これからのこと
それはハルヒとの狭い家というか部屋みたいな所での同棲生活にもようやく慣れ、使いたいものはすぐ側にあって、手紙が来たらすぐ取りに行けて、電話がなったらすぐ出られる、そんな庶民みたいな暮らしも悪くないと思い始めた頃のことだった。
カタン、と音がしたのを聞いて玄関へと向かう。郵便配達の人が手紙を持ってきてくれたから手紙を取りに行くのだ。今日は僕の当番だから。
これは僕、こっちはハルヒ……と宛名を見ながらハルヒのいる居間へと戻る。まあ戻るって言ったって少ししか歩かないんだけど。
そうしながら居間へと着いた時、最後に残った可愛らしい封筒二つが同じものであることに気がついた僕は宛名を見る。
「あれどっちもおんなじじゃん。なにこれ間違い…じゃなくて僕とハルヒにか」
はい、とハルヒの名前が書かれていた方をハルヒに手渡す。ありがとうと受け取ったハルヒと僕は、早速、封筒を開いた。
「あ、委員長と倉賀野さんだ!」
「委員長と倉賀野姫…?」
「うん、ほらここ」
そう言われてハルヒが指差した所へと目線を落とす。そこには委員長と倉賀野姫の親の名前が載っていて、他の部分へと目をやれば披露宴の日時と会場も載っていた。つまり、委員長と倉賀野姫の結婚式の招待状だ。
「ほんとだ!委員長と倉賀野姫もやっと結婚か〜。肝試しの時からは考えられないな」
高校生の頃の二人を思い出して、つい懐かしい気持ちがこみ上げてくる。まあ委員長たちだけじゃなくって、僕たちだって肝試しの時には将来こうなるなんて考えられなかったんだけど。
委員長たちのことを考えてたはずが、いつの間にか自分たちのことを考えていて。今みたいにハルヒと付き合っていて、一緒に住んでいるということに改めて幸せを感じる。
「でも上手くいってよかったよね、二人とも」
「そうだよね。ハニー先輩と伽名月姫…じゃなかった、麗子姫夫婦はもう来月子供産まれるんだよね?僕らももうそんな歳なんだ…」
「……なんか馨、おじさんくさい」
「だってハルヒもそう思わない?」
この間まで高校生だったはずなのに。僕らはいつの間にこんなにも歳を取って、大人になったのだろう。隣に座る、髪が伸びたハルヒを見ながらふとそんなことを思った。
「自分だって思うよ。もう子供じゃないからいつまでも周りに甘えてなんていられないって。だからみんなすごいよね」
「やっぱりハルヒも思ってんだ」
「まあね。それで、馨も行くでしょ?委員長と倉賀野さんの結婚式」
ハルヒが招待状を眺めている。ハルヒは髪が伸びただけじゃなくて、大人っぽくなったなぁ。
「…そういえばハルヒはなんでまた髪伸ばしてるの?」
「いきなりだね」
「それが僕だからネ」
「…だって、髪は長い方がいいでしょ?」
「なんで?お金がない時にカツラに出来るから?」
ハルヒはそんな僕の質問に溜息をついたかと思えば、違うよと笑った。
「カツラじゃなくて馨との結婚式の時のためだよ」
「え?」
ぽかんとしている僕を、ハルヒは不思議そうに見つめる。
「だっていつかは結婚式するでしょ?」
「する…だろうけど、相手は僕なの?」
「馨だと思うよ。自分は馨以外の人と一緒に暮らすなんて考えられないから」
「そう、なんだ」
僕なんかの何倍も何十倍も、僕とのこれからのことを考えていたらしいハルヒ。僕はハルヒと一緒にいられる今が嬉しくて楽しくて、そんな今のことばかり考えていたからハルヒがそんなことを考えているなんて思いもしなかった。だけどそんな僕をよそにハルヒは続ける。
「それでね、結婚式の時は髪が長い方がいいのかなって思って伸ばしてるんだ。馨に髪してもらうのもいいなって思ってて。ウェディングドレスは馨のお母さんが時間があったらだけど、馨のお母さんに見立ててもらうのもいいよね。それかメイちゃんとか。でもやっぱりドレスは自分たちだけで選んだ方がいいのかな?あ、その前に和装かドレスか決めないとだね。あと披露宴で大トロってどうかな……」
僕とのいつかを話す幸せそうなハルヒの言葉が、表情がとても嬉しい。と同時に、だんだん顔が熱を帯びてくる。
「……ちょ、ちょっと!ちょっと待って!ハルヒ!!」
「どうしたの、馨。顔赤いよ」
「ハルヒが嬉しそうに話すからじゃん!」
「だって嬉しいもん。馨とこれからも一緒だって考えるだけで自分は楽しいよ」
「そりゃ僕だってそうだけど!」
「ふふ、よかった」
まだまだ熱の引かない顔。落ち着くためにも深呼吸をすると、ハルヒからの質問にまだ答えてなかったことを思い出した。
「…あ、ハルヒ。委員長たちの結婚式はもちろん行くよ、僕」
「うん、自分も。二人のことお祝いしたいからね」
「じゃあ僕がハルヒの髪しようかな」
「馨、お願いします」
ハルヒが楽しそうに深々と頭を下げるから、僕もつられて、こちらこそと頭を下げた。
僕にとって、ハルヒとの今はとても大切で、それが繋がってハルヒとのこれからになっていく。
僕だっていつまでも子供のままじゃいられないことは分かっているから。ハルヒとのこれからをもっとちゃんと考えるから。
だからもう少しだけ今のまま待ってて、ハルヒ。
