エルリ



 ぱらぱらと雨が降っている。朝、布団から出られないような寒さの冬の雨。ここ何日か降り続くそれは、母親に構ってほしくて泣く子供の涙のように小さく、しかししつこく耳につく。
「いい加減止んでほしいモンだ。これじゃぁ洗濯物が溜まる一方だぜ」
 日の光も射さなくて、リヴァイは昨日部屋に干した服を取り込みながら零した。ぱらぱらと落ちる雨音は耳障りで鬱陶しく、部屋の中に充満する。
「雨は好きじゃない…」
 取り込んだばかりのシャツを羽織りながらエルヴィンは言う。眉間に寄った皺が嫌悪感を示していた。
「やっぱり痛むか、エルヴィン」
 あぁ、とエルヴィンは答えながら棚を開ける。
綺麗に仕切られた中には錠剤が種類ごとに並ぶ。全て鎮痛剤、もしくは麻酔薬だ。エルヴィンは迷いもなく強い薬を手に取ろうとした。リヴァイはその姿を見て釘をさす。
「やめとけ、昨日寝る前にも飲んだろ。」
「もう薬の効き目なんて切れたよ」
 不機嫌のまま答えるエルヴィンに、リヴァイは舌打ちをした。質が悪い。それこそ、駄々を捏ねる子供のように
 雨は未だ降っている。
「舌打ちはやめなさい。」
「うるせぇよ。そう思うんだったら飲むな」
 リヴァイはエルヴィンと棚の前に滑り込んで腕をつかむ。目があった途端エルヴィンの顔が目と鼻の先に迫ってきている。
 咄嗟、リヴァイの手が空っぽのシャツをつかんだ。勢いまま手前に引っ張ると目の前の顔が歪む。
「んっ……」
 無遠慮に突っ込まれた舌は雨のように冷たい。棚の角に腰が当たった。頭に来たリヴァイは中途半端にボタンの閉まった胸を強く叩く。いい加減にしろ
「いっ、……、リヴァイ、」
 先の無い腕を爪が食い込むほど強く掴んだ。
リヴァイは先ほどよりも痛みに呻いた顔が愉快だと口角を上げる。
「仕方ねぇな、洗濯物も干せねぇし晴れるまで寝ようじゃねぇか。エルヴィンぼっちゃんよ。」
 ベッドルームに連れ込んで昼過ぎまで眠った。





目覚めた後には雨は止み、ヤコブの梯子が降りている。



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