独占欲に勝るもの
「ハルヒ、僕とデートしてよ」
藤岡父娘が住むアパートの前に突然、高級車がやって来たかと思えば、車から降りてきた馨が藤岡家のチャイムを鳴らし、嬉しそうに言った。
少し前からハルヒと馨は付き合っているものの、ハルヒは馨のこういうところには未だに慣れない。
光に比べると馨は落ち着いているとは言っても、やっぱり常陸院兄弟。馨もハルヒが予想をしていなかった言動を突然始めるのだ。
「え、デート?」
Tシャツにズボンという明らかに部屋着にしか見えない格好で出てきたハルヒが、全身くまなくオシャレをして玄関前に立つ馨を見て言った。
「そう、デート!しようよ、ハルヒ。今日は天気がいいからさ」
「うーん、まあいいけど。…あ、でもスーパーだけ行ってもいい?今日安いんだ、じゃがいも」
「もちろんいいヨ」
じゃがいもに負けるなんて、と以前の馨なら思っていたかもしれないが、今はそんなこと全く思わない。
彼氏の馨がこうして家にやって来てもマイペース。それがハルヒで、それが馨が好きになったハルヒだから。
「それじゃあお邪魔しまーす」
ズカズカと馨が藤岡家に上がり込むと、あれ?パパさんは?と辺りを見回す。そんな馨に、父は仕事だよ、とハルヒは答える。
いきなりやって来てもいつも通りな馨に、ハルヒはやれやれと思いつつも、少し楽しくなっていた。
「ハルヒに似合いそうな服持ってきたんだ。これ来てデート行こう」
「わぁ、可愛いね」
馨がハルヒの目の前に出した服を見て、ハルヒが笑う。馨はそんなハルヒを見て、そうでしょ、と自信ありげに笑った。
「じゃあ、着てくるね」
そう言って、隣の部屋へと着替えに行ったハルヒを見るなり、馨はどこからかブラシやヘアゴム、ヘアピンなどを取り出した。そして、自分が持ってきた服を着て部屋から出てきたハルヒを想像して待つ。
「馨、お待たせ」
しばらくするとハルヒは部屋から出てきた。
見立て通り、やっぱりその服が似合っているハルヒを見て、馨は嬉しくなった。
それから、
「ハルヒ、ここ座って」
と自分の前に座るようにハルヒを手招きした。
ハルヒが目の前に座ると、馨はハルヒの髪をブラシで梳かし始める。
「ハルヒやっぱり似合ってるね」
「そうかな?ありがとう。馨が髪もしてくれるの?」
「うん、そうだよ。今日のハルヒは僕がコーディネートしようと思って。いいでしょ?」
「それはもちろん。馨がしてくれるならきっと可愛いもんね」
ふふ、とハルヒが笑う。
馨は僕がコーディネートしたとかは関係なく、ハルヒは可愛いんだよ、と思ったけど、なんとなく照れくさくて言えなかった。
ハルヒの髪を編み込んでいる間、ハルヒと馨はなんてことない世間話をしていた。光がどうしたとか、昨日は何を食べたとか。本当になんてことない話だけど、この穏やかに流れる時間が二人はとても好きなのだ。
話が一段落ついた頃、馨がハルヒ、出来たよと笑った。
ありがとう、馨とハルヒも馨の方へと振り向くと笑った。
馨を見て笑うハルヒ。やっぱり服は似合っているし、髪型も服に合っていて可愛いと馨は思う。
「ハルヒ、可愛いよ。似合ってる」
「ありがとう。馨も今日の格好、似合っててかっこいいよ」
ありがとう、と馨もハルヒにお礼を言うと二人で笑い合う。
ふと目が合うと、もう一度笑って、それからどちらからともなく行こうかと手を繋いだ。
玄関で靴を履いていると、ハルヒは今日の馨がかっこいいから、馨は今日のハルヒが可愛いから、とそれぞれ今日のお互いを他の人に見せてあげるのは惜しいような気がした。
しかし、それ以上にそんな相手とのデートが楽しみだから、そんな気持ちには気づかない振りをして、ハルヒと馨は二人仲良くスーパーへと向かった。
