「彼女」が「彼」になった理由
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「如月ちゃん、大丈夫?」
「うん、だ…大丈夫だよ」
今、私は荷物運びの手伝いで15㎏の肥料を運んでいる。かなり重いけど、歩けない程の重さでもない。
隣で私の倍の量を運びながらも私の足取りの怪しさに声を掛けてくれる桐生君。
うん、優しい。こういう気遣いが女の子達にモテる理由なんだろうな。
教室で一兄ぃの放送が終わった直後、2年生の多聞衆の副級長さんが来て、外に出された。
今日の街の見回りは多聞衆だからと、4,5人のグループに分かれ、それぞれのグループに2,3年生が一人付いての見回りをすると。
そこで待っていたのは四天王の一人、多聞衆筆頭の柊 登馬。相変わらず時間に細かくイライラしてたけど…。
私はと言えば、一兄ぃと一緒に居ると必然的に面識がある訳で…完璧に変装してるとはいえ、万が一という事もあるし…と、周りのクラスメイトの陰に隠れつつ移動。一瞬登馬君と目が合った気がしたけど、すぐに桜君の方へ走って行ったし…気付かれてはいないでしょ。
今の内にどっかのグループに入らねば、と周りを見渡してみるも、知り合いも居る訳ない。
…うーん、人数足りてなさそうな所は…?
キョロキョロ不自然だったのか、不思議そうに此方を見ていた桐生君とばっちり目が合った。瞳だけでまたきれいな笑みを向けられ、不信な動きをしてしまったのかと恥ずかしく思いながら誤魔化すように笑って返した。
「如月ちゃん、俺と行こうよ」
「…え、良いの?」
思いもかけない申し出に戸惑いながらも、有難く誘いを受けた。
「あ、ありがとう。実は知り合い居なくて、助かったよ」
「どういたしまして。俺も如月ちゃんと行きたかったしね」
茶目っ気を含んだ笑顔で言われて、またもや顔が熱くなる。
うん、桐生君の笑顔にコロッと落とされる女の子の気持ちが手に取るように分かった。
商店街を歩くと花・苗や肥料を売ってるお店の前を通りかかる。確か此処は一兄ぃの屋上畑の御用達の店。
そこでは少ない従業員総出で、今入荷してきたばかりの肥料、土、苗を店内へ運んでる所だった。
そこで私達に付いてくれていた2年生の先輩、薄い金髪でヘッドフォンを首に掛けて飴銜えてる…確か名前は梶さん、2年の級長だってさっき自己紹介された事を思い出す。
その梶さんが当たり前の様に店主に声を掛けながら、目の前の肥料袋を抱えた。
「手伝います。ほら、お前ら運ぶぞ」
「はいっ!」
返事を返しながら、各々荷物を手に取る。で、今に至る。
15㎏なんて、施設の小さな弟や妹達と同じ位だから余裕、と思ってたけど体に手を掛けてしがみ付いてくる子供と違って、無機物って重い。
大人しく苗箱運べば良かった…と思うも後の祭り。取り合えず今持っている袋だけでも運ばなければと店内の置き場に持っていくも既に他の人によって積み上げられた肥料は158㎝(スニーカー底2㎝込み)しかない私の顎の位置だった。
…もしかしなくても此処まで持ち上げないとダメだよね。
腕に力を入れて何とか肩まで担いで乗せようとした所で態勢を崩す。
やば、後ろ倒れる…!でも、肥料落としたら袋破れちゃうかも…!