僕がハルヒを守れるように、ハルヒのことを世界で一番幸せに出来るって自分でも思えるようになったら、僕の人生を懸けてハルヒを幸せにするって誓うから。
カタン、と音がしたのを聞いて玄関へと向かう。郵便配達の人が手紙を持ってきてくれたから手紙を取りに行くのだ。今日は僕の当番だから。
これは僕、こっちはハルヒ……と宛名を見ながらハルヒのいる居間へと戻る。まあ戻るって言ったって少ししか歩かないんだけど。
そうしながら居間へと着いた時、最後に残った可愛らしい封筒二つが同じものであることに気がついた僕は宛名を見る。
「あれどっちもおんなじじゃん。なにこれ間違い…じゃなくて僕とハルヒにか」
はい、とハルヒの名前が書かれていた方をハルヒに手渡す。ありがとうと受け取ったハルヒと僕は、早速、封筒を開いた。
「あ、委員長と倉賀野さんだ!」
「委員長と倉賀野姫…?」
「うん、ほらここ」
そう言われてハルヒが指差した所へと目線を落とす。そこには委員長と倉賀野姫の親の名前が載っていて、他の部分へと目をやれば披露宴の日時と会場も載っていた。つまり、委員長と倉賀野姫の結婚式の招待状だ。
「ほんとだ!委員長と倉賀野姫もやっと結婚か〜。肝試しの時からは考えられないな」
高校生の頃の二人を思い出して、つい懐かしい気持ちがこみ上げてくる。まあ委員長たちだけじゃなくって、僕たちだって肝試しの時には将来こうなるなんて考えられなかったんだけど。
委員長たちのことを考えてたはずが、いつの間にか自分たちのことを考えていて。今みたいにハルヒと付き合っていて、一緒に住んでいるということに改めて幸せを感じる。
「でも上手くいってよかったよね、二人とも」
「そうだよね。ハニー先輩と伽名月姫…じゃなかった、麗子姫夫婦はもう来月子供産まれるんだよね?僕らももうそんな歳なんだ…」
「……なんか馨、おじさんくさい」
「だってハルヒもそう思わない?」
この間まで高校生だったはずなのに。僕らはいつの間にこんなにも歳を取って、大人になったのだろう。隣に座る、髪が伸びたハルヒを見ながらふとそんなことを思った。
「自分だって思うよ。もう子供じゃないからいつまでも周りに甘えてなんていられないって。だからみんなすごいよね」
「やっぱりハルヒも思ってんだ」
「まあね。それで、馨も行くでしょ?委員長と倉賀野さんの結婚式」
ハルヒが招待状を眺めている。ハルヒは髪が伸びただけじゃなくて、大人っぽくなったなぁ。
「…そういえばハルヒはなんでまた髪伸ばしてるの?」
「いきなりだね」
「それが僕だからネ」
「…だって、髪は長い方がいいでしょ?」
「なんで?お金がない時にカツラに出来るから?」
ハルヒはそんな僕の質問に溜息をついたかと思えば、違うよと笑った。
「カツラじゃなくて馨との結婚式の時のためだよ」
「え?」
ぽかんとしている僕を、ハルヒは不思議そうに見つめる。
「だっていつかは結婚式するでしょ?」
「する…だろうけど、相手は僕なの?」
「馨だと思うよ。自分は馨以外の人と一緒に暮らすなんて考えられないから」
「そう、なんだ」
僕なんかの何倍も何十倍も、僕とのこれからのことを考えていたらしいハルヒ。僕はハルヒと一緒にいられる今が嬉しくて楽しくて、そんな今のことばかり考えていたからハルヒがそんなことを考えているなんて思いもしなかった。だけどそんな僕をよそにハルヒは続ける。
「それでね、結婚式の時は髪が長い方がいいのかなって思って伸ばしてるんだ。馨に髪してもらうのもいいなって思ってて。ウェディングドレスは馨のお母さんが時間があったらだけど、馨のお母さんに見立ててもらうのもいいよね。それかメイちゃんとか。でもやっぱりドレスは自分たちだけで選んだ方がいいのかな?あ、その前に和装かドレスか決めないとだね。あと披露宴で大トロってどうかな……」
僕とのいつかを話す幸せそうなハルヒの言葉が、表情がとても嬉しい。と同時に、だんだん顔が熱を帯びてくる。
「……ちょ、ちょっと!ちょっと待って!ハルヒ!!」
「どうしたの、馨。顔赤いよ」
「ハルヒが嬉しそうに話すからじゃん!」
「だって嬉しいもん。馨とこれからも一緒だって考えるだけで自分は楽しいよ」
「そりゃ僕だってそうだけど!」
「ふふ、よかった」
まだまだ熱の引かない顔。落ち着くためにも深呼吸をすると、ハルヒからの質問にまだ答えてなかったことを思い出した。
「…あ、ハルヒ。委員長たちの結婚式はもちろん行くよ、僕」
「うん、自分も。二人のことお祝いしたいからね」
「じゃあ僕がハルヒの髪しようかな」
「馨、お願いします」
ハルヒが楽しそうに深々と頭を下げるから、僕もつられて、こちらこそと頭を下げた。
僕にとって、ハルヒとの今はとても大切で、それが繋がってハルヒとのこれからになっていく。
僕だっていつまでも子供のままじゃいられないことは分かっているから。ハルヒとのこれからをもっとちゃんと考えるから。
だからもう少しだけ今のまま待ってて、ハルヒ。
僕がハルヒを守れるように、ハルヒのことを世界で一番幸せに出来るって自分でも思えるようになったら、僕の人生を懸けてハルヒを幸せにするって誓うから。