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僕らの日! (双子 誕生日2020/双子+ハルヒ)


今にして思えば、勉強をしながら深く考えずに返事をしたことが全ての始まりだった。



「ハルヒ!六月九日って空いてる?」
「うーん、空いてるよ」
「そっか!それじゃあそのまま空けといてね」
「うん、わかったよ」

光と馨からの質問にそう答えた翌日、二人は楽しそうに自分の目の前に『6月9日 スケジュール』と書かれた紙を掲げた。

「…えっと、これ何?」
「僕らの誕生日の時のハルヒのスケジュール!」
「午前中は僕と、午後は光とデートね」
「…なにそれ」
「じゃあな、よろしく!」
「僕らは準備があるから!またね」

二人は自分に紙を渡すと嵐のように去っていった。

─朝 8時:馨、ハルヒの家へ行ってハルヒをおめかし
─朝 8時30分:馨とのデート開始!
─昼 12時:光と馨とハルヒの3人でご飯
─昼 1時30分:光とのデート開始!
─夕方 5時:光、ハルヒを家まで送る

一日で、馨と光の二人とデート。そのどう考えてもハードな一日を想像すると溜息が漏れる。

でも、二人が誕生日に自分といたいって思ってくれたのは嬉しいかもしれない。その日は自分も、二人の誕生日を精一杯お祝いしてあげないと。




「ハルヒ、おっはよー!」

チャイムが鳴ったから馨かなと扉を開くと、元気のいい挨拶が響いた。馨と光からの挨拶が。

「あれ?光もいるの?」
「あ、そうそう!やっぱり僕ら二人とハルヒでデートしようってことになったんだよ」
「言ってなかったっけ?」
「聞いてないよ」
「馨が言ったんだろ?」
「光じゃなかったっけ?」
「別にいいよ、どっちでも」

溜息をついたら、光と馨が顔を見合わせて笑った。一つ歳を取ったって、二人はそう変わったようには見えない。

「でもこれで二人に同時に言えるね。光、馨、お誕生日おめでとう」
「ありがとう!ハルヒ!」

嬉しそうな二人につられて、自分も笑顔になる。
それにしても、二人とそれぞれ別々にデートをするのは大変だっただろうから、一緒にデートをすることになってよかったのかもしれない。まあその分きっと、一度のデートが大変なのだろうけど。
すると、自分がそんなことを考えているとは知らないだろう光と馨は、にやりと笑って、紙袋を差し出した。

「じゃあハルヒ、この服着て!なるべく早くネ」
「髪は車の中でするから急いでネ」

そう急かされるがまま慌てて着替えを終えると、ご機嫌な二人に連れ出された。

「それじゃあ行こうか、ハルヒ」
「ほら、早く!」

またもや急かされるがまま車に乗る。高級車はやっぱり何度乗せられても慣れはしない。だけど落ち着かないながらもシートにもたれこむ。高級車なだけあって、乗り心地はとてもいい。

「それだと髪が出来ないだろ」
「もたれずに座ってほしいよネ」

両隣から睨まれて、座り直す。髪はこのままでいいと思うけど、二人がしたいならせっかくだしやってもらえばいいか。
真ん中に座っているからよく見える窓からの景色を見ていたら、「出来た!」と声が揃った。

「ありがとう」
「どーいたしまして」
「似合ってるよ。可愛いよね、光?」
「うん、可愛いよ」

馨は自分を見ながら、光は横を見ながら言った。それぞれ表情も言い方も何もかもが違っていて、面白い。ふふ、と笑うと光も自分の方を向いた。

「何を笑ってるのさ、ハルヒ」
「二人が全然違うなって思って」
「まあそりゃそうじゃん」
「僕らは似ているようで違うもんね」

そう言って笑う二人は、どこか大人びて見えた。やっぱり一つ歳を取ったからなのか、少し変わったのかもしれない。窓の外では相変わらずさっき見たのと同じような景色が流れていた。

「そういえばどこ行くの?」
「うーん、どこだろ?」
「ハルヒはどこ行きたい?」
「……予定はあんなに細かく立ててたのに決めてなかったの?」
「庶民デートがしたいってことしかネ」
「庶民デートは何をするのか教えてヨ」

じりじりと近寄ってくる光と馨からは、この狭い車の中では逃げられない。

「……自分もよく分からないよ」
「いいよ!ハルヒとだったら何だって楽しいからさ!」

光と馨はそう言って、やっぱりいつもの笑顔で楽しそうに笑った。


二人の誕生日を、自分が少しでも楽しくしてあげられたらいいな。
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