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君へのイタズラ (ハロウィン2020)

「ハルヒー!トリックオアトリート!」

今年も目を輝かせた光がその言葉をハルヒに告げる。


去年も一昨年もその前の年も、興味が無いからとハロウィンと関らずに過ごしてきたことで、光の数々のイタズラに巻き込まれてしまったハルヒも、今年はやっとお菓子を用意していた。

「はい、光。クッキー」
「お、かぼちゃだ。美味いじゃん」

ハルヒからクッキーを受け取った光。しかし、あっという間に食べ終えた。

「あ、終わった。ハルヒ、トリックオアトリート」
「えー、また?はい、クッキー」
「またクッキーなんだ。次は何これ?ジャム?」
「大家さんにもらったイチジクで作ったイチジクジャムだよ」
「ふーん。あ、これも美味いじゃん」

するとまた光はあっという間にクッキーを食べ終えて、ハルヒに告げる。

「ハルヒ、トリックオアトリート」
「はいはい、クッキーどうぞ」
「お、次はさつまいもだ。ホント、ハルヒってイモ好きだよな」
「別にそういうわけじゃないけどね」
「…なくなった。トリックオアトリート、ハルヒ」
「はい、どうぞ、クッキー」
「次は何コレ?普通のクッキー?」
「違うよ、食べたら分かるから食べてみて」
「あ、リンゴじゃん!これ!僕、これも好きかも」


このやり取りを何度繰り返しただろうか。干し柿のクッキー、ナツメジャムのクッキー…などなど、ハルヒの趣向を凝らしたクッキーたちはあっという間に光に食べられてしまう。すると流石のハルヒも作ってきたクッキーはもうなくなり、何度もトリックオアトリートと笑う光にお手上げせざるを得なかった。

「ごめん、光。もうクッキーないんだ。…でも、そんなに食べたらもう満足でしょ?」

ハルヒは光が食べたクッキーが入っていたお弁当箱の山を見る。あれだけせっせと作ったクッキーをこんなにすぐに食べられてしまうなんて思いもしなかった。だけど、光が美味しそうに食べてくれたからよかった。

「まあ確かに満足ではあるけどね。でもお菓子がないならイタズラはしまーす!はい、ハルヒは座って座って〜!僕が夕飯作るからさ」
「え、光が作るの…?」
「大丈夫だって!僕に任せて!これイタズラだから!」
「…だから尚更不安なのに」



──料理をする光をハラハラとした思いで見守っていたハルヒが、光の料理に舌鼓を打つのはそれからまた数時間後のお話。
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