俺の特別な日があなたにも特別になるように (鏡夜 誕生日2020)
「ハルヒ、今日は何の日か知っているか?」
鏡夜先輩の誕生日だから、とハルヒが腕によりをかけて作ったご馳走たちを食べ終えると鏡夜が呟いた。
「何の日って…鏡夜先輩の誕生日でしょう?知ってますよ。だから色々な料理を作ったんです。それにさっきもお祝いしたじゃありませんか」
鏡夜の質問にハルヒは不思議そうな顔をしながら答える。しかしそんなハルヒの答えに、鏡夜ははぁと大きく溜め息を一つついた。
「そんなことは分かっている。俺は馬鹿ではないのでな」
「じゃあ、どういうことなんですか?」
ハルヒに質問をし返されると鏡夜は軽く息を整える。
「…今日は“いい夫婦の日”らしいぞ。知っていたか?」
「なるほど…、11月22日だからいい夫婦の日…。面白いですね」
「あぁ。この日に合わせて入籍する人たちも多いそうだ」
鏡夜はハルヒをじっと見つめると、自分の視線からハルヒが逃れられないことを確認して、更に続ける。
「だから、俺たちもどうだ?」
「…どうだって何がですか?」
ハルヒは何も理解出来ていないとでもいうような、明らかにぽかんとした顔で鏡夜に訊ねる。
そこで鏡夜は小さく咳払いをすると一気に答えた。
「蘭花さんは俺のことを認めてくれているし、うちの父だって学生の頃から俺とハルヒを結婚させると言っていたから反対はしないだろう。というよりも、どちらも大賛成じゃないのか?それに、お前は俺が好きだし、俺はお前が好きだ。…ほら、何の問題もないだろう?」
鏡夜にしては珍しく、少し早口になっている。少し前から用意し、散々頭の中で繰り返してきたセリフだっただけにいつも通り平常心で言えなかったことを、鏡夜はどことなく情けなく感じた。
「…鏡夜先輩。プロポーズ、みたいですよ?」
ハルヒは鏡夜の言葉を頭の中でもう一度繰り返すと、鏡夜をじっと見つめた。
純粋で、真っ直ぐに相手を見つめるハルヒの瞳。自分とは全然違うハルヒの瞳。そんなハルヒの瞳に鏡夜は昔から新たな発見を与えられてばかりだった。
そしてそれは今だって変わらず新たな発見を与えられてばかりだ。例えば今ならば、全く伝わっていないという発見。
「みたい、じゃなくてその通りだよ、ハルヒ。お前は本当に鈍感だな」
ハルヒの言葉に気が緩んだことを鏡夜は感じた。いくら自分があれこれと考えていたとしても、ハルヒはいつだって思いもよらない言動で、いとも簡単に鏡夜の想像を超えていってしまう。
ハルヒはいつでも変わらないなと鏡夜がハルヒを見ると、やっと鏡夜の言葉を理解したらしいハルヒは涙目になっていた。
そんなハルヒにつられたのか、それともようやく伝わったから安心したのか、鏡夜の口元が緩む。そんな鏡夜の優しい笑顔を見たハルヒの頬に涙が伝う。
「…自分で良ければ、是非。これからもよろしくお願いします」
「ハルヒで良ければ、じゃなくて、ハルヒがいいんだよ。ハルヒ、俺の方こそよろしく頼む」
「自分も、鏡夜先輩がいいです!」
ハルヒは身を乗り出すと鏡夜の腕を掴んだ。しかし腕を掴まれた鏡夜は先程までの優しい笑顔とは違い、いつもの何かを企んででもいるかのような笑顔に戻っている。
あぁ、自分はやっぱり鏡夜先輩が好きだ。こんなところも愛おしいなんて。ハルヒが心の中で改めてそう感じていると、鏡夜はハルヒの心の中を見透かしたように言った。
「これからは婚約者同士なんだ。だから鏡夜先輩と呼ぶのはナシだぞ」
鏡夜がフッと笑うと、ハルヒはバツが悪そうに鏡夜から目を逸らす。しかし鏡夜がそう簡単に逃してくれるわけはない。鏡夜がハルヒの手を掴み、そのまま指と指とを絡めていくからハルヒはどこにも逃げられない。
「ハルヒ」
優しく名前を呼ばれるとハルヒはおそるおそる鏡夜の方へと振り向いた。
「…鏡夜、さん」
「今はこれで仕方ないか」
鏡夜は言葉とは裏腹に心なしか嬉しそうに呟くと、ハルヒに優しくキスをした。
この人とだったらこの先の何年だって、何十年だって新たな発見ばかりなのだろう。そう思うと鏡夜もハルヒも、これからの2人での……新しい家族としての生活が楽しみで仕方なかった。
