それはタダよりも高いもの (環 誕生日2020)
「環先輩、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとう。ハルヒ」
恋人同士になって初めての俺の誕生日。
みんなが気を利かせてくれたから、部屋には二人きりなのだけど、お互いどことなく緊張しているのが分かる。そんな緊張に打ち勝つべく、俺はハルヒが作ってくれたケーキへと手を伸ばした。
「いただきます!」
手を合わせてそう言うと、一口分のケーキをフォークで取る。
ハルヒが作ってくれたケーキは、イチゴのショートケーキで。シンプルだけど美味しくて、他のケーキもショートケーキには敵わなくてみんなが好きになってしまう所なんかが、なんとなくハルヒみたいだ。そんなことを考えつつ、ケーキを口へと運ぶ。クリームの甘さとイチゴの酸味が合わさった美味しさは、食べた者にしか分からない。つまり、俺しか知らないハルヒの一面みたいだと嬉しくなる。
「ハルヒの作ったケーキは美味いな!」
「環先輩のために作ったからそう言ってもらえて嬉しいです」
ハルヒに感想を伝えると、緊張も和らいだのかハルヒが笑った。
誕生日にハルヒの笑顔が見れたのが嬉しくて、ケーキをもう一口分フォークに乗せるとハルヒの前へと手を伸ばす。
「ハルヒ、あーん」
「…なんでですか。自分で食べられますよ」
さっきまで笑顔だったハルヒが狼狽える。だけどこれは恥ずかしいのを隠しているからこその狼狽えなのだ。俺にはそんなことバレバレなのにすぐに狼狽えるハルヒはとても可愛い。
「んー、じゃあハルヒ。俺、他のプレゼント欲しいんだけどいい?」
「まあそんなに値段がしないものなら…」
「ハルヒが好きなタダだからな!お金はかからないぞ!!」
にっと笑うとピースサインをして、ハルヒにそう伝える。それから、ハルヒに顔を近づけると自分の頬を指差した。
「俺、ハルヒにキスしてもらいたい!」
「…お断りします」
「なんで?」
「…なんででもです」
かーっとハルヒの顔が赤くなっていく。恥ずかしがっていることは分かっている。でも俺はハルヒからキスしてもらいたい。だって今日は俺の誕生日だからな!
「ハルヒ、今日俺の誕生日」
「知ってます」
「だから、プレゼント欲しい…」
「ケーキあげたじゃないですか」
「ケーキ……」
ハルヒにそう言われてケーキを見つめる。ハルヒが俺のためにと作ってくれたケーキはとても美味しくて嬉しくて、食べるのは勿体ない気もしたから、写真も山ほど撮った。
だけどハルヒから何か恋人同士みたいなプレゼントももらいたくて、何か案を練るべく、更にじーっとケーキを見つめる。
「…分かったぞ!ハルヒ!」
「何がですか?」
「ほら、ハルヒ。やっぱり、あーん、しよう!恋人同士みたいだろう?」
俺の言葉を聞くなり、ハルヒが溜息をつく。
「みたいじゃなくてもう恋人同士ですよ。…本当にタダより高いものはないですね」
そしてハルヒはふふっと笑って、俺のフォークの上に乗っていたケーキを食べた。「…甘すぎたかも」なんて言って、甘い雰囲気を漂わせながら。
そんなハルヒから目が離せなくなると、ハルヒも俺のことをじっと見つめる。それからしばらく見つめ合っていると、ふいっとハルヒが横を向いた。
「…キスは、また来年の誕生日にでもします」
「あ、うん。分かった……」
コクンと頷き返事をする。
やっぱり二人きりとは緊張するものだ。
出来るだけ早く、どうせならもう明日にでも来年の誕生日が来たらいいのに。そんなことを考えながらもう一度口へ運んだケーキは、先程よりも甘いような気がした。
「ありがとう。ハルヒ」
恋人同士になって初めての俺の誕生日。
みんなが気を利かせてくれたから、部屋には二人きりなのだけど、お互いどことなく緊張しているのが分かる。そんな緊張に打ち勝つべく、俺はハルヒが作ってくれたケーキへと手を伸ばした。
「いただきます!」
手を合わせてそう言うと、一口分のケーキをフォークで取る。
ハルヒが作ってくれたケーキは、イチゴのショートケーキで。シンプルだけど美味しくて、他のケーキもショートケーキには敵わなくてみんなが好きになってしまう所なんかが、なんとなくハルヒみたいだ。そんなことを考えつつ、ケーキを口へと運ぶ。クリームの甘さとイチゴの酸味が合わさった美味しさは、食べた者にしか分からない。つまり、俺しか知らないハルヒの一面みたいだと嬉しくなる。
「ハルヒの作ったケーキは美味いな!」
「環先輩のために作ったからそう言ってもらえて嬉しいです」
ハルヒに感想を伝えると、緊張も和らいだのかハルヒが笑った。
誕生日にハルヒの笑顔が見れたのが嬉しくて、ケーキをもう一口分フォークに乗せるとハルヒの前へと手を伸ばす。
「ハルヒ、あーん」
「…なんでですか。自分で食べられますよ」
さっきまで笑顔だったハルヒが狼狽える。だけどこれは恥ずかしいのを隠しているからこその狼狽えなのだ。俺にはそんなことバレバレなのにすぐに狼狽えるハルヒはとても可愛い。
「んー、じゃあハルヒ。俺、他のプレゼント欲しいんだけどいい?」
「まあそんなに値段がしないものなら…」
「ハルヒが好きなタダだからな!お金はかからないぞ!!」
にっと笑うとピースサインをして、ハルヒにそう伝える。それから、ハルヒに顔を近づけると自分の頬を指差した。
「俺、ハルヒにキスしてもらいたい!」
「…お断りします」
「なんで?」
「…なんででもです」
かーっとハルヒの顔が赤くなっていく。恥ずかしがっていることは分かっている。でも俺はハルヒからキスしてもらいたい。だって今日は俺の誕生日だからな!
「ハルヒ、今日俺の誕生日」
「知ってます」
「だから、プレゼント欲しい…」
「ケーキあげたじゃないですか」
「ケーキ……」
ハルヒにそう言われてケーキを見つめる。ハルヒが俺のためにと作ってくれたケーキはとても美味しくて嬉しくて、食べるのは勿体ない気もしたから、写真も山ほど撮った。
だけどハルヒから何か恋人同士みたいなプレゼントももらいたくて、何か案を練るべく、更にじーっとケーキを見つめる。
「…分かったぞ!ハルヒ!」
「何がですか?」
「ほら、ハルヒ。やっぱり、あーん、しよう!恋人同士みたいだろう?」
俺の言葉を聞くなり、ハルヒが溜息をつく。
「みたいじゃなくてもう恋人同士ですよ。…本当にタダより高いものはないですね」
そしてハルヒはふふっと笑って、俺のフォークの上に乗っていたケーキを食べた。「…甘すぎたかも」なんて言って、甘い雰囲気を漂わせながら。
そんなハルヒから目が離せなくなると、ハルヒも俺のことをじっと見つめる。それからしばらく見つめ合っていると、ふいっとハルヒが横を向いた。
「…キスは、また来年の誕生日にでもします」
「あ、うん。分かった……」
コクンと頷き返事をする。
やっぱり二人きりとは緊張するものだ。
出来るだけ早く、どうせならもう明日にでも来年の誕生日が来たらいいのに。そんなことを考えながらもう一度口へ運んだケーキは、先程よりも甘いような気がした。