友達からの質問攻めを何とかかわし、悠月は家へと自転車を走らせていた。

「はぁ…今日は何だか疲れたなぁ…。
　あ、そうだ！　今日は寄り道して帰ろうっと♪」

悠月の言う”寄り道”とは、夕焼けを見に行くことだった。

学校の帰り道から少し自転車で遠回りすると、
夕焼けがきれいに見える絶景スポットがあるのだ。

…と言っても、夕焼けがきれいなこと以外は、特に何の変哲もない場所なのだけれど。

自転車を走らせていた悠月は、その場所まで来ると自転車を止めた。

ほとんど人通りのない小道。
ここから見える夕日は、いつもまっすぐに地平線に沈んでいく。
悠月のお気に入りの場所だ。

小道から少し外れたところだからか、意外と穴場で、人通りも多くない。
木々が風にさざめく音が、心地よく響く。

今はちょうど、地平線に夕日が半分ほど沈んでいた。
未だにまぶしい光を放ちながら、太陽が悠月の周りを照らす。

ここから少しずつ顔を沈めていく夕日を眺めるのが、
悠月は好きだった。もちろん、今もそうだ。

―あの日を、思いだすなぁ……。


悠月は、いつもの場所で、そっと目を閉じた。