「ちわー！」

グラウンドに入るなり、目当ての人物を探す。今日が誕生日の篠岡、だ。
辺りを見回すと、篠岡がグラウンド脇で何やら作業をしていた。そこまで行くと、名前を呼ぶ。

「篠岡」
「あれ？水谷くん、どうかした？」

くるりとこちらへと振り向くと、篠岡がにっこりと笑った。オレは息を整える。

「篠岡、今日誕生日でしょ？誕生日オメデトー！」
「水谷くんありがとう！家族以外で水谷くんが一番だよ」
「ホント？早くお祝いしたかったからよかった」
「私も嬉しいよー、本当にありがとうね！でもよく知ってたね」
「へへ、まあね」

篠岡が好きだから知ってるんだよ、とは言えなくて。誤魔化すように笑ったら、咲いたばかりだという桜にも負けないような笑顔で篠岡が笑った。
そんな篠岡の笑顔で、オレの心にも満開の花が咲いた。