その時ふわっと重さがなくなった。それと同時に倒れかけた態勢も何かに支えられていた。
「大丈夫?今度はもっと軽い物運ぼうね」
声の方へ顔を上げるとめっちゃくちゃ近くに桐生君の笑顔があって、吃驚して咄嗟に離れようとするも腰をがっちりホールドされていて無理だった。
一気に顔が熱くなる私に気付いて、肥料を片手で軽く置き直してゆっくりと腰から手を離す。
「あぁ。ごめんね?」
「ううん、大丈夫。ありがとう。そうだね、次は大人しく軽い物運ぶよっ」
やばいやばいやばい、至近距離での桐生君の笑顔、破壊力ありすぎだって。
照れ隠しもバツが悪くまた店頭へ足早に戻った。
次は軽そうな苗箱を選んで、店内へと何往復か繰り返した。十代の若い男の子達が数人でかかれば、山のようにあった肥料たちも見る間に減っていく。
最後の苗箱を店内に並べると、店主のおじさんが人数分のペットボトル飲料入った袋と苗を10個位持ってきて梶さんに渡した。
「お疲れ、助かったよ。ちょっと休憩して、これ飲んで休んでって。あと、これは梅君に渡してあげて。この間頼まれてた苗だから。」
梶さんは「ありがとうございます」頷くとそれらを受け取り、一本ペットボトルを手に取ると、袋を手渡してきた。
私も店主さんにお礼を述べるとクラスメイト達へそうぞと袋を広げて持っていく。
「どうぞ」
それぞれが手に取ると、少し離れた場所でスマホを弄る桐生君のところへ行った。
「桐生君、はい、飲み物」
「ありがとう」
目の前に差し出すと、スマホを弄る手を止めてお礼と共に受け取ってくれた。
「ゲーム好きなんだ?教室に居る時もずっとやってるし…」
ちらりと見えた画面に移る画像にそう尋ねると、何だか桐生君も普通の男の子なんだなって、ついつい口元が緩んでしまう。
「うん、ログボ貰わないといけないからねー」
「ログボ?」
「ログインボーナス」
「なるほど、何か初心者でも楽しめるおススメゲームあったら教えて」
「いーよ。じゃ、如月ちゃんの連絡先おせーてよ」
「うん」
桐生君の座る近くの空いたパレットへ腰掛けて、スマホを取り出し、電話番号画面を差し出す。慣れた手つきで電話番号登録すると、まだ何か画面操作している。
すぐにメッセージアプリの通知画面が届いた。
『桐生 三輝。これから宜しくね。電話番号 090-****-****だよー。』
そんなトーク画面にくすりと笑いながら私もメッセージを返信。
『如月 悠。こちらこそ、これからヨロシク』そして、ヨロシクのスタンプをポンと返した。
近くにいるのにわざわざメッセージのやり取りにお互いクスリと笑いながら。
座ってペットボトルへと口を付ける。うん、労働の後のジュース最高。
「ねぇ、如月ちゃん。」
「何?」
「どうして、如月ちゃんはそんな恰好で風鈴に来てるの?」
―――…ん?
咄嗟に意味を理解できず、軽く首を傾げて桐生君を見る。まっすぐな視線を向ける桐生君はいつもの笑顔じゃなかった。
「……そんな恰好って?」
「うーん、どうして女の子がわざわざ男子校に入ってきたのかな?って思って。それも風鈴。普通女の子は怖いと思うんじゃない?」
うん、普通にバレてた…。でも、此処で肯定する訳にもいかないし。でも、誤魔化しても完全に分かってるって顔だし…………。
「うーん、色々事情はあるんだけど、風鈴が怖いとかはないよ。ずっと、風鈴には入りたかったんだ。それを実行にうつしただけ。……だから、勝手なお願いだけど、他の子には言わないで。お願いっ、お願いします」
素直になって、答えると、顔の前で手を合わせ拝むようにお願いする。
黙ったままの桐生君に不安になって、そっと目を開けるとそこには楽し気に笑う桐生君。
「そっかー。分かったよ。じゃぁ、秘密は俺達の約束だねー」
そう言いながら頭をポンポンされた。
え、子供扱い…ちょっとムッとして軽く睨む。
「桐生君、面白がってるでしょ?子供扱いして」
「面白がってるけど、子供扱いはしてないよー。可愛いとは思ってるけどね」
う…みんなに言ってる事だろうけど、その笑顔でその言葉はズルいって…
またまた頬が熱くなるのを隠すように視線を逸らす。落ち着け、私の心…!
