―これから、どうすればいいんだろう…？

そう思いながらぼーっとあたりを見まわしていると、
不意にコンコン、とドアがノックされる音がした。
思わずドアの方に目をやる。

続いて、

「失礼します」

という涼やかな声とともに部屋のドアが開き、
メイド服を着た少女が現れた。

ちょうどドアの方を見ていた僕は、少女と目があった。
少女が少し目を大きく見開き、息をのむ。

僕も少女も動けずに、ほんの一瞬の沈黙が流れたが

「よかったです～！やっと目を覚まされたんですね～！」

少女が僕のもとに駆け寄ってきた。
僕は少し戸惑いながら、小さくうなずいた。

「貴方がずーっと目を覚まさずにいらっしゃったので、
　ボスともども、私たちも心配していたんですよ～？」

ほっと息をつき、メイド服の少女は微笑んだ。
と、急に何か思い出したのか、はっとした表情に変わり

「そうでした！貴方が目をさましたら、ボスをお呼びするお約束でした～！」

と言うが早いか、たたたっとドアの方に行こうとしたが、
すぐにくるりと振り返って僕を見て、

「まだ外にはお出にならないで下さいね？
　すぐにボスをお連れしますから～！」

と一言付けくわえて、

「失礼いたします！」

ぱたんっ！とドアが閉まった。


目が合った、と思ってからあっという間にメイド服の少女が部屋からいなくなり、
ぱたぱたと駆けていく少女の足音と、
ボス～！ボス～！　という少女の声が遠ざかっていくのが聞こえた。

僕はなんだかまたぼーっとしながら、
先ほど言っていた少女の言葉を、もう一度思い返した。

『やっと目を覚ましたんですね～！』
『ボスともども心配してたんですよ～？』
『貴方が目をさましたら、ボスをお呼びするお約束でした～！』

―ボスを、お呼びする…？

あの少女が、これから誰か別の人を連れてくるということだろうか…？
少し考えてみたが、自分ではどうしようもないことだった。

きっとここに来る“ボス”と呼ばれる人が、何か教えてくれるはずだ。
僕は、とりあえず部屋で待つことにした。