一緒の温度
何故だか分からないけど眠れない時がある。
俺にだってそんな時があるのだから、もちろんハルヒにだって、誰にだってきっとあるのだろう。
先程からハルヒが寝返りを打っている。スースーという寝息は聞こえてこないから多分まだ起きているはずだ。
「ハルヒ、どうした?」
それでももしも寝ていたら悪いから小声で聞いてみる。するとハルヒはもう一度寝返りを打って天井を向くと、顔だけこちらへと向けた。
「……すみません。起こしてしまって」
「気にしなくて大丈夫だぞ。俺も起きてた」
俺のことを見ているハルヒは前髪が目に掛かっていて邪魔そうだな、そう思って手を伸ばすとハルヒの前髪に触れてみる。するとハルヒはビクッと体を震わせたから慌てて手を引っ込めた。
「ご、ごめん。ハルヒ」
「いえ、大丈夫です」
お互いに少し視線を逸らしてみると無言の時間が流れた。だけど、そんな時間にいたたまれなくなった俺は意を決して口を開く。
「「あ、あの……!!」」
ハルヒと声が重なる。どうやらハルヒと同時に何かを言おうとしたことが面白くて、お互いの視線がまたぶつかるとどちらからともなく笑い出す。ひとしきり笑い終えると今度は順番に口を開いた。
「それでどうした?ハルヒ」
「あ、さっき。自分寝られなくて」
「寝られない?眠くないのか?」
「そういうわけではないんですけど。多分、手足が冷たいからかも」
眉を下げて笑ったハルヒは、布団から手を出すと手のひらを握って開いてを繰り返している。
なんだそんなこと。それならそんなことしなくたって、布団の中で一人であたたまるのを待っていなくたって、早く俺に言ってくれたらいいのに。
布団から出ているハルヒの手を握る。ハルヒの手は小さくて、確かに冷たい。
「……あの、環先輩?」
「俺の手はあたたかいだろう?だからハルヒにお裾分け!」
「ふふ、ありがとうございます」
俺の手に包まれたハルヒの手は、心做しか少しあたたかくなった。そのことにほっとして軽く伸びをしてみた。すると、ちょんっとぶつかってしまったハルヒの足もまたあたたかくなっていたから、よかったとハルヒを見る。
寝られないと言っていたのが嘘のようにいつの間にかすやすやと眠っているハルヒに、おやすみ、ハルヒとおでこにキスすると俺も眠りについた。