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幻色の霧雨よ

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骸は静かに頷いた。

(やっぱり、そうなんだ……。)

幻覚の骸は、悠月の方へと歩いてくる。

「確かに、今ここにこうしていられるのは、この霧雨のおかげです。
 僕はこの力を借りなければ、幻覚ですらいられなくなる。」

骸は悠月に向かって、言葉をかけながら、歩いてくる。

「でも」

『……でも?』

悠月の傍へと歩み寄った骸は、
そのままごく自然な動作で悠月を抱きしめた。

幻覚だから、感覚はない。
それでも、骸は抱きしめてくれた。

それが悠月にとっては、うれしかった。


「僕の心は、ずっとあなたのそばにある。」

「そのことを、どうか忘れないでください。」




…ふと気づいたときにはもう、骸の姿はどこにもなかった。


まるで夢のような時間だったと、悠月は思う。

お別れも言えないままで行ってしまった骸のことを想い、
さみしさに心がさいなまれそうになった悠月

「またすぐに会えますよ、悠月。」

骸の声が、耳元で余韻を残して響いた気がした。

いつの間にか、短い霧雨はやんでいた。



空気が、さっきよりも少し澄んでいた。
悠月はもう一度、霧雨の降っていた空を見上げた。

空はまだどんよりと曇っていたが、
さっきのような、泣きたいような暗い気持ちではなかった。


悠月は、骸に抱きしめられたその余韻を味わいながら

「ありがとう、骸。」

誰にも聞こえないような小さな声で、つぶやいた。
そして悠月は、桜色の道を、また歩き出した。



―儚くて 優しくて 幻色の霧雨よ
 私とあなたをつなぐ 虹色の縁とならんことを―


<Fin.>
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