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キミの笑顔を写真に

部屋の掃除をしていたら、小さい頃にお小遣いを貯めて馨とお揃いで買ったカメラが出てきた。埃を被っていたものの、それを払えば新品とほとんど変わらなくて、改めて僕らは飽き性だなと思った。
昔の僕が撮った写真を見返してみると、馨の写真に変な形のクッキーにグミの写真、それにお父さんからもらったお土産の写真が写っていた。それは、当時の僕が好きだったもので、それらを見ていると、このカメラを買った時に馨と好きなものの写真を撮って見せ合いっこしようと話していたことをふと思い出した。だけど僕らはいつだって同じものを好きになるから、2人とも撮った写真は同じものばかりだったんだっけ。違ったものと言えば、僕が馨を、馨が僕を撮っていたくらいで。


今の僕だったら何の写真を撮るだろう。やっぱり馨の写真?ホスト部のみんな?それとも、ハルヒの写真?
好きなものも、大切なものも昔よりもたくさん増えた今の僕。撮りたいものだって昔よりもたくさん増えた。


それならまずは何の、誰の写真を撮ろうか――。


◇◇


「ハルヒ、こっち向けって」

カメラを向けるとハルヒはぷいっと顔を背けた。ハルヒが顔を向けた方に回りこんでもう一度カメラを向けてみても、ハルヒはまたもや違う方へと向いてしまう。

「何?カメラ嫌いなの?」
「そういうわけじゃないけど…。写真なんて撮ってどうするの」

やっとこちらを向いたハルヒが怪しいとでも言わんばかりに僕の目をじっと見つめる。

「昔買ったカメラが出てきたからハルヒのこと撮ろうと思っただけだよ」
「なんで自分?」
「このカメラでは僕の好きなものの写真を撮ってるからネ。だからハルヒのことも撮りたいなって」
「…す、すき、って」

僕が言った言葉でなのか、自分で繰り返した言葉でなのかは分からないけどハルヒが顔を真っ赤にする。
僕の想いがハルヒに伝わって、ハルヒとも想いが通じ合ったのにハルヒってばまだ照れるんだ。かわいいじゃん。
そんなハルヒをレンズから覗き込んで、シャッターを切る。
だけどカシャッという音がハルヒにも聞こえたようで、ハルヒは恥ずかしそうに真っ赤な顔で僕を睨みつけた。

「なーに?どうしたのさ、ハルヒ」
「光、今撮ったね?写真」
「そりゃ、ハルヒのあんなかわいい顔、逃すわけにはいかないだろ」

僕が笑うとハルヒの顔はまた赤くなっていく。そんなハルヒを見て、あの赤い顔にまだ上があったんだ、なんて僕は変に感心してしまった。
すると、そんな僕の心情なんて知らないだろうハルヒが僕の腕を引っ張って言った。

「…光、恥ずかしいから写真消してほしいんだけど」
「やーだよ、消すわけないじゃん。というかさっき撮った写真は常陸院のデータベースにもう保存されてまーす!」
「…消せないの?」
「カメラの方で消したとしてもパソコンとか携帯とかからはいつでも見られるヨ」
「…光の意地悪……」

まだまだ顔を赤くさせながら涙目で僕を見上げて呟くハルヒ。
こんなハルヒは僕しか見れなくて、だけど誰にも見せたくなくて。シャッターを切る代わりに、僕は今のハルヒを目に焼きつける。


「でもまあ、ハルヒがかわいいからって調子乗りすぎたかも。…ゴメン」
「もういいよ。でも、そんなに何回も言わないでよ」
「ハルヒ、照れてんの?」
「…うるさい」
「アハハ。かわいい、かわいい」

ハルヒの頭をわしゃわしゃと撫でる。僕に撫でられると、照れながらくすぐったいとハルヒが笑う。



ハルヒと過ごす幸せなこの時間は写真に残さなくても、心の中でいつまでもいつまでも輝き続けていくのだろう。だけどたまにはハルヒとの想い出として写真におさめて、後から2人でその時のことを思い出しながら楽しむのも悪くないと僕は思うんだ。


だから今度は僕の大好きなキミの笑顔の写真を撮らせてよ、ハルヒ。
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