……来やがった……」
トンパの呟きに言葉を返す余裕はもうなかった。ギリギリの状態。それでも、ゴンは、ゴンは戻ってきた。その手にはレオリオを抱えている。レオリオは意識がないみたいだったけれど、ゴンの様子から大丈夫だと分かった。
「トンパさん、それにステンノも!」
「ゴン!」
「、良かった」
安堵で崩れ落ちそうになるのをなんとか堪えたところで頭上の電灯が灯る。ゴンを助けようとしているのは私達だけではなかった。
『五、四、三、二、撃て―――!』
再びの衝撃の後、船は動き出す。
トンパとサングラスの人、それから私。ゴンを引き上げるために私達は下まで来たのだった。ゴンの様子を見て改めて安心した。ゴンは無邪気ともいえる例の快活な笑みをその顔に浮かべていた。
「動いてる!この船動いてるよ!」
「ああ、そりゃ動くさ。なんたって船だからな」
「そうだよね!」
「いいから早く上がれ」
「うん!」
ゴンが元気よく返事をしたところで、ゴンに手を伸ばす。そこで私達は予想外の衝撃に襲われたのだった。背丈よりも何倍もの大きな波、先ほどと違い足にほとんど力が入っていない私。油断した、そう思ってももう遅い。離れてはいけないと手を伸ばす。私、そしてゴンは波に攫われてしまったのだった。
運よく私達は船の取っ手部分に掴まることができた。しかし、横でゴンの限界が近づいているのが目に見えて分かった。掴まっていない方のゴンの手を何とか取っ手に掴まらせようとする。そこでゴンの体から急激に力が抜けるのを感じ取った。二人分を支える力が私に備わっているかと聞かれたら否。それでも、私は。いくらも持たないことは十分にわかっている。泣いてどうにかなることでもないのに、ひどく泣きそうだった。
諦めたくない、その思いにこたえるように、
力強い、誰かの手が私達を引き上げた。
結局気を失って、目が覚めた私の目に最初に映ったのがヒソカとギタラクルフェイスではないイルミだったこと、私達を讃えるような朝日の美しさ。そんなこんなで第三次試験は本当の意味で終わりを迎えたのだった。
竜巻と渦潮が一体となってやってくる十年に一度の天体現象。狙ったようなタイミング、いやこれは試験官の狙い通りなのだろう。目の前で早くにも出航を決めた人達が飲み込まれていった第一波。日誌によると第二波は島一帯を飲み込む大災害の再来となる。手詰まりと思われたけれど、ゴンのこのホテルを使うという一言でまた物語は動き出した。このホテルはかつて船として使われていたものを利用したものだった。誰も気付かない、気付いていたとしても排除する可能性をゴンは提示した。
それぞれが自分の役割を見つけていく中、私は残り少ない食糧を分配する役割についた。女性の受験者が少なく、私以外が必要な役割についているから、必然的に私に回ってきたのだ。正直、エンジン関連や力仕事に関して力になれると胸を張ることが出来ない分、誰でもできるようなものでも仕事があるのは有難かった。
人数自体は多くないものの、それぞれの作業する場所は違っている。動き回ることも多く気が付いたら時間はかなり経っていた。とりあえず当分の仕事を終えた私はそれぞれの様子を見て回ることにした。単純な作業なら手伝えるかもしれない。そう思ったのだった。
食糧庫を出たすぐ、あたりを照らしていた電気が消えた。全員での脱出計画は終焉に近付いている。電力の大部分が主砲に回されたのだろう。
クラス特性のためか、暗くても特に不自由はない。廊下を歩いているところで、あまり良い印象は抱いていない人物___トンパが大急ぎで駆けてくるのが見えた私は、不思議に思って声を掛けたのだった。この時、多少の警戒があったのは言うまでもない。
「トンパさん、どうされたんですか?」
「えっと、ああ、お嬢ちゃんか……!」
立ち止まったトンパはどこからどう見ても焦っていた。それがまた疑念を生んだのだけれど、その疑念は次の瞬間吹っ飛ばされることになる。
「時間がないから詳しくは説明できねえが、レオリオを助けるためにゴンが海に飛び込んだんだ!今、辺りはこの通り真っ暗で、俺は、」
「目印の灯りを探しに来たというところですね…!懐中電灯ならどこにあるか分かります!行きましょう!」
