小ネタ

「…水谷、くん」

擽ったい髪と共に水谷くんが近づいてくる。

しのーか、と熱っぽい目で私を見つめる水谷くんに、待って、と頼んだら優しい彼は待ってくれるだろうか。だけどそんなことを考えている間に水谷くんの顔はもう目の前にあって。

「水谷くん、…待って」
「ごめん、しのーか。待てない」
「じゃあせめて下の名前、呼んで?」
「…千代」

呼ばれ慣れているはずの名前も水谷くんに呼ばれると擽ったくてたまらない。

「千代もオレのこと名前で呼んでよ」


文貴くん、と言い終わらないうちに私と文貴くんの唇が重なり合った。
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