「そろそろ次、行くぞ」
ナイスタイミングで梶さんから声がかかった。
「うん、だ…大丈夫だよ」
今、私は荷物運びの手伝いで15㎏の肥料を運んでいる。かなり重いけど、歩けない程の重さでもない。
隣で私の倍の量を運びながらも私の足取りの怪しさに声を掛けてくれる桐生君。
うん、優しい。こういう気遣いが女の子達にモテる理由なんだろうな。
教室で一兄ぃの放送が終わった直後、2年生の多聞衆の副級長さんが来て、外に出された。
今日の街の見回りは多聞衆だからと、4,5人のグループに分かれ、それぞれのグループに2,3年生が一人付いての見回りをすると。
そこで待っていたのは四天王の一人、多聞衆筆頭の柊 登馬。相変わらず時間に細かくイライラしてたけど…。
私はと言えば、一兄ぃと一緒に居ると必然的に面識がある訳で…完璧に変装してるとはいえ、万が一という事もあるし…と、周りのクラスメイトの陰に隠れつつ移動。一瞬登馬君と目が合った気がしたけど、すぐに桜君の方へ走って行ったし…気付かれてはいないでしょ。
今の内にどっかのグループに入らねば、と周りを見渡してみるも、知り合いも居る訳ない。
…うーん、人数足りてなさそうな所は…?
キョロキョロ不自然だったのか、不思議そうに此方を見ていた桐生君とばっちり目が合った。瞳だけでまたきれいな笑みを向けられ、不信な動きをしてしまったのかと恥ずかしく思いながら誤魔化すように笑って返した。
「如月ちゃん、俺と行こうよ」
「…え、良いの?」
思いもかけない申し出に戸惑いながらも、有難く誘いを受けた。
「あ、ありがとう。実は知り合い居なくて、助かったよ」
「どういたしまして。俺も如月ちゃんと行きたかったしね」
茶目っ気を含んだ笑顔で言われて、またもや顔が熱くなる。
うん、桐生君の笑顔にコロッと落とされる女の子の気持ちが手に取るように分かった。
商店街を歩くと花・苗や肥料を売ってるお店の前を通りかかる。確か此処は一兄ぃの屋上畑の御用達の店。
そこでは少ない従業員総出で、今入荷してきたばかりの肥料、土、苗を店内へ運んでる所だった。
そこで私達に付いてくれていた2年生の先輩、薄い金髪でヘッドフォンを首に掛けて飴銜えてる…確か名前は梶さん、2年の級長だってさっき自己紹介された事を思い出す。
その梶さんが当たり前の様に店主に声を掛けながら、目の前の肥料袋を抱えた。
「手伝います。ほら、お前ら運ぶぞ」
「はいっ!」
返事を返しながら、各々荷物を手に取る。で、今に至る。
15㎏なんて、施設の小さな弟や妹達と同じ位だから余裕、と思ってたけど体に手を掛けてしがみ付いてくる子供と違って、無機物って重い。
大人しく苗箱運べば良かった…と思うも後の祭り。取り合えず今持っている袋だけでも運ばなければと店内の置き場に持っていくも既に他の人によって積み上げられた肥料は158㎝(スニーカー底2㎝込み)しかない私の顎の位置だった。
…もしかしなくても此処まで持ち上げないとダメだよね。
腕に力を入れて何とか肩まで担いで乗せようとした所で態勢を崩す。
やば、後ろ倒れる…!でも、肥料落としたら袋破れちゃうかも…!