藤岡父娘が住むアパートの前に突然、高級車がやって来たかと思えば、車から降りてきた馨が藤岡家のチャイムを鳴らし、嬉しそうに言った。
少し前からハルヒと馨は付き合っているものの、ハルヒは馨のこういうところには未だに慣れない。
光に比べると馨は落ち着いているとは言っても、やっぱり常陸院兄弟。馨もハルヒが予想をしていなかった言動を突然始めるのだ。
「え、デート?」
Tシャツにズボンという明らかに部屋着にしか見えない格好で出てきたハルヒが、全身くまなくオシャレをして玄関前に立つ馨を見て言った。
「そう、デート!しようよ、ハルヒ。今日は天気がいいからさ」
「うーん、まあいいけど。…あ、でもスーパーだけ行ってもいい?今日安いんだ、じゃがいも」
「もちろんいいヨ」
じゃがいもに負けるなんて、と以前の馨なら思っていたかもしれないが、今はそんなこと全く思わない。
彼氏の馨がこうして家にやって来てもマイペース。それがハルヒで、それが馨が好きになったハルヒだから。
「それじゃあお邪魔しまーす」
ズカズカと馨が藤岡家に上がり込むと、あれ?パパさんは?と辺りを見回す。そんな馨に、父は仕事だよ、とハルヒは答える。
いきなりやって来てもいつも通りな馨に、ハルヒはやれやれと思いつつも、少し楽しくなっていた。
「ハルヒに似合いそうな服持ってきたんだ。これ来てデート行こう」
「わぁ、可愛いね」
馨がハルヒの目の前に出した服を見て、ハルヒが笑う。馨はそんなハルヒを見て、そうでしょ、と自信ありげに笑った。
「じゃあ、着てくるね」
そう言って、隣の部屋へと着替えに行ったハルヒを見るなり、馨はどこからかブラシやヘアゴム、ヘアピンなどを取り出した。そして、自分が持ってきた服を着て部屋から出てきたハルヒを想像して待つ。
「馨、お待たせ」
しばらくするとハルヒは部屋から出てきた。
見立て通り、やっぱりその服が似合っているハルヒを見て、馨は嬉しくなった。
それから、
「ハルヒ、ここ座って」
と自分の前に座るようにハルヒを手招きした。
ハルヒが目の前に座ると、馨はハルヒの髪をブラシで梳かし始める。
「ハルヒやっぱり似合ってるね」
「そうかな?ありがとう。馨が髪もしてくれるの?」
「うん、そうだよ。今日のハルヒは僕がコーディネートしようと思って。いいでしょ?」
「それはもちろん。馨がしてくれるならきっと可愛いもんね」
ふふ、とハルヒが笑う。
馨は僕がコーディネートしたとかは関係なく、ハルヒは可愛いんだよ、と思ったけど、なんとなく照れくさくて言えなかった。
ハルヒの髪を編み込んでいる間、ハルヒと馨はなんてことない世間話をしていた。光がどうしたとか、昨日は何を食べたとか。本当になんてことない話だけど、この穏やかに流れる時間が二人はとても好きなのだ。
話が一段落ついた頃、馨がハルヒ、出来たよと笑った。
ありがとう、馨とハルヒも馨の方へと振り向くと笑った。
馨を見て笑うハルヒ。やっぱり服は似合っているし、髪型も服に合っていて可愛いと馨は思う。
「ハルヒ、可愛いよ。似合ってる」
「ありがとう。馨も今日の格好、似合っててかっこいいよ」
ありがとう、と馨もハルヒにお礼を言うと二人で笑い合う。
ふと目が合うと、もう一度笑って、それからどちらからともなく行こうかと手を繋いだ。
玄関で靴を履いていると、ハルヒは今日の馨がかっこいいから、馨は今日のハルヒが可愛いから、とそれぞれ今日のお互いを他の人に見せてあげるのは惜しいような気がした。
しかし、それ以上にそんな相手とのデートが楽しみだから、そんな気持ちには気づかない振りをして、ハルヒと馨は二人仲良くスーパーへと向かった。