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ご飯が炊けるまでの間だけ

「ハールヒ、今日の夕飯なにー?」

ハルヒが夕飯の用意をしていると、明るい声色と共に光が後ろから抱きついてきた。


光がハルヒにくっついてくるのは付き合う前からのことで、付き合い始めた頃は照れもあったようだけど、今はまた前みたいにハルヒのことはお構いなしにくっついてくるようになった。
慣れとは恐ろしいもので、初めこそは恥ずかしさがあったハルヒも、今では光のスキンシップにすっかり慣れてしまった。もっとも、光がくっついてくる時はハルヒとしても心地よい幸せを感じる瞬間でもあるのだけれど。


ハルヒは光に包まれていることに幸せを感じると、二人分にしてはやけに大きい鍋をかき混ぜながらくすりと笑って光の質問に答える。

「カレーだよ」
「えー、またカレー?この間もそうだったじゃん」

カレーと聞くなり唇を尖らせた光を見れば、そういえば先週もカレーだったことが思い出される。だけどもうカレーのルウを入れてしまったから、これからシチューや肉じゃがに作り替えることは出来ず、ハルヒはしまったと溜息をついた。

「そういえば先週もカレーだったね」
「そうだよ!ハルヒ疲れてんじゃないの?献立忘れるとかさ〜。お手伝いさんにでもご飯作り任せたらいいじゃん」
「えー、でもやっぱりご飯は自分で作りたいんだよね」
「まあ僕だってそりゃ、ハルヒの作ったご飯の方が嬉しいけどさー」

すりすりとハルヒの肩に頭を擦りつけながら嬉しそうに笑う光。いきなり抱きしめられることにはすっかり慣れたハルヒも、ストレートに想いを伝えられることにはいまだ慣れず、こういった光の言動には身構えてしまう。

「…重いよ、光」

顔が赤くなっているのを悟られないようにハルヒは光の頭をどけると、自分を抱きしめていた光の腕も離す。
ハルヒから離されると光は残念そうに、えー、と呟くが、ハルヒの耳が赤くなっているのを見つけると、そんな些細なことなんてどうでもよくなる。

それに、動揺しているのか、ぐるぐると必要以上に何度も何度も鍋をかき混ぜるハルヒを見れば、光だって嬉しくなってしまう。
ハルヒはそんな自分を見ながら光がにやにやしていることに気付くと、バレた…!と心の中で恥ずかしさを感じながら、またぐるぐると鍋をかき混ぜた。

「…今日はカレーでいいでしょ?光も好きだし」
「まあ、庶民ルウは癖になる味だから嫌いじゃないケド」
「それって好きってことなんじゃないの…」
「そりゃハルヒが作ってくれるならなんでも」

光がハルヒのことをまた抱きしめてニッと笑ったかと思えば、次の瞬間にはじっとハルヒを見つめる。そんな光に見つめられたハルヒは時間が止まったかのように感じて、ドキドキと高鳴る心臓をうるさく思いながら目を閉じた。


ハルヒが目を閉じると光の柔らかい唇が近づいてきたのは言うまでもないことで、こんなことなら明日もカレーでよかったのかもしれない、とハルヒは柄にもなく思ってしまうのだった。
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