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【拍手御礼SS】 ~恋に落ちる瞬間~ 跡部景吾Ver.
「おい」
「・・・・・・・・・」
「コラ、聞こえてんだろ?」
「・・・・・・・・・」
「待ってって」
「・・・・・・・・イヤ」
さっきまで、教室の自分の席で心地よくお昼寝をしていた私に、しつこく忍び寄る男。
氷帝学園というこのマンモス校において、初等部の一年から同じクラスという絶対に万に一つありえないだろ?という腐れ縁。
彼はいまや、中等部の生徒会長兼、人気名高い男子テニス部部長。その上、彼自身の実力も全国トップクラス、容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能のみならず、その育ちの良さにも右に出るものなんていない。何様、俺様、跡部様の跡部景吾。
でも、そこまで完璧な彼が何を血迷ったのか、この中学3年になってココ一ヶ月程というもの、何かと私に迫ってくるのである。
私は、とにかく身の危険を感じて席を立ち、足早に教室を去ることにする。
クソッ・・・・折角、人がいい気持ちで寝てたというのに・・・・・。
「待てっつてるだろうが!」
それでも諦めの悪い彼は、私の後をついてくる。
「・・・・・・うるさい、ついてくるな」
それだけ言うと、私は足を速める。
友人や跡部の事をすきな女の子達から見れば、『うらやましい光景』なのだそうだが・・・・・私には迷惑以外何者でもない。
確かに、完璧に見える彼にも欠点がある。それは、言わずとしれた彼の俺様な性格。
常に、自分中心で回っているのだ。それでも良い・・・・・そういう女の子達も確かに居るのは事実だけど・・・・・・私は、絶対にイヤ。
自己主張がはっきりしている・・・・・よく言えば、そんな言い方になるかもしれない。でも、私はそんな言い方も出来ない。
・・・・・てか、それって人間的に問題じゃないのか・・・・・?
強引も、度が過ぎるとはた迷惑極まりないと思う。
そんな事を思いながら、辿り着いたのは屋上。
それでも、後ろからついてくる跡部。
後ろで、重いドアがバタンと閉まる音がした。私は、覚悟して振り向く。
そして、一つ深呼吸。
「あのねぇ、一体この間から何だって私にまとわりついてくるわけ?いい加減、鬱陶しいんだけど?!」
一呼吸で言い切った私、そしてまた呼吸を整える。
「・・・・・・・・・・・・」
無言の跡部。
「何よ?黙ってちゃ分かんないでしょ?こうやって逃げ回る私を見て楽しい?遊び相手を探すなら他にして。跡部なら不自由してないでしょ?」
「・・・・・・・俺の事が嫌いか?」
ポツリと跡部の口から漏れた一言。
・・・・・・嫌い・・・・?うーん、よく分からない・・・・。今まで通りの跡部なら普通に話せるいい友人で・・・・別に嫌いってほどでもないけど・・・・・・・?
でも、いつまでもこんな付き纏われるのも迷惑。何より、跡部のファンを敵に回すと後が怖い。
「・・・・・・・・キライ・・・・・よ」
ズキンッ・・・・・
自分で言った言葉なのに、胸が痛かった。でも・・・・・・後には引けない。
「キライだから、迷惑なの・・・・もう、付き纏わないで・・・・」
最後の方は、だんだん声が小さくなるのが自分で分かる。そのまま、俯く私。
「やだね」
「・・・・・え?」
予想外の一言に、訳がわからず顔を上げる。
そこには、真っ直ぐ見つめる真剣なブルーグレイの瞳。
「俺は、お前が好きだ」
ドクンッ
心臓が跳ね上がった気がした。うるさいくらいに高鳴る。
近付いてくる跡部。
「お前も、見え透いた嘘つくんじゃねぇよ?俺様の事、好きなくせに」
そう言い放った、俺様はいつも通りの自信満々の笑みで私の頬に手をかける。
こんな時までその態度。だから、イヤだったの。
そんな『俺様』に堕ちている自分を認めたくなかったの。
私の必死の抵抗なんて・・・・・・・結局、全然役立たず。
もういい、降参よ・・・・・。だって、私の心臓は正直すぎる。
―――――――――― 近付いてくる跡部に、私はそっと瞳を閉じた。
*** END ***