毎月300字小説企画
虹の橋
揃いのマグカップが食器棚に入れっぱなしになって数日。こんなにも早く、君のいない日常に慣れてしまうなんて。一人の時間の使い方にも習慣が出来かけているなんて。
喧嘩して大怪我をしたあの日も、身を寄せ合って眠ったあの夜も。どれだけ焦がれて手を伸ばしても届かない、追憶の彼方。
そうは言っても記憶に縋るばかりではいけないから。泣き腫らした目も今は落ち着いて、ようやく前を向けるようになった。
いつまでも互いに一人ぼっちは寂しいだろうし。そっちに行くときに、また笑顔で、君の優しい声に迎えてもらえるように。
精一杯生きて思い出をたんと増やそう。君が羨むくらいに。
