消えることはない記憶
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ある日のこと。
いつものお昼休み、屋上で、悠月ちゃんが校庭に咲く桜を眺めていた。
俺も、隣でそれを見ていた。
『桜…もうすぐ、終わっちゃいそうだね』
「そうだね、もうだいぶ散っちゃったね…」
4月の始業式の頃に咲いていた桜は、ほとんど花が散って
今は新緑の葉っぱが見え隠れするようになっていた。
『私も、もうすぐ……』
ポツリ、吹きつける風にかき消されそうなくらい小さな声で、
悠月ちゃんが呟いた。
(えっ……?)
今、何を言ったの?
聞きたかったけれど、悠月ちゃんの横顔を見ると、
なぜか、言葉をかけることができなかった。
心のどこかが、きゅっと締め付けられるように痛むだけだった。
春風に、悠月ちゃんの肩まで切り揃えられたきれいな黒髪が揺れる。
さああぁ…と木々の葉ずれの音がしばらく響いていた。
悠月ちゃんが、一度空を見上げて、少し笑って、
そして俺を見た。
『ツナ君。私ね……』
目が合って、
『もうすぐ、転校するんだ。』
悠月ちゃんの声が、聞こえた。
「……えっ……?」
俺はとっさに理解できずに、響いた言葉を、胸の中で繰り返す。
”転校”という言葉を、繰り返す。
「転、校……?」
悠月ちゃんは笑って、そう、と頷いた。
悲しいような、からっぽのような、笑顔で。
「いつ、転校するの…?」
それが、やっと俺が絞り出した言葉だった。
悠月ちゃんは、親の転勤で転校することになったことや、
明日が最後の登校日になることを、一気に、吐き出すかのように俺に言った。
『本当はね、ずっと前から言わなきゃって、わかってた。
わかってたけど、どうしても言えなかった。』
『転校することがわかったら、きっとツナ君はやさしいから、
ちゃんと笑ってくれなくなくなる気がして。』
そこまで言って、悠月ちゃんとまた、目が合った。
『ツナ君の笑顔が曇っちゃうのが嫌だったの。…ごめんね。』
俺は、一生懸命に話す悠月ちゃんに、何も言えなかった。
何を言ったらいいのかわからなかった。
もし何か言ってしまえば、すぐに壊れてしまいそうだったから。
シャボン玉のように張り詰めた、この空気も。
悠月ちゃん自身も。
黙ってしまった俺に、悠月ちゃんが背を向けた。
悠月ちゃんの肩が、小さく震えているのが見えた。
いつものお昼休み、屋上で、悠月ちゃんが校庭に咲く桜を眺めていた。
俺も、隣でそれを見ていた。
『桜…もうすぐ、終わっちゃいそうだね』
「そうだね、もうだいぶ散っちゃったね…」
4月の始業式の頃に咲いていた桜は、ほとんど花が散って
今は新緑の葉っぱが見え隠れするようになっていた。
『私も、もうすぐ……』
ポツリ、吹きつける風にかき消されそうなくらい小さな声で、
悠月ちゃんが呟いた。
(えっ……?)
今、何を言ったの?
聞きたかったけれど、悠月ちゃんの横顔を見ると、
なぜか、言葉をかけることができなかった。
心のどこかが、きゅっと締め付けられるように痛むだけだった。
春風に、悠月ちゃんの肩まで切り揃えられたきれいな黒髪が揺れる。
さああぁ…と木々の葉ずれの音がしばらく響いていた。
悠月ちゃんが、一度空を見上げて、少し笑って、
そして俺を見た。
『ツナ君。私ね……』
目が合って、
『もうすぐ、転校するんだ。』
悠月ちゃんの声が、聞こえた。
「……えっ……?」
俺はとっさに理解できずに、響いた言葉を、胸の中で繰り返す。
”転校”という言葉を、繰り返す。
「転、校……?」
悠月ちゃんは笑って、そう、と頷いた。
悲しいような、からっぽのような、笑顔で。
「いつ、転校するの…?」
それが、やっと俺が絞り出した言葉だった。
悠月ちゃんは、親の転勤で転校することになったことや、
明日が最後の登校日になることを、一気に、吐き出すかのように俺に言った。
『本当はね、ずっと前から言わなきゃって、わかってた。
わかってたけど、どうしても言えなかった。』
『転校することがわかったら、きっとツナ君はやさしいから、
ちゃんと笑ってくれなくなくなる気がして。』
そこまで言って、悠月ちゃんとまた、目が合った。
『ツナ君の笑顔が曇っちゃうのが嫌だったの。…ごめんね。』
俺は、一生懸命に話す悠月ちゃんに、何も言えなかった。
何を言ったらいいのかわからなかった。
もし何か言ってしまえば、すぐに壊れてしまいそうだったから。
シャボン玉のように張り詰めた、この空気も。
悠月ちゃん自身も。
黙ってしまった俺に、悠月ちゃんが背を向けた。
悠月ちゃんの肩が、小さく震えているのが見えた。