みんなに出会って知ったこと
光が風邪をひいた。
この間から喉が痛い気がするって言っていたし、昨日なんて寒いって言っていたから風邪ひかないように気をつけないといけないね、と話していたのにそんなことは何の意味もなく、あっけなく風邪をひいてしまったようだった。
寝ている時からずっと咳をしていたし、熱もあるらしい。
だけど、光と同じ物を食べ、同じように過ごし、隣で寝ていた僕はというと、そんな光とは違って、いつも通り元気なままで。
「僕も学校休もうかな」
一人でつらそうな光を見て心配になったのか、可哀想になったのかぽつりと呟く。
今までは一人が体調を崩して学校を休んだら、もう一人も学校を休んだ。だって僕らは二人でひとつ、二人で唯一の存在だから。それに友達なんていなかった僕らは一人で学校に行ったって何も楽しいことなんてなかったんだ。
だけど今はホスト部があって、ハルヒがいて。同じクラスにはハルヒ以外にも委員長やみんなだっていて。そのことを、僕も光も今はもうちゃんと分かっている。
「馨が休んだらハルヒが暇になるだろ。僕は大丈夫だからさ、馨は学校行ってこいよ」
コホコホと咳をしていた光が心配いらないとばかりに、にっと笑う。
そんな光の表情を見た僕は少し寂しかったけど、だけどそれ以上に嬉しかった。
「帰ってくる時にはハルヒもつれてくるから光はちゃんと寝てないとダメだよ」
「わかった。馨とハルヒが帰って来る頃には風邪治しとく!」
「治ってたら僕もハルヒも風邪うつらないからネ。頑張ってよ、光。うーん…、それじゃあ、いってきます」
いってらっしゃーいと手を振る光に手を振り返すと部屋を出る。
ホスト部やハルヒと出会う前の僕らだったら、すぐに僕も学校を休むことを選んでいたのに。僕らの中でこんなにもみんなのことが大きくなっていた。
そう思うと面白くて嬉しくて、つい口元が緩んでしまう。
学校に着いたらまず最初に、ハルヒにお見舞いに来てくれるよう頼んでみようかな。ハルヒの顔を見たら光もきっとすぐに元気になるから。
そして風邪が治った光も学校に来たら、また三人で楽しく過ごそうか。