エルリ

彼は、ただの中学生なんかじゃない。

今日は朝からやけに艶かしいと感じた。顔がいつもより赤くなって、呼吸が少し乱れている。ただでさえ白い頬がほんのりと赤く染まって、大人のそれを醸し出し、男を誘う。
 中学生には刺激の強い芳香を漂わせる彼を心配し、体育館で行われる体育の授業を、校舎見回りの延長で訪れる。案の定、マット運動で息を切らす彼は、ほかの生徒からその目で見られていた。
「リヴァイくん。」
 そっと声をかけ、見学をするように促す。
あくまでこれは教師としての注意であり、決して、欲情した視線で犯していいのは自分だけだという独占欲からくるものではない。
「…大丈夫だ、ちょっと風邪が長引いてるだけだろ。こっちは皆勤目指してんだし。」
 ふい、と機嫌を損ねた猫みたいに背を向ける彼に、さぁ明日はどんなお仕置きをしてやろうか、と考え始める。
 ステージ脇の行事用具室を見回る。特に異常は見当たらなかった。プルル、と内線電話の音がして、監督の教師が行事用具室に駆け込んできた。
「エルヴィン先生、すいません、監督を頼んでいいですか。マット運動は事故が多くて…」
「えぇ、構いませんよ。」
 貼り付けた聖人の笑顔で答え、心の中では悪魔が踊りまわった。
マット運動に精を出す真面目な生徒たちを励ましながら間を潰す。
しばらくすると、先ほどの教師が暗い面持ちで駆け寄ってきた。
「どうしました?」
「ちょっと母が倒れたみたいで……。もう終わりの時間なので、挨拶をして解散で構いません。用具は次の授業で使うので。」
「そうですか……。分かりました。早く行ってあげてください。」
 気遣う仕草で送り出せば、彼はスタスタと走って出ていった。生徒を招集し、挨拶を済ませる。
一番後ろから解散する生徒たちを見ていれば、波から外れた彼が横に並んだ。
「本当に大丈夫か?」
一度深く深呼吸してから、彼はまぁな、と笑った。

「リヴァイ」
 隣の彼にだけ聞こえるようにそっとつぶやく。
ほかの生徒たちは"風邪が長引いている"彼を心配しながらも、私の視線に気付いたのか、さっさと出ていった。
 体育館の出入り口横にある用具倉庫の扉に彼の体を叩きつける。
「っ…」
 苦しそうに歪めた顔は未だ赤く染まり、色気を漂わせている。掴んだ手首から伝わる体温は、諸事を思わせる温かさだ。
「なんのつもりだ、あんなやらしい姿を晒して。ほかの男でも釣るつもりか?」
「俺がいつやらしいことをしたんだよ、仕事中に生徒で妄想してるエルヴィンセンセ。」
 ニヤリ、と笑ったリヴァイの手首をさらに強く握る。
「いてぇよ、せんせー」
 余裕たっぷりに軽く抵抗する彼に噛み付く。がつっ、と歯と歯の当たる音が聞こえた。無理矢理唇を割り、舌をねじ込ませる。
「んっ…ぁ……」
苦しそうに首を振るリヴァイを無視して続けた。次第に息が詰まっていく。
「ぁっ……ふぁっ……」
 リヴァイの腰が下にずり下がる。掴んだ手首に重力がかかる。まぶたが半分閉じられていった。勢いよく唇を離すと物足りなさそうな声が聞こえた。
「大人を舐めないほうがいいよ。余裕がなさそうだね?」
 甘い匂いを纏う中学生を見下す。彼から年不相応の甘いため息がこぼれ落ちる。
「続きは今夜してあげようか?君のことだ。金曜日の今日を狙ったことだろうが、上手に強請れないようなら明日に持ち越そう。」
 もちろん自分でシてはいけないよ、と耳元に囁く。ピチャリと耳たぶを舌でなぞれば、面白いほど肩が揺れた。
 
 彼は真っ赤な顔で私を見上げて、こくりと頷いた。
2/9ページ
スキ