夕焼けの光がまぶたへと差し、閉じた目にオレンジ色が写り込む。

時折吹く風が、小道に生える草や木々の葉を揺らし、
さわさわと心地よい音を奏で、そばを通りすぎていく。

まぶたの裏に、今でも鮮やかによみがえる風景。

ゆっくりと沈んでゆく夕日。明日には日本へ発つ悠月に、
バジルが見せてくれた、秘密の場所からの、夕焼け。

この場所から見える夕焼けは、あの時の夕焼けと似ている気がしていた。

あの日、二人は何も言わずに夕焼けを眺め続けた。
バジルがそばにいてくれる、それだけで幸せだった…。


そうして目を閉じて思い出に浸っていると、風の音にまじって靴音が聞えてきた。
靴音はだんだんこちらに近づいてきて…そして、止まった。

何となく、視線を感じる。

悠月はそっと目を開き、夕日のまぶしさに数回まばたきをしながら、ゆっくりとそちらへ振り返った。


夕暮れの小道に立っていたのは、
悠月と同じ背丈…よりも少し高い人だった。

「え……？」

悠月は、不意に胸が高鳴る。

彼の青い海のような瞳と、目が合った。


「…バジ、ル……？」

不確かな、けれど確信めいた何かに背中を押されるように、
悠月はその人の名前を、呼んだ。


バジルと呼ばれた青い瞳の青年は、嬉しそうに微笑み返した。

「ただいま。悠月殿。」

そこにいたのは確かに、バジルだったのだ。


「夢…じゃない、のね…？」

「ええ、そうですよ。
　悠月殿…ずっと、ずっと会いたかった。」

その言葉を聞いた瞬間、悠月の心に懐かしさと、
幸せな気持ちが、一気に波のように押し寄せてきた。

悠月は何も言えなくて、ただ嬉しくて、
ぽろぽろと大粒の涙をこぼした。

夕日に照らされた涙は、流れ星のようにきらりと光り、何粒か落ちていった。

悠月は何も言えず、一歩、一歩とバジルに歩みより、

そして、抱きしめた。

「私も、ずっと…ずっと、会いたかった……！」


再会を喜び合う二人を、沈む夕日が静かに見守っていた。