鏡夜先輩の誕生日だから、とハルヒが腕によりをかけて作ったご馳走たちを食べ終えると鏡夜が呟いた。
「何の日って…鏡夜先輩の誕生日でしょう?知ってますよ。だから色々な料理を作ったんです。それにさっきもお祝いしたじゃありませんか」
鏡夜の質問にハルヒは不思議そうな顔をしながら答える。しかしそんなハルヒの答えに、鏡夜ははぁと大きく溜め息を一つついた。
「そんなことは分かっている。俺は馬鹿ではないのでな」
「じゃあ、どういうことなんですか?」
ハルヒに質問をし返されると鏡夜は軽く息を整える。
「…今日は“いい夫婦の日”らしいぞ。知っていたか?」
「なるほど…、11月22日だからいい夫婦の日…。面白いですね」
「あぁ。この日に合わせて入籍する人たちも多いそうだ」
鏡夜はハルヒをじっと見つめると、自分の視線からハルヒが逃れられないことを確認して、更に続ける。
「だから、俺たちもどうだ?」
「…どうだって何がですか?」
ハルヒは何も理解出来ていないとでもいうような、明らかにぽかんとした顔で鏡夜に訊ねる。
そこで鏡夜は小さく咳払いをすると一気に答えた。
「蘭花さんは俺のことを認めてくれているし、うちの父だって学生の頃から俺とハルヒを結婚させると言っていたから反対はしないだろう。というよりも、どちらも大賛成じゃないのか?それに、お前は俺が好きだし、俺はお前が好きだ。…ほら、何の問題もないだろう?」
鏡夜にしては珍しく、少し早口になっている。少し前から用意し、散々頭の中で繰り返してきたセリフだっただけにいつも通り平常心で言えなかったことを、鏡夜はどことなく情けなく感じた。
「…鏡夜先輩。プロポーズ、みたいですよ?」
ハルヒは鏡夜の言葉を頭の中でもう一度繰り返すと、鏡夜をじっと見つめた。
純粋で、真っ直ぐに相手を見つめるハルヒの瞳。自分とは全然違うハルヒの瞳。そんなハルヒの瞳に鏡夜は昔から新たな発見を与えられてばかりだった。
そしてそれは今だって変わらず新たな発見を与えられてばかりだ。例えば今ならば、全く伝わっていないという発見。
「みたい、じゃなくてその通りだよ、ハルヒ。お前は本当に鈍感だな」
ハルヒの言葉に気が緩んだことを鏡夜は感じた。いくら自分があれこれと考えていたとしても、ハルヒはいつだって思いもよらない言動で、いとも簡単に鏡夜の想像を超えていってしまう。
ハルヒはいつでも変わらないなと鏡夜がハルヒを見ると、やっと鏡夜の言葉を理解したらしいハルヒは涙目になっていた。
そんなハルヒにつられたのか、それともようやく伝わったから安心したのか、鏡夜の口元が緩む。そんな鏡夜の優しい笑顔を見たハルヒの頬に涙が伝う。
「…自分で良ければ、是非。これからもよろしくお願いします」
「ハルヒで良ければ、じゃなくて、ハルヒがいいんだよ。ハルヒ、俺の方こそよろしく頼む」
「自分も、鏡夜先輩がいいです!」
ハルヒは身を乗り出すと鏡夜の腕を掴んだ。しかし腕を掴まれた鏡夜は先程までの優しい笑顔とは違い、いつもの何かを企んででもいるかのような笑顔に戻っている。
あぁ、自分はやっぱり鏡夜先輩が好きだ。こんなところも愛おしいなんて。ハルヒが心の中で改めてそう感じていると、鏡夜はハルヒの心の中を見透かしたように言った。
「これからは婚約者同士なんだ。だから鏡夜先輩と呼ぶのはナシだぞ」
鏡夜がフッと笑うと、ハルヒはバツが悪そうに鏡夜から目を逸らす。しかし鏡夜がそう簡単に逃してくれるわけはない。鏡夜がハルヒの手を掴み、そのまま指と指とを絡めていくからハルヒはどこにも逃げられない。
「ハルヒ」
優しく名前を呼ばれるとハルヒはおそるおそる鏡夜の方へと振り向いた。
「…鏡夜、さん」
「今はこれで仕方ないか」
鏡夜は言葉とは裏腹に心なしか嬉しそうに呟くと、ハルヒに優しくキスをした。
この人とだったらこの先の何年だって、何十年だって新たな発見ばかりなのだろう。そう思うと鏡夜もハルヒも、これからの2人での……新しい家族としての生活が楽しみで仕方なかった。