覚えていない、というものがこんなに恐ろしいことだとは思わなかった。この船の地図は動き回った結果、頭に入っているのは幸いだった。私達は先を急いだ。
懐中電灯を持った私達は甲板にたどり着いた。甲板はこの嵐の中吹きっさらしで危険なのはわかっている。トンパには危険だから中で待っていた方が良い、と言われた。それでも来たのは意地、とか、プライド、とかきっとろくでもないものなのだろう。役に立たないこと、存在理由、存在証明、ヒソカに言われた報われない、その言葉が脳裏でリフレインする。この世界に来てしまったのは事故でしかない。それでも来たからには、と思う程に私は気が付いたらここの世界で必死に生きようとしていた。
「お嬢ちゃん、本当に、大丈夫か…!」
「大丈夫です!それよりゴンはこの灯りで戻ってこれるでしょうか!」
風が強く、声を張り上げる。きっとこの船に居る誰もが生きることに必死なのだ。一歩引いて見ていた世界がリアルに迫っていく、そんな感覚に目眩がしそうになった。
「こんなんでもないよりマシだろう……何より根競べなら自信がある。灯りを照らし続ければゴンなら……」
やれることは最大限やっている。あとは私達にできることは祈るだけだ。女神の得意分野だと虚勢を張るように微笑んだ。
***
『全艦に通達!三十秒後に主砲を発射する!目標艦周前方十二時方向!固定岩盤距離二〇、主砲四門一斉斉射!続いて次弾装填!四十秒後に第二射!可能な限り連射を行う!全員衝撃に備えよ!あと二十秒!』
どれくらいの時間が経っただろうか。ゴン達が戻ってこないまま、クラピカの放送が入った。風も更に強くなってきている。残されている時間はもう少ないことは火を見るよりも明らかだった。
「トンパさん、ゴン達は、ゴン達は無事に…!」
「分からないが、信じるしかないだろ!」
『五、四、三、二、撃て――!』
クラピカの合図と共に爆風が襲ってくる。ギリギリのところで耐えた。サーヴァントではなく英霊に成り代わっていたら、こうはいかなかっただろう。長姉様はサーヴァント、つまり量産化された個体の方が戦闘的なスペックが上がるという珍しい英霊だ。
『側部損傷チェック、同時に第二弾発射用意!機関室、四十秒後にスクリューに動力伝達!』
「すげえ……爆風がここまで……来やがった……」
トンパの呟きに言葉を返す余裕はもうなかった。ギリギリの状態。それでも、ゴンは、ゴンは戻ってきた。その手にはレオリオを抱えている。レオリオは意識がないみたいだったけれど、ゴンの様子から大丈夫だと分かった。
「トンパさん、それにステンノも!」
「ゴン!」
「、良かった」
安堵で崩れ落ちそうになるのをなんとか堪えたところで頭上の電灯が灯る。ゴンを助けようとしているのは私達だけではなかった。
『五、四、三、二、撃て―――!』
再びの衝撃の後、船は動き出す。
トンパとサングラスの人、それから私。ゴンを引き上げるために私達は下まで来たのだった。ゴンの様子を見て改めて安心した。ゴンは無邪気ともいえる例の快活な笑みをその顔に浮かべていた。
「動いてる!この船動いてるよ!」
「ああ、そりゃ動くさ。なんたって船だからな」
「そうだよね!」
「いいから早く上がれ」
「うん!」
ゴンが元気よく返事をしたところで、ゴンに手を伸ばす。そこで私達は予想外の衝撃に襲われたのだった。背丈よりも何倍もの大きな波、先ほどと違い足にほとんど力が入っていない私。油断した、そう思ってももう遅い。離れてはいけないと手を伸ばす。私、そしてゴンは波に攫われてしまったのだった。
運よく私達は船の取っ手部分に掴まることができた。しかし、横でゴンの限界が近づいているのが目に見えて分かった。掴まっていない方のゴンの手を何とか取っ手に掴まらせようとする。そこでゴンの体から急激に力が抜けるのを感じ取った。二人分を支える力が私に備わっているかと聞かれたら否。それでも、私は。いくらも持たないことは十分にわかっている。泣いてどうにかなることでもないのに、ひどく泣きそうだった。
諦めたくない、その思いにこたえるように、
力強い、誰かの手が私達を引き上げた。
結局気を失って、目が覚めた私の目に最初に映ったのがヒソカとギタラクルフェイスではないイルミだったこと、私達を讃えるような朝日の美しさ。そんなこんなで第三次試験は本当の意味で終わりを迎えたのだった。