バジルはとっさに悠月をかばって抱きしめてくれていた。

そのため、バジルが覆いかぶさるような形で、悠月は倒れていた。

いきなりバジルの顔を目の前にした悠月は
驚きと恥ずかしさと嬉しさで気持ちがこんがらがって、
動けずに、ただバジルの目を見つめた。

『（バジルの目、青くてきれい…海の色みたい。）』

そんなことを、思いながら。

バジルもバジルで、悠月から目を離すことができなかった。
悠月の、まっすぐで黒い瞳に見つめられて。

時折、桜の花びらが映るせいなのか、ちらちらと輝く。
小さく開いた唇も、少し火照ったような頬も、今日見た桜の色と似ていた。

とてもきれいだと思った。

「きれい…ですね。」

思わずバジルが呟く。

『え…？』


戸惑いながら、悠月が問う。

『わ、私の、こと……？』

「そう。あなたです。悠月殿。」

悠月の目を見つめながら、バジルが囁いた。


悠月の頬は一段と濃い桜色に染まった。
バジルから目をそらして、そんなことないよ、と呟く。

しかしバジルは依然として悠月の目をまっすぐ見つめて言う。

「いいえ、この桜に負けないくらい、悠月殿はきれいです。」

その言葉に、悠月はまたドキドキしてしまう。
おそるおそる、戸惑いながらも、
悠月はバジルともう一度目を合わせる。

『本当……？』

「本当ですよ。悠月殿、あなたが一番きれいです。」

そう言って、バジルは
静かにそっと、悠月にキスをした。