その時ふわっと重さがなくなった。それと同時に倒れかけた態勢も何かに支えられていた。
「大丈夫?今度はもっと軽い物運ぼうね」
声の方へ顔を上げるとめっちゃくちゃ近くに桐生君の笑顔があって、吃驚して咄嗟に離れようとするも腰をがっちりホールドされていて無理だった。
一気に顔が熱くなる私に気付いて、肥料を片手で軽く置き直してゆっくりと腰から手を離す。
「あぁ。ごめんね?」
「ううん、大丈夫。ありがとう。そうだね、次は大人しく軽い物運ぶよっ」
やばいやばいやばい、至近距離での桐生君の笑顔、破壊力ありすぎだって。
照れ隠しもバツが悪くまた店頭へ足早に戻った。
次は軽そうな苗箱を選んで、店内へと何往復か繰り返した。十代の若い男の子達が数人でかかれば、山のようにあった肥料たちも見る間に減っていく。
最後の苗箱を店内に並べると、店主のおじさんが人数分のペットボトル飲料入った袋と苗を10個位持ってきて梶さんに渡した。
「お疲れ、助かったよ。ちょっと休憩して、これ飲んで休んでって。あと、これは梅君に渡してあげて。この間頼まれてた苗だから。」
梶さんは「ありがとうございます」頷くとそれらを受け取り、一本ペットボトルを手に取ると、袋を手渡してきた。
私も店主さんにお礼を述べるとクラスメイト達へそうぞと袋を広げて持っていく。
「どうぞ」
それぞれが手に取ると、少し離れた場所でスマホを弄る桐生君のところへ行った。
「桐生君、はい、飲み物」
「ありがとう」
目の前に差し出すと、スマホを弄る手を止めてお礼と共に受け取ってくれた。
「ゲーム好きなんだ?教室に居る時もずっとやってるし…」
ちらりと見えた画面に移る画像にそう尋ねると、何だか桐生君も普通の男の子なんだなって、ついつい口元が緩んでしまう。
「うん、ログボ貰わないといけないからねー」
「ログボ?」
「ログインボーナス」
「なるほど、何か初心者でも楽しめるおススメゲームあったら教えて」
「いーよ。じゃ、如月ちゃんの連絡先おせーてよ」
「うん」
桐生君の座る近くの空いたパレットへ腰掛けて、スマホを取り出し、電話番号画面を差し出す。慣れた手つきで電話番号登録すると、まだ何か画面操作している。
すぐにメッセージアプリの通知画面が届いた。
『桐生 三輝。これから宜しくね。電話番号 090-****-****だよー。』
そんなトーク画面にくすりと笑いながら私もメッセージを返信。
『如月 悠。こちらこそ、これからヨロシク』そして、ヨロシクのスタンプをポンと返した。
近くにいるのにわざわざメッセージのやり取りにお互いクスリと笑いながら。
座ってペットボトルへと口を付ける。うん、労働の後のジュース最高。
「ねぇ、如月ちゃん。」
「何?」
「どうして、如月ちゃんはそんな恰好で風鈴に来てるの?」
―――…ん?
咄嗟に意味を理解できず、軽く首を傾げて桐生君を見る。まっすぐな視線を向ける桐生君はいつもの笑顔じゃなかった。
「……そんな恰好って?」
「うーん、どうして女の子がわざわざ男子校に入ってきたのかな?って思って。それも風鈴。普通女の子は怖いと思うんじゃない?」
うん、普通にバレてた…。でも、此処で肯定する訳にもいかないし。でも、誤魔化しても完全に分かってるって顔だし…………。
「うーん、色々事情はあるんだけど、風鈴が怖いとかはないよ。ずっと、風鈴には入りたかったんだ。それを実行にうつしただけ。……だから、勝手なお願いだけど、他の子には言わないで。お願いっ、お願いします」
素直になって、答えると、顔の前で手を合わせ拝むようにお願いする。
黙ったままの桐生君に不安になって、そっと目を開けるとそこには楽し気に笑う桐生君。
「そっかー。分かったよ。じゃぁ、秘密は俺達の約束だねー」
そう言いながら頭をポンポンされた。
え、子供扱い…ちょっとムッとして軽く睨む。
「桐生君、面白がってるでしょ?子供扱いして」
「面白がってるけど、子供扱いはしてないよー。可愛いとは思ってるけどね」
う…みんなに言ってる事だろうけど、その笑顔でその言葉はズルいって…
またまた頬が熱くなるのを隠すように視線を逸らす。落ち着け、私の心…!
「そろそろ次、行くぞ」
ナイスタイミングで梶さんから声がかかった。