雨が降っていた。

何もかもを流し去ってしまうような、強い雨が。
その中で一人、少女は佇んでいた。
暗い灰色の雲の、その向こうを透かして見るような瞳で。
何か別の世界を見ているかのような、瞳で。

街頭はぼうっと黄色い光を放ち、暗闇の中を漂うように揺れている。
そうして時々、いたずらに少女の金色の髪を光らせる。

「僕は、どうして生きているんだろう……。」

少女は独り呟く。雨の音が、その言葉をただ流してゆく。

少女が視線を落とした先には、左足に負った傷と、傷口から流れる血が見えた。
傷口は生々しかったが、痛みは感じなかった。まるでずっと昔に負った傷のように思えた。

首筋がちりっと痛んだ。
あいつらが近くまで来ている―

本能と経験からそう感じ、足をひきずりながらも、歩き始める。
しかし歩いた先の何かにつまづいて、そのまま前のめりに倒れてしまう。
思わず声を上げたが、その声もすかさず雨が流していく。

「分からない……どうして、僕は……」

ねじ曲がった視界に問いかけても、答えはない。
代わりに雨の音が静かに流れる。

このまま、溶けてなくなってしまえばいいのに。

そう思いたかったが、できないことに気づいた。

「ああ、そうか。僕は……」

意識が薄れていくなか、少女は

「僕は……死ぬのが、怖かったんだ。」

無感情に呟き、意識を失った。