緊張する理由
「緊張するなぁ…」
ハルヒにしては珍しく弱気な発言を鏡夜は聞き逃さなかった。
「ハルヒでも緊張するのか」
「自分でもってなんですか。自分だってそりゃあ緊張する時は緊張しますよ」
いつもならここでもう一言二言返ってくるような場面だが、今日は返ってこない。鏡夜はハルヒに緊張するのかと言って笑ったが、それはきっと鏡夜だって同じことなのだろう。もっとも、ハルヒには鏡夜が緊張している様には見えないのだけど、どこかいつもと違うのは分かる。
「鏡夜先輩こそ緊張してますか?」
ハルヒが隣に座っている鏡夜に訊ねる。鏡夜はふぅ、と息を吐くとハルヒへと目線を向けた。
「緊張しているように見えるか?」
「はい、まあ。鏡夜先輩こそ緊張するんですね」
「お前な…結婚しようとしている女性の親に挨拶しに行く時に緊張しない男がいると思うか?」
「そういうもんですか?」
「ハルヒだって緊張しているんだろう?それは何故だ。お前の親だろう」
「自分の親だからですよ。父は鏡夜先輩のことが好きだから面倒くさそうだなぁ…って。あれ?でもそれだったら緊張ではないですね」
「流石はハルヒだな」
鏡夜がははっと笑った。こんな時でさえマイペースを貫くハルヒに、俺はこれからも振り回されるのか。そう思うのに不安は全くなく、寧ろ楽しみで仕方がない。
それにしても緊張していたのは自分だけだったとはやはりハルヒには敵わない、と思った鏡夜がまた笑う。そんな鏡夜をハルヒが不思議そうに見た。
「鏡夜先輩、どうしたんですか?」
「今日はハルヒが俺のことをやけに鏡夜先輩と呼ぶなと思ってな。やっぱりお前も緊張してるんじゃないか?鏡夜先輩と呼ぶのはもうナシだと言っただろ?」
「……忘れてはないですけど父の前でそう呼ぶのは恥ずかしいので今からこうして呼んでるだけです」
「蘭花さんのことだ。どんな呼び方をしていようと祝ってくれるに決まっている。だからハルヒ、」
鏡夜はハルヒの名前を呼ぶと自分の胸へと抱き寄せた。
「もう一度言う。俺と結婚してくれ」
突然の鏡夜の発言に、ハルヒはぽかんとしながら鏡夜を見つめた。
それから、
「はい、もちろんです」
とあっさり答えた。
「でもどうしてまた言ってるんですか?」
「……どうしてでもいいだろう。俺が言いたかっただけだ」
前はちゃんと言えなかったからな、と鏡夜が心の中で呟く。こんなことハルヒには言えないからあくまで心の中でだけ、だが。
鏡夜は深呼吸をすると、再びハルヒを見る。
「ハルヒ」
「はい?」
ハルヒが鏡夜を見上げると、鏡夜はハルヒの顎をクイっと上げ、キスをした。
以前プロポーズされた時とはまた違う、余裕のなさそうなそのキスにこの人でも緊張するんだ、と思ったハルヒは鏡夜の自分にしか見せない一面が感じられて嬉しくなった。これで鏡夜の緊張が収まればいいと思うものの、ハルヒは鏡夜のそのキスに緊張させられていくだけだった。
ハルヒにしては珍しく弱気な発言を鏡夜は聞き逃さなかった。
「ハルヒでも緊張するのか」
「自分でもってなんですか。自分だってそりゃあ緊張する時は緊張しますよ」
いつもならここでもう一言二言返ってくるような場面だが、今日は返ってこない。鏡夜はハルヒに緊張するのかと言って笑ったが、それはきっと鏡夜だって同じことなのだろう。もっとも、ハルヒには鏡夜が緊張している様には見えないのだけど、どこかいつもと違うのは分かる。
「鏡夜先輩こそ緊張してますか?」
ハルヒが隣に座っている鏡夜に訊ねる。鏡夜はふぅ、と息を吐くとハルヒへと目線を向けた。
「緊張しているように見えるか?」
「はい、まあ。鏡夜先輩こそ緊張するんですね」
「お前な…結婚しようとしている女性の親に挨拶しに行く時に緊張しない男がいると思うか?」
「そういうもんですか?」
「ハルヒだって緊張しているんだろう?それは何故だ。お前の親だろう」
「自分の親だからですよ。父は鏡夜先輩のことが好きだから面倒くさそうだなぁ…って。あれ?でもそれだったら緊張ではないですね」
「流石はハルヒだな」
鏡夜がははっと笑った。こんな時でさえマイペースを貫くハルヒに、俺はこれからも振り回されるのか。そう思うのに不安は全くなく、寧ろ楽しみで仕方がない。
それにしても緊張していたのは自分だけだったとはやはりハルヒには敵わない、と思った鏡夜がまた笑う。そんな鏡夜をハルヒが不思議そうに見た。
「鏡夜先輩、どうしたんですか?」
「今日はハルヒが俺のことをやけに鏡夜先輩と呼ぶなと思ってな。やっぱりお前も緊張してるんじゃないか?鏡夜先輩と呼ぶのはもうナシだと言っただろ?」
「……忘れてはないですけど父の前でそう呼ぶのは恥ずかしいので今からこうして呼んでるだけです」
「蘭花さんのことだ。どんな呼び方をしていようと祝ってくれるに決まっている。だからハルヒ、」
鏡夜はハルヒの名前を呼ぶと自分の胸へと抱き寄せた。
「もう一度言う。俺と結婚してくれ」
突然の鏡夜の発言に、ハルヒはぽかんとしながら鏡夜を見つめた。
それから、
「はい、もちろんです」
とあっさり答えた。
「でもどうしてまた言ってるんですか?」
「……どうしてでもいいだろう。俺が言いたかっただけだ」
前はちゃんと言えなかったからな、と鏡夜が心の中で呟く。こんなことハルヒには言えないからあくまで心の中でだけ、だが。
鏡夜は深呼吸をすると、再びハルヒを見る。
「ハルヒ」
「はい?」
ハルヒが鏡夜を見上げると、鏡夜はハルヒの顎をクイっと上げ、キスをした。
以前プロポーズされた時とはまた違う、余裕のなさそうなそのキスにこの人でも緊張するんだ、と思ったハルヒは鏡夜の自分にしか見せない一面が感じられて嬉しくなった。これで鏡夜の緊張が収まればいいと思うものの、ハルヒは鏡夜のそのキスに緊張させられていくだけだった。