第二章 緑の景色の中で
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ディーノと別れたその後、僕は部屋に戻り扉を閉めるとすぐにベッドに潜った。
掛け布団を頭まですっぽり被って、自分の周りを真っ暗にした。
なぜそうしたのかは自分でも分からない。
ただ、そうしたい気分だった。
―フィリ。
―この名前に、聞き覚えは、無いか…?
耳をふさいでも、
ディーノの言葉を、声を、思い返してしまう。
「……フィリ。」
再度、あの名前を呟いてみる。
するとまた、胸の奥がさわさわと揺れるのを感じる。
「…僕は、本当は、誰なんだろう……。」
―フィリって、誰なんだろう……。
自分の中で、声が重なる。
自分のことを知りたいだなんて、きっと変だ。
だけど、僕には今、記憶がない。
名前も、過去も、自分自身も、すべて。
記憶がない自分は、からっぽの器のように思えた。
対してディーノの声には、色んなものが詰まっていた。
あたたかさや、優しさや、悲しみ、それ以上の何か…。
言葉にすることができない、何か。
―フィリ。
ディーノがあの名前を僕に告げた時。
あの名前が自分のものかは、分からなかったけれど、
何かとても重要なものだということは、分かった。
あの単語が名前だというのなら、
僕も名前を持ちたい、と思った。
僕は今、名前を持っていない。覚えていない。
それがたとえ、偽りの、かりものだとしても…。
名前を持つことは、自分である証を、持つことのような気がした。
―僕は…僕のことを、もっと知りたい。
これまでの記憶がないことが、自分が何者かを分からなくしていて。
自分が何者か分からないことが、
自分を”自分でない自分”にしているのではないだろうか…。
ならば、記憶を取り戻し、自分が何者か分かれば、
自分は”自分である”と思えるようになるのだろうか。
―それなら、僕は……。
失った自分を取り戻したい。そう思った。
記憶も。そして、自分である"証"も。
掛け布団を頭まですっぽり被って、自分の周りを真っ暗にした。
なぜそうしたのかは自分でも分からない。
ただ、そうしたい気分だった。
―フィリ。
―この名前に、聞き覚えは、無いか…?
耳をふさいでも、
ディーノの言葉を、声を、思い返してしまう。
「……フィリ。」
再度、あの名前を呟いてみる。
するとまた、胸の奥がさわさわと揺れるのを感じる。
「…僕は、本当は、誰なんだろう……。」
―フィリって、誰なんだろう……。
自分の中で、声が重なる。
自分のことを知りたいだなんて、きっと変だ。
だけど、僕には今、記憶がない。
名前も、過去も、自分自身も、すべて。
記憶がない自分は、からっぽの器のように思えた。
対してディーノの声には、色んなものが詰まっていた。
あたたかさや、優しさや、悲しみ、それ以上の何か…。
言葉にすることができない、何か。
―フィリ。
ディーノがあの名前を僕に告げた時。
あの名前が自分のものかは、分からなかったけれど、
何かとても重要なものだということは、分かった。
あの単語が名前だというのなら、
僕も名前を持ちたい、と思った。
僕は今、名前を持っていない。覚えていない。
それがたとえ、偽りの、かりものだとしても…。
名前を持つことは、自分である証を、持つことのような気がした。
―僕は…僕のことを、もっと知りたい。
これまでの記憶がないことが、自分が何者かを分からなくしていて。
自分が何者か分からないことが、
自分を”自分でない自分”にしているのではないだろうか…。
ならば、記憶を取り戻し、自分が何者か分かれば、
自分は”自分である”と思えるようになるのだろうか。
―それなら、僕は……。
失った自分を取り戻したい。そう思った。
記憶も。そして、自分である"証"も。